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秋学期 第6講。
1週間が早い。



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キャンパス内の日本庭園。先週よりも秋を感じる。


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先週の授業後、2年生(女性)から以下のようなコメントシートを頂いた。
私は先生の授業を今学期に初めて履修することになりましたが、大学に入って一番衝撃を受けた授業です。2年生になっても自分が将来何をしたいのかも、自分の強みが何かも分からないのに、周りは就職活動のことを考えていて、焦りと不安でいっぱいでした。しかし、先生の話を聞いて、就職活動よりも大切なことがあると感じました。固定観念に縛られて型にはまった生き方をせず、もっと自由に自分のしたいように生きていいんだと認識させられました。
(中略)
私はどこかで欠落しているのかなぁと考えることがあるのですが、先生の講義を聞いていると、そんな自分も肯定されているような気がしました
(中略)
今後の講義も楽しみにしています。沖縄から毎週来てくださりありがとうございます。

ひとりの教育者との出会いが人生を変える。良くも悪くも。
私は、良い方のひとりになりたい。

一人ひとりの学生が持っている才能の原石を見つけ、それを最大限伸ばすためのキッカケを与え続けることが教育者の役割であると思う。協調性を重んじる戦前戦後の教育ではなく、自主性・主体性を発揮し、自立した大人を育成する教育をすべきだと思う。100分という限られた授業の中でそれを実践することは限界があるが、授業前・授業後や、沖縄にいる時間も、なるべく学生との対話に時間を使い、縁ある学生たちの存在を承認し、肯定し、傾聴し、いい所を伸ばし、背中を押してあげたい。

5講目、6講目と回を重ねるごとに、学生たちも私に心を開いてくれ、プライベートなことまで告白してくれたり相談してくれる人もいる。中には、とても授業中にシェアすることはできないセンシティブなことまで打ち明けてくれる学生もいる。フツーは一大学講師にそんな話をすることはない。それだけ学生たちも私の存在を承認し、信頼してくれているということが嬉しい。

そして上の学生のように、「授業を楽しみにしています」、「沖縄から毎週来てくださりありがとうございます」と伝えてくれる学生が多いことも非常に嬉しい。私にとって最大の報酬である。



4年生(女性)から質問を頂いた。
先生は「人には必ず誰にも負けない何らかの才能を持っている」とおっしゃっていましたが、逆に自覚している欠点・弱点はありますか。自分なりの欠点・弱点への向き合い方があれば教えてください。

欠点も弱点も、短所もコンプレックスも、あ・り・ま・く・り。
以前の授業で「弱点補強はなくていい。強みをひたすら伸ばし続けろ」という話をしたが、克服した欠点・弱点もあるだろう。

誰しも「強み」と「弱み」を持っているが、「強み」に関しては「伸ばすべき強み」と「現状維持でいい強み」がある。「弱み」に関しては「克服すべき弱み」と「諦めるべき弱み」がある。

皆さんも弱み・欠点・短所・コンプレックスと思っているものがあると思う。そこに悩みを抱えている人もいると思う。それらを「克服すべき弱み」と「諦めるべき弱み」に分けてみればいい。身体的・性格的なコンプレックスについてはおそらく克服できないので諦めるべきではないか。私も、(大学講師なんてやってるけど)シャイな性格で、大勢の人の中にいることもできない。しかし、性格が直るはずがなく、克服は諦めた。

弱み・欠点も含めて「自分」であり、そんな「自分」を愛してあげるべきだと思う。そして、そんな「自分」を愛させてくれる人とお付き合いすべきだと思う



2年生(女性)より。
前回の授業で、先生が「誰の弟子にもならない」「誰も弟子を取らない」とおっしゃっていたのを聞いて、”守破離”という言葉を思い出しました。
1人の人間を師匠とするのは、ある意味依存であり、「人に依存するな」「自立しろ」と先生がおっしゃっていたこととつながった様な気がしました。

ところで、先生は尊敬する方の話を授業でしてくださっていますが、そのような人たちを越えるためにどのような方法で行動していますか??

いい質問。

尊敬する人を越える方法
 その1、直接会いに行く
 その2、直接教えてもらう
 その3、モデリングする


私は、会いたい人に会いに行くことが最大の自己投資だと思う。会いたい人が地球上にいる限り、会いに行くべき。著名な方であれば講演をすることもある。ちょっとのお金を出せば会うことができるのだ。可能であれば、楽屋や通路で出待ちして直接話しかける。ムリそうなら質疑応答の際に発言する。そして直接教えを乞う。名刺交換できたら、すぐに連絡を入れる。いかなる手段を使ってでも顔と名前を覚えてもらう。で、いかなる手段を使ってでも再度直接会う機会を作る。その人に近づくことができても、できなくても、モデリングする。そうすれば、その人に追いつき、追い越すことができる(かもしれない)。リターンの大きい投資だと思う。



4年生(女性)より。
先生は、仕事や人間関係で心が折れそうになったことはありますか? もしあれば、どういうマインドで乗り越えてきたのか教えてください。

心が折れたことも、あ・り・ま・く・り。

「思い通りにいかなくて当たり前」「思い通りにいったら奇跡」と思うようにしている。何事も。だから思い通りでない結果になっても、感情がブレることはない。



4年生(男性)より。
前回の授業でタイムマネジメントの話をして頂きましたが、経営者は、面白いことがないかなど、常にビジネスのことを考えているのかなーと思っているのですが、先生は如何ですか? ぼーーっとする時間をあえて取ったりしていますか?

ぼーーっとする時間は必ず取る。

私の人生観を変えた本が何冊かあるが、そのうちの一つが天声人語を長年執筆されていた辰濃和男さんの『ぼんやりの時間』(岩波新書)という本。一番仕事をしていた時期にこの本に出会い、「ぼんやりは貴い」ということを教えてくれ、生き方が変わった。こんないい本が絶版になったのは残念であるが、マーケットプレイスで売ってると思うので、興味があれば手にとって欲しい。



4年生(男性)より。
社会人になってからの信頼関係の築き方と、友人との信頼関係の築き方は異なると考えています。私は、社会人になってからの信頼関係は「相手の期待値を超えた結果を出し続けること」で築かれると思っていますが、武田先生はどう思われますか?

100%同意。

私の中で「人生における原理原則」というものが幾つかあるが、その中の1つに、「プラス1%の法則」と言ってるものがある。プラス1%やると「ありがとう」と言われる。マイナス1%で信頼を失う。プラスマイナス1%の努力の差は気持ちの問題。

相手の期待を1%超える結果を出し続ける努力をする方が、失った信頼を回復する努力をするより100万倍楽だから、常に相手の期待を超える努力をすべき。




と、こんなやり取りをしながら、今日も『「経理」の本分』について授業を行った。私の経理部門での実務経験を交えながら、経理の楽しさを伝えていった。

あっという間の100分だった。

今日は祝日ということもあり、会計士試験の受験仲間が遊びに来てくれた。
ありがと!

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授業後、4年生の学生と西宮北口でランチをした。
大学の履修単位は満たし、大手金融機関で内定をもらっており、証券外務員の試験勉強などで忙しい中、私の授業だけは受けに来てくれている。有り難いことだ。

就職後だけでなく、5年後、10年後の進路・キャリアについても考えているようだが、そんな超長期のプランなんて立てることはできないから、1つだけ北極星となる目標を定め、あとは与えられた仕事をコツコツやるのみ。それが天職。

そんな話をしつつ、ウダウダした話もしつつ、楽しいランチタイムだった。

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