すんごく良い本だった。

著者リョースケさんは、現時点(2022年)で32歳と若いが、既に世界70カ国を巡った旅人であり、複数の事業を立ち上げている事業家でもある。旅の模様を紹介したYouTubeチャンネル『BUCKET LIST』の登録者は現時点で32万人を超えている。

本書は、中南米、北米、アフリカ、アジア・オセアニア…と、世界各国を巡ったリョースケさんの旅行記である。その気になれば1時間で読める本であるが、私のオススメは、各項についているQRコードからリョースケさんのYouTubeを先に観て、それから本書を読んで欲しい(時間がかかる読み方だが、文字だけでは現地の状況が絶対に伝わらない)。

各章・各項ともリョースケさんが各国での体験から感じた事・考えた事・思った事などが述べられている。これがすんごく良い。日本人の99%が行った事がない場所に行き、日本人の99%がやった事がない体験をやっている。そこで何を観て、何を感じ、何を得たのか。机上の思想家の名言ではなく、地上の体験者の至言は心に染みる。

多くの旅人の旅行記がさっぱり心に響かないのに、リョースケさんの本はズトンと響くのは、彼の原体験(第1章参照)にもあるのだろう。だた漠然と毎日を生き、彷徨うように旅行に行く人が何を言っても興味すら湧かないが、彼には明確な『BUCKET LIST』(=死ぬまでにしたいことリスト)があり、それが人生のコンパスとなり、寄り道をも成長に繋げているところが、私を含め、多くの読者を共感させているのだろう。そして、彼が、世界のであまり知られていない社会問題を取り上げたいという明確な意思を持ち(P206参照)、高層ビル郡が立ち並ぶ表の顔の裏側にあるスラム街にも勇敢に入り込み、突き刺すような視線を浴びながらもカメラを回し続け、喋り続け、リアルな光景を伝えてくれるところも、多くの読者を引き込ませているのだろう。パナマでは、発砲され、周囲の子供たちと必死に逃げるという強烈な体験もされているが(P73〜参照)、これが地球上のリアルなのだ。他の旅行記では味わないスリルまで疑似体験できる。

個人的にかなり気に入ったのは、南米のホンジュラスというところのスラム街で、絶対に観光客が訪れないような床屋に髪を切りに行くというシーン(P81〜)。この動画は是非観て欲しい。言葉が通じないスタッフと、google翻訳やジェスチャーだけでコミュニケーションを取るのだが、それだけで一同が大爆笑。もらい笑いしてしまった。世界の共通言語は笑顔なんだね。本書は、世界各国のことだけでなく、生きていく上で大切なことも教えてくれた。オススメ。