2005年7月4日に私は独立開業しましたので、気が付いたら独立して11年が経ち、12年目に突入しました。

いまだにコンサルティング業という単発契約のビジネスが中心であるにも関わらず、これまで一度も月次売上がゼロになったことがないことが奇跡だと思っていますし、11年増収を続けていることも奇跡だと思っています。単発契約中心のフロー型ビジネスではあるものの、ビジネスモデルはストック型になるようにやっているのですが、その話は置いときます。とにかく、依頼が途切れず、今でも多くのクライアント様に信頼頂いているのは「感謝」しかありません。

順風満帆といわれることもありますが、それは全力で否定しています。「ざけんな!」と。

いろんなものを失い、心に傷を負い、傷口に塩を塗りこまれ、辛酸を舐めさせられ、感情をエグり取られ、そうやって転んでは立ち上がり、這いつくばっては前進し、って不器用ながらもやってきたという感じです。

苦悩や不条理が人間を少しは成長させるのかと思えば、若いうちに色んな経験をしたことは良かったのかもしれません(・・・と思うしかやってられません)。

しかし、

そう思ったとしても、大した慰めにも癒やしにもなりません。傷や怒りというのは消えることなんてないからです。時間だけが、それを和らげてくれるだけです。

香山リカさんの『気にしない技術』という本に、『人生は災難続き、平凡になんとか生き延びるだけでも奇跡』というようなことを書かれていたのには、だいぶ救われました。

ジェラルド・G. ジャンポルスキーという人の『ゆるすということ ―もう過去にはとらわれない』という本が名著だというので読んでみました。言っていることはよく分かるのですが、3回読んでもピンときませんでした。それよりも、伊集院静さんの『許す力―大人の流儀4』という本に書かれていた、『私は許せないものを抱えたら、その大半は許さなくていいと思っている。許してあげられない自分を嫌いになる必要もない。』というコトバに大きく頷いてしまいます。なお、この文章には続きがあります。『ただひとつ私は”許せない”という考えに付帯条件を付けている。”許せない人”に関しては、それを口にしないことだ。』

伊集院静さんの別の本には、『昔からまともな大人というものはごくわずかしかいないのが世の中なのだ』とも書かれていましたが、よわいを重ねると、つくづくそう思います。

以前、『起業して学んだ20個のこと』というエントリーをしました。ここにも書いたとおり、私が起業して学んだことは、「人を信頼してはならない」「ネガティブな人間との関係を遮断する」「最悪な事態が起こるものだと想定しておく」ということです。「お前がネガティブなだけじゃねーのか?」と思われる方がいるかもしれませんが、そう思われるのであれば、契約書を交わさずにビジネスをやってみればいいと思います。普段信頼している人ほど、あっさりと裏切っていくものです。最悪な事態を回避するために、あらゆる手段・労力・時間・カネを惜しむべきではない、というのが私の考えです。

ゴーリキの『どん底』には、『仕事が楽しみなら人生は楽園だ。仕事が義務ならば人生は地獄だ』という一節があります。その通りだと思います。最悪なのは「楽園という思い込み」をしている人です。私も起業してしばらくの間は「楽園という思い込み」に浸っていたと思います。これが正に『どん底』を経験することになるのです。

こういう経験をしてきたから、「起業なんて安易にするもんじゃない」と言っているのですが、相も変わらずに、起業の経験もない大人たちが起業家を育成しようとしているのを見ると吐き気がします。「あんたに何が分かるんだ」。

起業をするということは、(労働力ではなくて)「価値」を提供するということ。顧客が求めている価値を提供できない人を、なぜ起業させようとするのか。明らかに間違えたことを一生懸命やらせている。まともな大人がやることじゃない。

起業することの素晴らしさなんて言われなくても分かっている。その陰にどれだけの人が『どん底』を味わっているのかということを知っているのか?

起業するということを目的にすべきではなく、自分が楽しいと思うことをやるべきで、その手段の一つに起業というものがあり、その先に上場というものがあるのではないですか。手段と目的を履き違えている人から、「起業したいんですけど!」とか、「上場したいんですけど!」とか言われても、「やめとけ」としか言えません。

「楽園という思い込み」から目が覚めたら、全身ガチガチに力を入れて生きてきた自分に気付くかもしれません。すべての重荷を下ろしたとき、人生は楽園だと感じるかもしれません。

私がそう思うのに、7〜8年もかかりました。

思い込みかもしれませんが・・・。



人間を別にすれば、あらゆる動物たちは

生きていることの主たる仕事が、

生を楽しむことだということを知っている。


   ―サミュエル・バトラー(イギリスの作家、1835-1902)



自分らしく、あるがままに生きろ。
No Fun,No Life !!