罪と音楽罪と音楽
著者:小室 哲哉
販売元:幻冬舎
発売日:2009-09-15
おすすめ度:3.0
クチコミを見る



読んでいると、所々共感できる。
小室哲哉氏の足元にも及ばないし、さしでがましいかもしれないし、罪を受けたこともないが、共感できる。

頂きに向かって駆け上がっていき、ある程度の結果を残し、迷走し、転落し…。奈落の底に落ちて行った時に、我を振り返る。

あの小室氏が、今はスーパーマーケットやファミレスに行く余裕があるらしい。これも分かる。私もかつて、深さは比べものにならないが、奈落の底に落ちて一人で上がってこれなかった。仕事もできなかったので、時間的余裕はいくらでもあった。私の場合は山に登った。眼下に広がる幼少時代に過ごした街並みを見ている時に、いろんなことが走馬灯のように駆け巡った。なぜ会計士になったのかということも考えた。
その時、F1でルイス・ハミルトンが最年少ワールドチャンピオンになるかならないか、というF1サーカスの真っ最中であった(その後、最年少チャンピオンを手にする)。試合後のインタビューの度に、ルイス・ハミルトンが「I am a racer,…」(私はレーサーだから、…)と言っていたことが脳裏にこびり付いて離れなかった。レーサーなのだから、チャンピオンを目指すのは当然じゃないかと。
山の上の展望台から街を見下ろし、なぜかハミルトンの言葉を思い出した。そして、「そうだ。俺は経営者ではなく、公認会計士だ。」と、生涯公認会計士として社会に貢献することを自分に約束し、すべてをリセットしたのだ。自分の使命がはっきり見えたのも、この時だ。

小室氏は、自分のことを「音楽家」だと言っている。TM初期から小室サウンドを聴き続けているため、小室哲哉氏のことはよく知っているつもりでいるが、以前は自分のことを「音楽家」とは言っていなかったのではないだろうか。かつては、音楽を愛することもできず、ただヒット曲を量産していた小室氏が、「僕から音楽をとったら、何も残らなかった。」と悟り、「音楽家」としてリセットする。

最終章で、「クオリティーを求める人々は健在である」という小室氏の仮説と、将来への確信の話が書かれているが、これを読んだとき、“第3の波”がすぐに来るような気がした。彼の曲(サウンド)の特徴のひとつは、20年経っても全く色褪せないということがある。また、そういう鳥肌の立つような曲を聴かせて欲しいと切望する。