池田光史著『歩く マジで人生が変わる習慣』読了。
この本、マジおすすめ。
「歩く」ことが健康に良いだけではない。アイデアがひらめき、創造性が高まり、記憶力も上がり、ストレスが下痢、不眠が改善し、あらゆる健康の指標が改善し、死亡リスクが下がり、寿命が伸びる(第1章)。
しかし、現代人は1日平均9.3時間も座っている(睡眠時間よりも長い)。そして、日本人の1日の平均歩数は6000歩しかない(狩猟採集時代は2万歩だった)。「座る」ことは、「歩く」ことと逆に、あらゆるリスクが高まり、それはどんなに運動を増やしても相殺することは難しいらしい(第2章)。座りつづけるのは喫煙と同じくらいリスクが高い、とも書かれている。
ちなみに、ここまでの話は、すべてエビデンス(学術論文など)によるものであり、注釈が付けられている。
ベートーヴェンやニーチェなどの過去の偉人も「歩く」ことの効用に気付き、「歩く」ことを習慣にしていた。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグなどの偉大な経営者は、「ウォーキングミーティング」をしていた。Meta社(旧facebook)は、本社の屋上には5.1ヘクタール(東京ドームより大きい)の「ウォーキングトレイル」が整備されており、社員にもっと「歩ける場」を提供している。googleマップで「MPK21」と検索すると見ることができるが、こんな会社を見たのは初めてだ…。
我々が長時間座ったままのライフスタイルになっただけでなく、「都市化」したことも、「歩く」ことが減り、運動不足になっている原因だという。つまり、都心部では「街が車に最適化されすぎている」(P128)のだ。確かに、都心部では目的地まで止まらずに真っ直ぐ歩くことは難しい。
本書を読んで一番驚いたのは「靴」の話(第5章)。現代の靴は、つま先部分が細くなっているものが多いが、本来の人間の裸足はつま先部分が一番広い。また、多くの靴はかかと部分がつま先部分より高い(厚底になっている)。女性はヒールを履くこともある。このような不自然な形の靴を履き続けているため、足が変形するだけでなく、姿勢が崩れ、筋肉を正しく使うことができず、歩き方まで変わってしまう。靴の形に人間が合わせてきたが、本来は人間の足の形に靴を合わせるべきだ。そういうコンセプトで作られた靴も開発・販売されており、本書で紹介されている。
私たち人間は、二本足で常に動き回る生き物であり、人類の歴史の大半はそうやって生きてきた。この数十年の近代化、都市化、テクノロジーの進化により、我々は歩かなくなったため、「様々な不都合が起きている」(P78)のだ。頭と手を使うだけで済む生活は五感を駆使することの大切さをも忘れさせてしまった。
本書を読み終えた後、再度、本書の「はじめに」に戻った時、そこで書かれていたユヴァル・ノア・ハラリ氏の言葉が突き刺さった。
『文明やテクノロジーの進化は、果たして僕たちを幸せにしたのだろうか―――?』
(ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』より)
毎日、ジョギングかウォーキングはするようにしているが、この習慣は死ぬまで続けようと思うし、座わり続けるライフスタイルも見直そうと思う。どこかで仕事をやめないとね。