出会いに感謝したい本。
佐藤優さんの 『君たちが知っておくべきこと ―未来のエリートとの対話』という本の中で、「自分の思考の鋳型を知ろう」という実に深い内容の話があり、そこで精神科医の岡田尊司(おかだ・たかし)さんの『マインド・コントロール』という本が引用されています。
この本を読んで以降、岡田尊司さんという方の本をいつか読みたいと思っていた所、書店の新刊書コーナーで本書『生きるための哲学』を見付けました(昔出版された本の文庫化のようです)。
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『生きるための哲学』というタイトルではありますが、西洋哲学の小難しい内容が書かれている本ではありません。非常に読みやすい本です。
ただ、ショーペンハウアーや、ジャン=ジャック・ルソー、ヘルマン・ヘッセ、サマーセット・モーム、夏目漱石、ハンナ・アーレント・・・といった哲学者、思想家、文学者たちが多く登場します。
これらの錚々たる哲学者等の誕生まで遡り、彼等の「哲学」の原点を探ると、彼等が決して恵まれた生い立ちではないことが分かります。むしろ、多くの場合、幼少期の親子の関係に何かしらの「生きづらさ」を経験している。そして、その「生きづらさ」を克服するために、「自分の哲学を完成させる」という壮絶な闘いを小さい頃からやっている。その結果として生み出されたものが、何十年、何百年経った今でも書店に並ぶほどの作品となっている。
この世に生まれた時、頼るべき人は親しかいません。親から愛情を受けて育った人は幸せでしょう。しかし、小さな時から親の愛情を受けることがなかった人、親から暴力を振るわれた人、親を失った人、何らかの事情で親に会えなくなった人、親から認めてもらえなかった人・・・、そういった深い絶望の中で、強いストレスにさらされ、孤独や不安を抱えて生き抜かざるを得ない人も沢山いる。
人によっては、どん底の状態に落ちることにより決定的なダメージを受け、再起不能となることもある。他方、一部の人は、それを克服し、むしろそれを強みに変える。その違いは何なのかは第七章に書かれています。
「生きる」というのは何なのか、個人的な行為なのか、親、家族、パートナーとの共同行為なのか、意味があるのか、虚無なのか、楽しむべきものなのか、苦悩なのか、よく分からないテーマです。しかし、本書を何回も読み返し、自分自身の人生を何度も振り返った時に、何かモンモンとしていたものが流れていく感覚を得ました。本書を読んだ時の感じ方は人それぞれだと思いますが、私の場合、「自分の哲学を完成させる」という壮絶な闘いに残りの人生を割くべきだと思いましたし、自分が本当に何になりたいかを知っているのに行動していないことについて背中を押してもらった気がします。
▼目次
第一章 親と折り合いが悪い人に
第二章 自己否定や罪悪感に悩む人に
第三章 自分らしく生きられない人に
第四章 「絆」に縛られている人に
第五章 自分が何者かわからない人に
第六章 絶望を希望に変える哲学
第七章 生きる意味を求めて