秋学期 第2講。
授業開始時に、前後左右4名位のグループを作ってもらい、アイスブレイクの時間を設けている。同じクラスの仲間なんだから、挨拶して、顔と名前くらい覚えたら? というお節介?
大学に毎日通ってるのに「友達が一人もいない」という学生もいる。それを悩んでいる学生もいる。なんでやねん。キャンパスに何千人も仲間がおるやん。同じクラスに100人も仲間がおるやん。「おはよう!」って声かけたらええやん。声かけるのが恥ずかしかったら、目で合図送ったらええやん。「おつかれ!」って。そしたら、向こうも「おつかれ!」って合図送ってくれるやん。友達なんて、そこからできていくものじゃないの? 「かけがえのない友達」だって、最初は「よう!」から始まるものじゃないの?
あなたが仲間から目を背けるから、仲間もあなたから目を背けるのだよ。
あなたが不機嫌な顔をしているから、仲間はあなたに声をかけないのだよ。
アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と言っているが、その通りだと思う。良好な対人関係を築こうと思ったら、相手の目を見て挨拶くらいしろ。不機嫌な顔して授業に来るな。
今日は2冊の本を紹介した。
1冊目は『The Blue Zones』(ブルーゾーン)。100歳以上の健康な長寿の人たちがたくさん住んでいる地域を「ブルーゾーン」といい、それは世界に5ヶ所ある(うち1ヶ所は沖縄県大宜味村)。ダン・ビュイトナーという研究者が、その「ブルーゾーン」の人たちの特徴を調査したところ、「家族を最優先する」「人とつながる」といった9つの特徴を発見したのだ(詳細はこちら)。人間関係・コミュニティの存在が長寿の秘訣なのだ。ストレスと肥満が万病の元だと思うが、人間関係でストレスを抱えている人が長生きすることは難しいのではないだろうか。
もう1冊は『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』という本。日本は10代〜30代の死因トップが自殺、40代以降の死因トップはガン、2位は自殺…という自殺大国である。そんな自殺の多い国で、「自殺希少地域」(自殺で亡くなる人が少ない地域)というものがある。その「自殺希少地域」の人たちを研究した人がおり、結論として(本書のタイトルの通り)「ひとの話をきかない」ということが分かったのだ。つまり、「自殺希少地域」の人たちは、人間関係が緊密ではない。隣近所と「立ち場程度」「あいさつ程度」の付き合いはするので、人間関係の数は多く、孤立することはないが、付き合いが緊密ではないのでストレスはない。人間関係で悩むことはないので自殺も少ない(詳細はこちら)。
さて、「友達が一人もいない」と悩んでいる学生諸君は、友達にいったい何を求めているのだろうか。友達というのは利害のない関係である。利害がないのだから、それぞれが好き勝手なところを向いている。配偶者や恋人であれば「同じ方向を向いて!」なんてことが言えるかもしれないが(言うべきでないと思うが)、友達はそうじゃない。好きなものも価値観も、時間の使い方も生き方も、何もかも違う。だから、気がついたら違う所へ行っている。そんな距離感の存在でしかない。それまで仲良かった友達が急に冷たい態度を取ってきたり、急に連絡がつかなくなったりすることなんて、当然ある。ありまくり。それをいちいち「私に非があるんじゃないか」「何か悪いことしただろうか」なんて悩む必要はない。端から利害関係がないんだし、利害関係がないからこそ友達なんだから、そんな関係性である友達との関係に加害者・被害者意識なんて持つ必要もない。去っていった人は忘れろ。葬れ。執着を手放したら、新たな出会いはいくらでもやってくる。人間関係なんて川の流れのようなものだ。なので、何千人もいるキャンパスに通っているのに、出会いがないなんて思わんことだ。友達がいらないなら作らなくていいと思うが、友達がほしいのであれば隣に座っている人と思い切って話せ。「おはよう!」っていえばええねん。「おはよう!」が面倒くさいなら「よう!」でええわ。自分から心を開け。人間関係を遮断するな。そしたら自然と友達はできるよ。私の中学時代からの親友Sも、高校時代からの親友Kも、たまたま隣に座っていていたヤツだったのだ。何年も会わない時もあるけど、誕生日だけは連絡をくれる。30年以上欠かさずに。それ以上、人間関係に何を求める必要があるというのか。
という話から授業開始。
本題は、会計に関する本でダントツNO.1の名著、稲盛和夫氏の『実学』を使って、学校の他の授業で学ぶ「理論」と、実務の世界で行われている経理の「実務」がいかに乖離しているかを説明した。「理論」しか知らない学生には驚きの内容だろうけど、これが「実務」というものだ。そこで、稲盛氏は、正しい会計を実践するために「実践的基本原則」(7原則)をまとめ上げた。『実学』の初版が出てからもう25年以上が経つが、いまでもこの7原則を守れている中小企業はほとんどない。会計が経営を変える、経理が会社を変える。では、経理はどうあるべきなのか。学生の皆さんに考えてほしいと思う。