大阪某所のレストランにて。
大原簿記専門学校で公認会計士試験講座の講師をしている友達から「また教え子の相談にのってやってくれへんか?」とLINEが来たので、二つ返事でOKしたら、受験生からの相談ではなく、監査法人6年目の方からの相談だった。悩めるシニアスタッフ。
監査法人を退職することにしたが、その先、どの道に進むべきかという相談だった。独立も考えているという。
真っ先に「独立して良かったですか?」と聞かれた。独立に関する質問は多いが、私は一貫して「独立なんて安易にするもんじゃない」と言い続けている(そんなことを「やがて哀しき起業家たち」というタイトルで6年前にも書いたことがある)。
ここでも書いたとおり、起業や独立を目的にすべきではないと思う。独立した会計士を見ると、自由で、華やかな生活をしているように見えるかもしれないが、監査法人勤務時代の何百倍も大変だし、地を這うような努力も必要。地を這ってでも辿り着きたい場所があるなら独立すればいいが、そうでないのに独立しても中途半端な人生で終わってしまうと思う。独立なんていつでもできるんだから、その分野で日本一といえるバリューを提供できるまで修行すべきではないかと思う。特に、監査法人のような色んなものを享受できる組織にいるのであれば尚更。
志村けんさんは、独立するかどうかを迷っている人に、3つの問いを立てている(志村けん著『志村流』(三笠書房)より)
(1)何がしたのか、すぐ答えられるか
(2)これだけは自信がある、という特技はあるか
(3)他人から『ちょっと変わっているね』と、よく言われるか
これは、(1)したいこと、(2)できること、(3)独自性、と言い換えることができるだろう。志村さんは、このうち1つでもNOがあれば独立しない方がいいと語っている。これは私も同意である。私の場合、3つともYESになった時点で独立したが、それでも独立してから10年くらいは大変だった。
公認会計士は(登録すれば)税理士になれる。税理士資格を取って、税理士事務所を開業して、固定客から固定報酬もらいながら、監査法人でちょこちょこバイトして、たまにコンサルでもやっていれば生きていけるんじゃないかと考える人が少なくないが、そう思うなら一度やってみればいい。
今日会った彼は、もっと高い志を持っているだろうが、この業界の商売はそんな甘いもんじゃないと思う。
志村けんさんは、ドリフターズに入るまでに何年地味な生活をしていたことか。池上彰さんは、フリーになる前に、何年NHKで記者をしていたことか。地味な中で、日本一といえる知識や技術を身に付けたから、フリーになってからもトップでいれる訳で、ちょこちょこバイトして生きていけばいいと思っている甘っちょろい人間に企業が報酬を払うとは思えない。
私が若い会計士に言うことは、毎回同じ。
生き急ぐな。
隣の芝を見るな。
監査を極めろ。
根っこを伸ばせ。
自分のバリューを高めろ。
今回も同じことをお伝えした。
拙著『経理の本分』の「心得24」でも書いたが、自分の価値(バリュー)と年収はいずれ収斂する。年収1億円欲しければ、先に自分が1億円のバリューがある人間になるべく、地味な努力すべきだと思う。
(※ 画像はネットから拝借した)