昨日泊まっていた『松本十帖』はチェックアウト時刻のギリギリまで過ごし、今日は蓼科に移動した。
今日も、ずっと泊まりたかったブックホテルを予約していた。
創業大正15年(1926年)『蓼科 親湯温泉』へ。
ロビーの奥には、35000冊の蔵書の「Library Lounge」がある。
館内に入った瞬間から「子供のような顔になっていた」らしい。
そりゃそうよ。
フィクションからノンフィクションまで、哲学書からビジネス書まで、新刊書から絶版になった本まで、オールジャンルでそろっている。特に古書が多い。神保町の古本屋でも手に入らないようなレア本まであるんじゃないか。
「みすず書房」の棚があったのには、ちょいビックリ。この棚の横には「みすずBAR」というBARもある。みすず書房の社主や、岩波文庫の創業者がこの界隈の出身であり、この旅館の先代と知り合いだったことから、みすず書房や岩波文庫から多くの献本を頂き、両社の棚があるらしい。
みすずや岩波だけでなく、多くの文豪がこの界隈に住んでいたり、別荘を持っていたりするので、多くの献本があるという。私の本も持ってきたらよかったね(誰が読むねん)。
私が一番楽しみにしていたのが、ここ。蓼科の名所「岩波の回廊」。
笑みが止まらん。
新しい岩波も、古い岩波もある。
分かるかしら? それがすごいということを。
部屋で過ごすのがもったいないので、ずっと「Library Lounge」で本を読んでいた。たくさんの本を持ち込んだが、せっかくなので35000冊の蔵書の中から数冊をピックアップして読みふけった。ここに泊まる時は一番安い部屋でいいと思う。部屋では寝るだけになると思うから。
蓼科親湯温泉は、開湯400年とも1200年とも言われる歴史ある温泉で、戦国時代には武田信玄が隠し湯として利用したとか(ホンマかいな)。
とりあえず温泉には浸かった。
夕食は館内のレストランにて。ここも長野県産のワインが豊富だった。今日は(夜も読書を続けたかったので)ペアリングにはせず、酔わない程度にグラスワインを数杯頂いた。
コース料理に、今日も鯉が出てきた。3日連続で鯉を食べるとは思わんかった。ここの旅館の名物はカレーライスらしく、レトルトで販売もしている。〆に頂いたが、確かにクセになりそうな味だった。
2日連続で、本と自然に囲まれて生活するという贅沢。しかも、温泉に浸かり、ワインも飲める。最高の休暇だ。
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いま、全国から書店が消えていき、全国4分の1の市町村で書店がないらしい。沖縄でも書店がない町がいくつもある。この状況をなんとかしようと政府(経済産業省)が立ち上がり、振興に向けた支援策を検討し始めた。で、どんな案が出るのかと思ったら、「地域の書店から図書館が仕入れる書籍を増やす」とか、「地域の書店で図書館の本の受け取りや返却ができるようにする」とか…(報道より)。小学生でももう少しいい案が出そうなもんだが…。
北谷にはチェーン店の書店があり、月に1〜2回は覗くのだが、購入することはない。何か買いたいと思って定期的に行くのだが、欲しい本が見つからないのだ。新刊書を並べてるだけで、何の主張もない。個性もない。きっと売る気もない。だからいつも客がいない。チェーン店だから成り立ってるんだろけど、そうでなければとっくに潰れてるだろうね。昭和時代にあった「街のカメラ屋」「街の薬屋」「街の駄菓子屋」「街のブティック」…が、大型量販店になり、近年は大型店どおしが合併して巨大化している。そして「街の◯◯屋」は姿を消し、商店街はシャッター街になった。かつて、スーパーダイエーが小売業で初めて売上高1兆円を超えて大騒ぎになったが、いまやイオンの売上高は10兆円なのだ(2025年2月期見通し)。なのに、書店だけは「街の書店」を残そうと必死になり、せいぜい売上高1000億円程度の大型店もイノベーションを忘れ、いまでも文具やCDを必死に売ろうとしている。根本的におかしい。本が好きな私でも、「街の書店」はなくなって然るべきだと思う。欲しいものが見つからない店を残す意味は何なのか。書店がなくなることは文化の衰退につながるというのであれば、誰もが買いたくなるような「棚」を作る努力をしてはどうか。そして本という単価と利益率の極めて低いものだけを売るのではなく、体験や経験と組み合わせて高単価のサービスを売るという発想をしてはどうなのか。全国から「棚」が見たいと蓼科の山奥にやってくる観光客が途切れない創業98年の宿もあるのだ。全国にそういった個性派書店といわれる書店もある。なぜそういった書店から学ばず、オワコン化した書店を延命させようとするのか。衰退した田舎のシャッター街に人が戻ってくるとでも思ってるのか。私には分からん。
宿の売店で、岩波文庫風のブックカバーとノートを買った。何も買う気がなくても、店に入ったら、ついつい買ってしまった。「商売がうまい」とはこういうことだ。