我ながら、笑けるくらいの移動。こういう時は、じっくりと小説を読むに限る。
朝イチで埼玉県の越谷駅へ。越谷初上陸。以前、「黒字社長塾 in 沖縄」の勉強会を開催した時に、何人かの受講者が顧問契約を結んでくれた。会計顧問であればオンラインで助言はできるが、経営に関する相談は「現場・現物・現実」にあたらなければ話にならない。
今回は、越谷に本社を構える会社の社長に、３拠点ある事業所を案内してもらった。事前に決算書を見てから来たが、最も業績が悪く閉鎖した方がいいんじゃないかと思った事業所が、最も成長の可能性を感じた。やはり現場を見るべきだ。見れば一瞬で分かるが、見なければ何も分からない。
柳井正氏の『経営者になるためのノート』（PHP研究所、2015年）にも、永守重信氏の『成しとげる力』（サンマーク出版、2021年）にも書かれているが、やはり、経営上の課題解決策は「現場・現物・現実」にある（拙著「社長の本分」第７章参照）。今回の滞在は２時間ほどだったが、来て良かった。課題も課題解決策も見えた。
その越谷の社長とヴィーガンバーガーを食べた。濃厚な豆味噌がかかった「豆腐カツ」のハンバーガー。めちゃくちゃ美味かった。ヴィーガンが多い沖縄でも売れるんじゃないだろうか。あまりにも美味しかったので別のハンバーガーも食べたが、写真を撮り忘れた。さすがに腹一杯になった。ハンバーガーを２つも食べたのは学生時代以来だ。
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越谷を後にして、２時間弱かけて、神奈川県の日吉へ移動。
慶應義塾大学日吉キャンパスも初上陸。
駅の真ん前に正門があり、銀杏並木が広がる。なんということでしょう。
今日は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の社会人向けMBA（Executive MBA、EMBA）での講演。社会人向けMBAなので、東証上場企業の経営幹部・管理職など錚々たる方々が在籍・卒業されている。
そんなEMBAの同窓生・現役学生が集まる同窓会組織が、定期的に外部講師を招いて勉強会をしているらしい。過去のゲスト講師も、これまた錚々たる著名人・財界人ばかり。
この同窓会組織の会長が、私のクライアントだった東証上場企業の経理部長さんであり、その経理部長さんが今回の講師に私を推薦してくれた訳だが、どう考えても「場違い」だ。私なんぞが登壇していいものなのか。しかも、『人生後半をグレート・リセットする方法』というテーマで喋って欲しいとご要望を頂いたが、過去の外部講師の講演テーマ（資本主義論やガバナンス論など）と違いすぎる。
事前の打ち合わせの際に、「ホントに私でいいのですか？」「ホントにこのテーマでいいのですか？」と何度も確認をさせて頂いたのだが、「むしろそのテーマで喋って欲しいんです！」、「ブログを毎日拝読させて頂いていますが、私も共感しているのです！」、「武田先生の『グレート・リセット』の話がEMBAの人達に絶対に刺さると思うのです！」とすごい熱量でご依頼を受けたので、お引き受けさせて頂いたという経緯。
『人生後半をグレート・リセットする方法』というテーマで喋るのは初めてだし、私より年上の方も多いので差し出がましいことを言うのも失礼だし、何を喋ろうかと直前まで悩んだが、思うことを包み隠さずお話しさせて頂いた。
まずは、多くの人が感じているとおり、コロナで何もかもが（人々の価値観までもが）変わってしまったということ。2020年1月に開催されたダボス会議の主題が『グレート・リセット』であり、アメリカの多くの企業のCEOが「株主資本主義」からの決別を宣言し、「ステークホルダー資本主義」へと移行した。経済学者の中には「資本主義は終わった」（経済成長は諦めろ）と言い出す人も現れた。最近の売れ筋の本を見ても、成長より撤退、進歩よりレジリエンス、GRID（やり遂げる力）よりQUIT（やめる力）を推している。今回の講演の聴講者の大半が「人生後半戦」を迎える中で、次の３択を迫れれているのではないか。それは、�〆�より頑張るのか、�∪�長を諦め悲観して生きていくのか、�Ｂ�2の成長曲線を描くのか。
第2の成長曲線を描きたいとポジティブに考える方の中にも、「いまの仕事を辞めたら生きていけないんじゃないのか？」、「働き続けないと家族を養うことができないんじゃないか？」と躊躇する人は多い。では、今の延長上で生きていくのか。
私は、（このブログに何度も書いてきたことではあるが）コロナが拡大した2020年に、コンサルの仕事を手放し、豪邸を手放し、フェラーリも手放し、家族も手放し、蔵書も手放し、４トンのゴミと共に何もかもを捨てた。で、コンサルの収入はゼロになった。あらゆるものを手放したら、あとは入ってくるものしかない。沖縄での生活、新しい仕事、新しい不動産、新しい人間関係、新しい家族など、あらゆるものを引き寄せた。母校での登壇という長年の夢まで実現させることができた。これらは、過去に執着していたら絶対に手に入れることはできないものばかり。つまり、最も手放すべきものは「執着」だと思う。
それまでのメインの仕事だったコンサル業を手放したので、一時的に収入は減ったが、仕事と収入のポートフォリオを変えながら、収入は戻っていった。かつてのようにがむしゃらに働こうとは全く思わない。収入が減ったとしても幸福度が膨らめばそれでいいのではないだろうか。
多くの人（9割以上の人）が「P/L脳」で生きている。つまり、収入（収益）から支出（費用）を差し引いて、キャッシュ（利益）がどれだけ増えたかしか考えていない。なので、収入やキャッシュが減ることに敏感であり、恐怖がある。しかし、「P/L脳」は（多くのマネー本には）「貧乏脳」とも言われている。経済的自由で幸福に生きるためには「B/S脳」を持たなければならない。つまり、自分がどれだけの有形・無形資産を持っているか、その資産からどれだけの収益（利回り）を獲得できるか、に着目しなければならない。MBAホルダーであれば、とんでもない無形資産を持っているはず。それをどうやって運用し、世のため人のために貢献・還元していくのかという人生のシナリオMAP（拙著「社長の本分」第１章参照）を真剣に描くべきだと思う。
「資本主義は終わった」説には賛否があるが、「右肩上がりの直線」の人生を手放してはどうだろうか。自分の「武器」を磨き続け、 社会に貢献し、社会に足跡を残す人生を選択してはどうだろうか。ストレスと運動不足は万病の元だと思うが、ストレスになることも全部捨ててはどうだろうか。座り続ける生活も捨ててはどうだろうか。
日本で唯一の「ブルーゾーン」（100歳以上の長寿の人がたくさん住んでいる地域）は沖縄本島の大宜味村である。沖縄に移住して感じるのは、老いた人が（内地に比べて）極端に少ないこと、人々の笑顔が多いこと、幸せそうであることだ。47都道府県で最も所得が低く、最も貧困層が多いといわれる沖縄であるが、どう考えても最も幸せそうなのだ。頑張りながら生きていく姿は美しいかもしれないが、病気になったら元も子もない。あらゆる価値観が変わってしまった今、残りの人生をどうするかを考えるタイミングではないだろうか。執着を手放し、精神の自由を選択し、行動すれば、変化への躊躇も恐怖もすぐに吹き飛んで、新しい幸せを手に入れることができると思う。私がこの２〜３年で得たものは「手は２本しかない」ということだ。手放さないと新たなものは掴めない。手放せば何でも掴める。手放しても死ぬことはない。『グレート・リセット』してみてはどうだろうか。
約90分、こんなお話しをさせて頂いた。
夜、懇親会にもお招き頂いた。
講演後の懇親会って、軽く懇親してお開きになることが多いと思うが、今回は3時間くらい続いたんじゃないだろうか。慶應生はとにかくやかましい(笑)。夏の甲子園の外野席の応援さながら。そして、とにかく面白い。笑いあり、涙あり。ノリがすごい。史上最高の懇親会だった。
普段は同窓会・懇親会に参加しないという方も、今日の講演会のテーマに興味があり参加したという方が何名かいた。皆様、講演内容に共感してくれ、その話で多いに盛り上がった。離婚に関する質問が多かったが、どういうことでしょうか（皆様、ストレスだけはかかえませぬように、精神の自由を掴んでください）。
最後は校歌でも歌い出すんじゃないかという勢いで盛り上がり続けたが、一本締めで解散となった。これまで色々なところで講演をさせて頂き、色々なところで懇親会に出させて頂いたが、ダントツに面白く、有意義な1日だった。
講演が終わっても、「ホントにこのテーマで良かったのか」と思わなくもないが、こんな話に「人生観が変わった」と言ってもらえる方がいたのなら、一生懸命話して良かったと思うことにしよう。
こんなアカデミックな場所に、私をお招き頂いたEMBAのN会長、そしてEMBAの皆様との出会いに、心から感謝致します。
