秋学期 第5講。
今日も授業の1時間前に上ケ原に入り、キャンパス内の日本庭園へ。
もう秋だねぇ。
授業は、今日も学生との対話から開始。
3年生男性から以下のような質問を頂いた。
春学期の授業で「考える」「思考する」ことが大事だとお聞きしましたが、考えすぎて疲れてしまうことがあります。自分の中で完璧を求めるということはすべきでしょうか。先生のお考えをお聞かせください。
仕事に関しては完璧を求めるべきだと思うけど、完璧な人間を目指すべきではないと思う。この世に完璧人間なんてしないし、完璧な善を体現した人なんていない。自分に完璧を求めるから疲れるし、他人に完璧を求めるから悩みが増え、ストレスが溜まり、時には人間関係が破壊する。どんな人間にも「濁り」があるのだから、自分や他人の思考に完璧を求めるべきではないと思う。
ただ、「考える」「思考する」ということは大事なので、止めるべきではない。自分と向き合う、考え抜く、自分なりの思想を持つ、そして、「自分の哲学を完成させる」ということは生涯続けるべきだと思う。
余談であるが、私は誰の弟子にもならないし、誰も弟子を取らないと決めている。私自身が「完璧」から程遠い人間であることを自覚しているし、「弟子にしてください」と言ってくる人に私にはない才能の原石があることも分かるので、師弟関係にもなる必要はない。とっとと、私を超えればいい。だから、勝手に「師匠」と呼んでくる人が数名いるが、私は弟子とは思わないし、彼らには「さん」付けで呼ぶようにしている。多くの師弟関係は、共依存関係にある。共依存とは自立の対極である。私を慕ってくれるような人と共依存関係は築きたくない。
法学部2年生の男性からは、以下のような質問を頂いた。
武田先生が時間を有効に活用するにあたり、どのようなことを意識されていますか？
�� 「第2象限」にフォーカスすること
（「第1象限」は1日2時間で終わらせると決める）
�� 前日寝る前に、翌日の「To Doリスト」を3つだけ書くこと
（それ以上のことはやらないと決める）
�� 仕事中はスマホを見ないこと
（集中して終わらせると決める）
それだけで1日に何時間もの時間が生まれるに違いない。
一度、自分が１日の中でやったことを全て書き出し、それが「第１象限」から「第４象限」のどこに当てはまるのかを分類してみたらいいと思う。おそらく、忙しい人は「第２象限」の時間を１分も持っていない。人間関係づくり、健康づくり、有意義な時間や体験、充足感といったものを後回しにする人生は、幸福度を下げているだけでなく、寿命を縮めているという危機感を持つべきだと思う。
（［出所］「７つの習慣」より）
2年生の女性より。
日常的に本を読みたいと思っているのですが、フィクション（小説）を読むか、ノンフィクション（ビジネス書、伝記等）を読むか悩んでいます。ノンフィクションの方が学びは多いですが、私にとってハードルが高いです。
「どちらか」ではなく、「どちらも」読むべき。関心があったものから手に取ればいい。
ただ、これだけは覚えておいてほしい。
「すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる」
すぐに役に立たないことの方が、長い人生において役に立つことの方が多い。
公認会計士試験に現役合格した4年生の男性より。
監査法人に入社して右も左も分からないJ1（1年生）の時に、どうやってJ2（2年生）、J3 （3年生）の仕事を任せてもらったのですか？
監査法人に勤務する人だけでなく、どこで働くにしても、1年目はピラミッドの底辺から働くことになる。同期以外の全員が上司・先輩になる。イヤな奴もたくさんいるだろうけど、何人かは尊敬できる上司・先輩がいると思う。そういった人に「顔を売る」という努力はすべき。私の場合、J1の時に尊敬できる上司・先輩が5人いて、その5人と仲良くなり、仕事を触ってもらった。あまりにも多くの仕事を触ってもらったので、人事担当パートナーから呼び出されて「担当を減らせ」と言われたが、「やらせてほしい」と食らいついた。尊敬できる人の元で死ぬほど働いたことで、死ぬほど成長させてもらったと思う。
あと、J1の時に心がけていたのは、「上司・先輩の仕事を奪い取る」「上司・先輩を楽にさせる」ということ。与えられた仕事をこなすことは当然のこと、与えられたもの以上の仕事をするようにしていった。そうすると、次からまた大きな仕事を与えてくれる。その繰り返しで、シニアスタッフの仕事をJ1でも覚えるようになり、J1でインチャージ（主査）を経験することもできた。
仕事ができるかどうかは、才能や学歴やIQなどは関係ない。自分より仕事ができる人が周りに何人いるか、だ。私がいた監査法人（KPMG）は優秀な上司・先輩が多く、とても恵まれた環境で仕事ができたと思う。
そんな対話をしながら、本題は拙著『「経理」の本分』をテキストに使って、経理とは何をする部署かという話を学生に考えてもらった。簿記を学んだばかりの学生にとって、経理部とは「仕訳を切る部署」という認識しかないだろうが、いまや仕訳なんて自動で切れる（AIがやる）。なので、経理部は「仕訳屋」でも「金庫番」でもない（こんな話でも学生には驚かれるが、実務を知らないので仕方ない）。「経理」の本分は、あらゆる利害関係者に対して、彼らが求める情報を報告・提供することであり、そこには財務情報のみならず、非財務情報も含まれる…という話をしていった。この授業を通して、経理の仕事に少しでも興味をもってもらえるように、なるべく私の実務経験を交えながら話をするようにしている。こういう話も「楽しい」と言ってくれる学生がいるので、私もやり甲斐があるわ。
-----
授業後、文学部から受講しに来てくれている2年生の学生とお茶をした。
学校もクラブもバイトも、めっちゃ楽しそう。楽しみ尽くせ！
-----
夜、国際学部のK教授と、商学部のS教授と、予約がなかなか取れない芦屋の『きふね』へ。お二人とも会計学者で、定期的にお食事させて頂いている。私は授業にしか出ていない非常勤講師なので、学校法人の動きや、会計業界での動きを教えて頂ける貴重な時間。来年、私もゼミを持つというオファーを頂いていたのだが、学校の細かすぎる規程・要望に応じることが不可能と判断し、お断りした。その代わりに、という訳ではないが、S教授のゼミでゲスト登壇させて頂くことになった。こういうのも「顔を売る」ということだね。
この2人と飲む時はリミッターが切れる。今日もよく飲んだ。
朝から夜遅くまで、楽しい1日だった。
