公認会計士武田雄治のブログ

公認会計士武田雄治のもう1つのブログです。

起業のはなし

独立について

中之島OUI


大阪某所のレストランにて。

大原簿記専門学校で公認会計士試験講座の講師をしている友達から「また教え子の相談にのってやってくれへんか?」とLINEが来たので、二つ返事でOKしたら、受験生からの相談ではなく、監査法人6年目の方からの相談だった。悩めるシニアスタッフ。

監査法人を退職することにしたが、その先、どの道に進むべきかという相談だった。独立も考えているという。

真っ先に「独立して良かったですか?」と聞かれた。独立に関する質問は多いが、私は一貫して「独立なんて安易にするもんじゃない」と言い続けている(そんなことを「やがて哀しき起業家たち」というタイトルで6年前にも書いたことがある)。

ここでも書いたとおり、起業や独立を目的にすべきではないと思う。独立した会計士を見ると、自由で、華やかな生活をしているように見えるかもしれないが、監査法人勤務時代の何百倍も大変だし、地を這うような努力も必要。地を這ってでも辿り着きたい場所があるなら独立すればいいが、そうでないのに独立しても中途半端な人生で終わってしまうと思う。独立なんていつでもできるんだから、その分野で日本一といえるバリューを提供できるまで修行すべきではないかと思う。特に、監査法人のような色んなものを享受できる組織にいるのであれば尚更。

志村けんさんは、独立するかどうかを迷っている人に、3つの問いを立てている(志村けん著『志村流』(三笠書房)より)
(1)何がしたのか、すぐ答えられるか
(2)これだけは自信がある、という特技はあるか
(3)他人から『ちょっと変わっているね』と、よく言われるか

これは、(1)したいこと、(2)できること、(3)独自性、と言い換えることができるだろう。志村さんは、このうち1つでもNOがあれば独立しない方がいいと語っている。これは私も同意である。私の場合、3つともYESになった時点で独立したが、それでも独立してから10年くらいは大変だった。

公認会計士は(登録すれば)税理士になれる。税理士資格を取って、税理士事務所を開業して、固定客から固定報酬もらいながら、監査法人でちょこちょこバイトして、たまにコンサルでもやっていれば生きていけるんじゃないかと考える人が少なくないが、そう思うなら一度やってみればいい。

今日会った彼は、もっと高い志を持っているだろうが、この業界の商売はそんな甘いもんじゃないと思う。

志村けんさんは、ドリフターズに入るまでに何年地味な生活をしていたことか。池上彰さんは、フリーになる前に、何年NHKで記者をしていたことか。地味な中で、日本一といえる知識や技術を身に付けたから、フリーになってからもトップでいれる訳で、ちょこちょこバイトして生きていけばいいと思っている甘っちょろい人間に企業が報酬を払うとは思えない。

私が若い会計士に言うことは、毎回同じ。

生き急ぐな。
隣の芝を見るな。
監査を極めろ。
根っこを伸ばせ。
自分のバリューを高めろ。


今回も同じことをお伝えした。

拙著『経理の本分』の「心得24」でも書いたが、自分の価値(バリュー)と年収はいずれ収斂する。年収1億円欲しければ、先に自分が1億円のバリューがある人間になるべく、地味な努力すべきだと思う。


成功した者は努力しておる
(※ 画像はネットから拝借した)

事業を創るときの留意点

先月、2日間で1つの事業を創り上げるという『SBM』というセミナーを開催しました。

創り上げた事業プランがホントにこれで良いのか自信がないという受講者もいるかもしれませんので、『SBM』開催後にマンツーマンの「個別コンサル」(1日1時間)を実施しています。28名の申し込みがあり、今日までに19名のコンサルを実施しました。

個別コンサルをやって気が付いたことを書いておきます。

まず、大半の起業家は、単一事業から1つのキャッシュポイント(収入源)しか考えられていません。複数のキャッシュポイントがあるはずです。例えばですが、セミナー業をやる場合、単発のセミナー収入だけではなく、その二次配信(動画販売、書籍化等を含む)による収入を得ることもできます。(私のように)セミナー後のフォロー(コンサル等)を実施して収入を得ることもできます。会員制にして定額収入を得ることもできます。BtoB向けのコンテンツをBtoC向けにすることもできるかもしれません。1つの事業から、何パターン、何十パターンもの収入を得ることは可能です。そうすることにより、セミナー収入が5倍にも10倍にもなる可能性があります。誤解を恐れずにいいますが、起業家の方は、もっともっと金儲けに貪欲になるべきです。

また、多くの起業家が、顧客に自社の商品・サービスを購入してもらうための「導線」を考えていません。例えば、HPを開設したり、instagramでコンテンツを配信したりしても、商品・サービスを購入してもらうための「導線」がなかったり、セミナーを開催しても次の階段に登ってもらうための「導線」がなかったり・・・。極論をいえば、モノが売れないのではなくて、モノの買い方が分からないのです。これは非常にもったいないことです。また、既に経営をされている方においても、既存顧客がどのような「導線」で自社の商品・サービスを購入するにいたったのかというデータを取るべきですが、それも十分に出来ていません。営業もマーケティングも科学的に実施すべきですが、多くの経営者が「なんとなく」やっているような印象があります。儲けたいなら、儲けの設計図を先に描くべきです。

さらに、多くの起業家の「ビジネモデル」がオリジナリティに溢れすぎています。他社と差別化を図るべきものは「ドメイン」であり、「ビジネスモデル」は差別化を図ってはいけません。世の中に成功事例が山のようにあります。成功している企業は、それまで多額の予算をつぎ込み、失敗や改善を繰り返しながら、成功を手に掴んでいるのです。なぜそのビジネモデルを研究して、パクらないのか。経営は「TTP」(徹底的にパクる)が鉄則とセミナーの中で何度も何度も言ったのですが、成功モデルを研究した起業家は皆無でした。考えることも大事だけど、ググれ! 何度も何度もググれ!

来週、残り9名の方の個別コンサルがあります。非常に楽しみにしています。

起業して学んだ20個のこと

4年前に『起業して学んだ20個のこと』というエントリーをしました。

このブログの読者の方から、「(このエントリーから4年が経って)他に学んだことがあれば教えて欲しい」と言われました。

この4年間、ライフスタイルもワークスタイルも何も変わっておらず、日々習慣としていることを淡々とやっているだけなので、この『起業して学んだ20個のこと』以外に追加すべきことは思いつかないのですが、いくつか補足しておきます。起業家・経営者の方は参考になれば。

以下、赤字の部分を補足しました。


●すべては選択・決断・行動の結果
→選択・決断・行動なくして変化は絶対に起こらない。直感に従った本気の決断、気が狂ったほどの圧倒的行動が人生に変化をもたらす。決断と行動を遅らせている間にあらゆるチャンスが逃げていく。

●「原理原則」を学習しろ
→「原理原則」に従わない行動をするから失敗する。過去の大成功者の本を読み、自分なりの「原理原則集」を作り、成功者の行動をなぞることが成功への近道。

●書いたことは実現する、書かないことは忘れる
→データでなく、紙に書くこと。思考を落とすノートを1冊、毎日持ち歩き、毎日見ること。思考は現実化する。

●努力しても成功しない
→努力は必要だが、成功とは比例しない。

●価値観と習慣を変えたら成功する
→今のままでいいという「安全領域」に身を置いている限り何も変わらない。


●ビジネスは、ビジネスシナリオ、ビジネスモデル、マーケティングで決まる
→これ以外に売上を上げる方法があるのか。

●儲からない仕事はやってはいけない
→和式の便器はどんなに頑張っても売れない。自分のビジネスが和式便器化していないか。

●「勝てば官軍」
→「負ければ賊軍」。結果を出せ。

●「らしさ」は「無敵」
→ビジネスする上で大切なことは「自分らしさ」を追求すること。

●信頼維持は信頼獲得より10倍苦労し、
 信頼回復は信頼維持より10倍苦労する

→普段から顧客の期待を超える成果を出せ。


●自分がやるべきでないことはやらない
→自分にしかできないことをやる。それが顧客からの「ありがとう」になる。

●いま手にあるものを離さなければ、新しいものは掴めない
→手は2本しかない。人生を変えたければ、いまあるものを手離す勇気が必要。

●忙しいから貧乏
→年収1億円の人は、年収1000万円の人の10倍働いているのだろうか。

●行動を伴わない勉強は時間の無駄
→常に「何のため」を自分に問うこと。

●2次会・ゴルフは断ってでも仕事しろ、仕事を断ってでも旅に出ろ
→最大の経営資源は「時間」。限られた時間で人生と仕事のバランスを取ることが大切。


●世間体を気にしない
→人の目を気にしない。人から何を言われても気にしない。ステージのど真ん中で最高のパフォーマンスを演じる。

●最悪の事態が起こるものだと想定しておく
→世の中は不条理で理不尽なものだ。あらゆるリスクに備えること。脇が甘いと損をする。

●人を信頼しない
→契約書、顧問弁護士がなぜ必要なのかを考えろ。

●悪は裁かなくても自爆する
→天網恢恢疎にして漏らさず。

●ネガティブな人間との関係を断絶する
→「繋がり」とか「絆」とかはいらない。動物は皆孤独なものだ。大切な人が数名いたらいい。

スタートアップのジレンマ(続き)

先日、「スタートアップのジレンマ」というエントリーをしました。起業直後は、売上を上げるために、会社の経営理念や起業家自身の価値観と合わない仕事をやらざるを得ないという「ジレンマ」に陥ることがありますが、「なんでもやる」というハングリー精神をもって先ずはキャッシュフローを安定化させるべきだ、という私の考えを述べました。

これを書いた翌日に、ある公認会計士の方から連絡を頂きました。

来年からの独立を考えているのですが、丁度私も今この問題に直面しており、「武田先生ならどうお考えになるだろう?」と日々悩んでいた所でした。まさかブログでお考えを書いてくださると思いませんでしたので、思わず連絡してしまった次第です。

そんなことを思って頂いていたとは、嬉しい限りです。

この公認会計士さんから、以下のような質問(悩み)を頂きました。
「(自分の専門分野かどうか以前に)ポリシーや考え方と合致しない仕事、なんとなく合わない人との仕事とはどう向き合うか」という悩みもあるのですが、ぜひお気が向きましたらその辺りもご教示いただけたら大変嬉しく思います。

これは、上のエントリーで、「ある一定ラインを超えたら、自分の専門分野以外の仕事は削ぎ落していき、いずれは専門分野に特化すべきだ」と書いたことに関連してのご質問かと思いますが、結論から言いますと、私の場合は、ポリシーや考え方と合致しない仕事などはお断り致します。

とは言っても、これまで何度も「例外」を作ったことがありました。しかし、その度に「自分らしさ」を失い、「どん底」をも味わうことになるのです(これについてはこちらのエントリーもご参照ください)。初めから「原則」に従っていれば、「どん底」を味わうこともなく、もっとバリューアップできたかもしれません。

物事がうまくいかない原因は愛と感謝の欠如だと思っています。逆に言えば、依頼主に愛情が湧かないとか、依頼されたことに心の底から感謝の気持ちが持てないとか、そういった場合は受嘱しない方が良いのです。

それによって一時的に売上が下がるかもしれませんが、バリューアップできる仕事に没頭し、さらに自分の専門性や価値を高めることが、大気圏を突き抜ける最短ルートだと思います。


【関連記事】
2016/7/13 やがて哀しき起業家たち
2014/7/4 起業して学んだ20個のこと

スタートアップのジレンマ

監査法人に8年勤務された後、独立開業された公認会計士の先生から久しぶりにご連絡を頂き、食事に行ってきました。私よりも年上の方ですが、「独自スタイルを確立して成功している独立会計士は武田先生しか思いつかないから、ご相談させて頂きたく」と。嬉しいお言葉です。

公認会計士業に限らず、起業された直後というのは、「売上を上げたい」(もしくは「会社を大きくしたい」)という想いは必ずあると思います。しかし、それが会社の経営理念や起業家自身の価値観と合致しない場合もあり、「スタートアップのジレンマ」に陥ることがあります。

以前、「長距離打者を目指すのか、短距離打者を目指すのか。」をいうエントリーをしましたが、起業する際にはどちらの打者を目指すのかを明確にしておくべきです。それによって、仕事の取り方・やり方が180度違ってくるからです。

ただ、どちらの打者を目指すにしても、起業直後は「なんでもやる」というハングリー精神は必要だと思います。損益分岐点をいち早く超え、キャッシュフローを安定化させなければ、会社は維持・存続できないからです。どんな立派な経営理念を掲げていても、顧客がいなければビジネスは成立しません。

ある一定ラインを超えたら、自分の専門分野以外の仕事は削ぎ落していき、いずれは専門分野に特化すべきだと思います(私はそれが出来るようになるまで10年かかりましたけど)。それが、顧客価値を最大限高めることにも繋がります。

勘違いして欲しくないのは、仕事を削ぎ落していくことと、仕事を選り好みすることは全く次元の異なる話だということです。私がビジネスをしていて一番嫌いなのが「割に合わない」というコトバです。「割りが合う」「割りが合わない」といって仕事を選ぶことは、顧客目線を無視し、自分目線で仕事を選り好みしているだけで、顧客価値を高めることにも、自分の成長にも繋がりません。

この前紹介した大前研一さんの本「(参謀の仕事は)自分の人生の大切な時間を割いて、相手のために命がけで考える神聖な仕事である」と書かれています。また、こちらが提案したことをやってくれそうなクライアントには「労を厭わずに協力する」とも書かれています。

この精神は我々のようなビジネスにも必要なことだと思います。大前研一さんは、マッキンゼーの頃からこういう精神で仕事をされていたから、日本で一番単価の高いコンサルタントなんだと思います。

割とか採算とか考えずに、目の前の顧客の価値を高めることだけを考えて行動していれば、いずれは自分の価値(単価)も高まり、お金から解放され、無重力状態で仕事ができる時がくるはずです。

起業相談

今日は起業を控えている方と打ち合わせ。

いきなり「私、短距離打者ですから!」と言われ、何をおっしゃっているのか、頭の中がクエスチョンマークで一杯になったのですが、「武田さんのブログの記事は読んでますから!」と。なるほど。「真似できるものは真似します!」と本の読み方まで真似している。こういう意識が高い方はきっと成功します。

ただ、起業家の方に注意して欲しいことがあります。とりあえず、2つ書いておきます。

まず、起業時には特に長距離打者を目指すのか、短距離打者を目指すのか、はっきりさせた方が絶対に良いということ。研究開発系のビジネスや、特殊機器を製造するようなビジネスを除いて、殆どの起業家は短距離打者を目指した方が良いと思います。最初から固定費を上げないこと。そして、永続的に固定費削減に努めること。それを守れたら死ぬことはないはずです。

もう一つは、人脈を広げすぎないということ。起業家を取りまく人たちの中には、「変な人」が多すぎます。それについては、こちらの記事とかこちらの記事にも書きました。私が「ハイエナ」と呼んでいる輩が皆様に近づいてきます。善意のコトバを投げかけ、孤独な起業家に救いの手を差し伸べますが、彼らもビジネスですからね。どう見ても短距離打者という選手を長距離打者に変えさせ、会社をデカくさせ、最後にはカネをむしり取る。こういう人がたくさんいますから気を付けてください。

どこで仕事をするか

シンガポールにいた時に、先輩会計士から、「シンガポールにも事務所を構えたら?」と言われたコトバが、帰国後もずっと引っかかっています。

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日本公認会計士協会で登壇させて頂いた『独立会計士のためのマーケティング&ブランディング研修』の最後、質疑応答の時間を設け幾つかの質問にお答えしたのですが、その中で、

会計士として独立開業する際に、開業する場所にこだわった方が良いでしょか?
という質問がありました。

これ、非常に良い質問だと思いました。

結論からいえば、『全くこだわる必要がない』と考えてます。

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私が独立した時は、「個人名(武田雄治)では仕事が取れないんじゃないか」と思い、株式会社を設立しました。「資本金が少なかったら信用が得られないんじゃないか」と思い、資本金1000万円を集めました。「地元(兵庫県)が所在地では受注できないんじゃないか」と思い、独立直後に東京でバーチャルオフィスを借りました。HPにも名刺にも東京のバーチャルオフィスの住所を上におき、あたかも東京にある会社という見せ方をしました。

今となっては、ホントにバカなことをやったもんだと思ってます。事務所を契約するのに何百万も払い、会社を作るの何十万も支払い、人を雇い、備品を揃え、バーチャルオフィスを借り・・・・・・と、一体組織を維持するためにどれだけのカネを捨ててきたのかと。新車でフェラーリが買える位のカネを「ハコ」に使った。原資は親と銀行からの借り入れ。

以前も書いたことがありますが、私が組織を離れ、個人で活動することにした際に、それまでのクライアントさんに挨拶回りに行ったのです。すると、多くのクライアントさんが、『武田さんが組織を離れるなら、契約も武田さん個人に巻き直す』と言ってくれたのです。『我々は、武田雄治という個人と契約しているつもりです。武田雄治という個人の能力や技術を求めているのです。』と。

なんで最初から個人名で戦わなかったのかと悔やみましたね。人生をやり直せるものなら、もう一度やり直したいくらいに悔やんでます。

日本一のマーケッターと称されている神田昌典さんは、『ブランドとはロゴのことではなく、(略)どれだけのファンがいるかである』といってます(出処)。私のような独立会計士レベルでは、「会社名」や「ロゴ」はブランドには成り得ないわけです。「個人名」できちんとブランディング(=ファンを作ること)をやれば、事務所の場所が港区であろうが、千代田区であろうが、そんなの全く関係ありません。

私の名刺には、「武田雄治」の名前とメールアドレスしか書いてません。そこに港区の住所を書けば受注が増えるのかといえば、そんなことは全くない。格好良い横文字の社名を書けば受注が増えるかといえば、そんなことは全くない。ブランディングに加え、マーケティングをやれば、どこにいたって依頼はくるはずです。実際、私は住所を公開してませんし、完全に一人でやってますが、組織に属していたとき以上に仕事の依頼があります。

神田昌典さんは、『マーケティングとは、「あなたの商品がぜひ欲しい」というお客を営業マンの前に並ばせること』だとも言っています(前掲書より)。つまり、マーケティングとは、マスに訴えかけることではなく、見込客に「売ってくれ」と言ってもらうことだというのです(このマーケティング手法を、ダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM)といいます)。つまり、事務所維持費にフェラーリを買えるくらいのカネを使うくらいなら、「あなたの商品がぜひ欲しい」というお客を増やすための自己投資(と仕組み作り)にカネを使うべきなのです。

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ですから、話を戻しますと、会計士として独立開業する際に、開業する場所には『全くこだわる必要がない』と考えますが、これには2つ条件が付きます。一つは、人を雇わないのであれば。もう一つは、マーケティングとブランディングと自己投資をきちんとやるのであれば。

そうすれば、西宮にいたって、シンガポールにいたって、スターバックスにいたって、お客様に価値提供することはできると思います。


【関連記事】
2016/7/13 やがて哀しき起業家たち
2013/7/9 独立について

新しく事業をはじめる人が考えるべきこと

相変わらず、独立・起業の相談が多い。

先日、『やがて哀しき起業家たち』というエントリーをしましたが、ここでも書いたとおり、私は「起業なんて安易にするもんじゃない」と思っています。だから、独立・起業ができないと思う人に対して、根性論で背中を押すというような無責任なことはできない。

私は声がデカイ人とか、うるさい人が苦手なので、厚切りジェーソンって方が苦手なのですが、彼が某誌において「自分の価値が相手にどれほど貢献できているかで決まるから、勉強して自分の価値を高めないと、給料も増えない。それがすべてですよね。」と言っていたのには激しく同意しております。私は、自分のバリューと年収は収束していく、と考えてます。

だから、こんなこと言っちゃナンですけど、独立・起業後に生きていけるのかどうかという心配はするだけ無駄で、厚切りジェーソン氏が言っているように、自分の価値が相手に貢献できるかどかで決まっているわけです。



独立・起業する人が本当に悩むべきことは、(1)「事業ドメイン」(=何をすべきか)と、(2)「ビジネスモデル」(=どうやって儲けるか)ですが、多くの起業家はこの2点を考えてない。

拙著『社長のための 1年で売上が急上昇する「黒字シート」』という本に、以下のような図(ワークシート)を載せています(P102)。

▼事業ドメインの決定
ビジネスシナリオ事業ドメインの決定


この図は、「事業ドメイン」(=何をすべきか)を決定するためには、「求められること」、「したいこと」、「できること」の3つの輪が重なっているところを見なければならない、ということを示しています。「したいこと」だけをやってもダメだし、「できること」だけをやってもダメ。しかし、多くの独立・起業志望の方の話を聞いていると、「・・・がしたい!」、「・・・ができる!」ということはハッキリとしていますが、「それって社会から求められていますかねぇ・・・・・・???」となることが多い。独りよがりなプランニングでは、おそらく失敗すると思います。


和式の便器はどんなに頑張っても売れません。


そのため、「事業ドメイン」を決定するにあたっては、「したいこと」、「できること」といった内部環境考察よりも、「求められること」という外部環境考察が重要です。

「内部環境考察」→「事業ドメイン」の決定、ではなく、
「外部環境考察」→「内部環境考察」→「事業ドメイン」の決定、というモノの見方・考え方が必要です。

私が黒字社長塾をはじめたのも、バックオフィスサービスをはじめたのも、事業をはじめた時にそういったサービスが求められていたからであり、私の方から社会に適応して行ったわけです。



「事業ドメイン」を決めたら、「ビジネスモデル」を決める。

「ビジネスモデル」を決めたら、あとはやるだけ。弾を撃ちまくるだけ。大量行動です。

「ビジネスモデル」を構築せずに大量行動を起こすと、失敗します。

「ビジネスモデル」を構築しても、世の中、そんなにうまくいかないものです。
成果を上げるには「しつこさと 切なさと 心強さ」も必要です。



【関連記事】
2014/7/4 起業して学んだ20個のこと

10年先から逆算して働き方を考える (2)

続き

どういうわけだか、高校生の頃から経営者の本を読み漁っていました。
色んな経営者の本の中でも特に面白いと思ったのは、藤田田、中内功について書かれた本です。
高校の図書館にあった藤田田、中内功、マクドナルド、ダイエーについて書かれた本はすべて読みました。

藤田田は、日本の食の「文化」を変えた。
中内功は、「流通革命」を起こし、一代で日本最大の小売業を作った。

藤田田から「勝てば官軍」ということを、中内功からは「商売人のモノの見方・考え方」を学びました。

正確な表現ではないかもしれませんが、中内功の本に、「時代の二歩、三歩先を見据えることは重要であるが、二歩、三歩先を先取りすると儲からない(=失敗する)。時代の半歩先、消費者の半歩先を行かなければならない。」というようなことが書いていたのを記憶しています。

その後、時代の変化を読み誤ったことによりダイエー帝国は崩壊してしまったのは皮肉ですが、「敗軍の将」からまた経営の難しさを学ぶことになりました。

自分の働き方を考える時、(前回書いたとおり)10年先から逆算して考えるという思考は必要だと思っていますが、ビジネスは半歩先を行かなければならないというのが、これまで膨大なビジネス書を読んだ中でも大きな学びの一つです。



勝てば官軍―成功の法則
藤田 田
ベストセラーズ
1996-10




10年先から逆算して働き方を考える

昨日も書いたとおり、私が独立したのは2005年です。
その時から、情報は1冊のノート(B5サイズのノート)に集約しており、既に数十冊になりました。
(その後、さらに重要な情報はモレスキンに集約するようになった。)

当時のノートを見返すと、「未来予想図」のようなものが書かれています。


10年後の会計業界、コンサル業界がどうなるのだろうかと。


当時、「ウェブ2.0」というコトバが流行した時期だったので、私は「コンサル2.0」というコトバを造り、将来のコンサル業界がどうなるかという予測を立てていたのです。
アルビン・トフラーの影響を大いに受けているのは以前書いたとおりです。)

従来の対面型オフラインコンサルティング(コンサル1.0)のビジネスモデルはいずれ終焉し、ネット上での双方向コミュニケーションによるコンサルティングである「コンサル2.0」の時代が必ずくると予測したのです。

「コンサル2.0」の時代が到来すれば、コンサルタントがクライアント先に訪問するという価値は無くなり、ネット上での「情報価値」が収入と直結するようになる。そうなれば、コンサル業界は二極化することになる。マッキンゼーやボスコンのような「超大手コンサルファーム」と、「その他の大勢の個人」というように。

「超大手コンサルファーム」は、「コンサル2.0」への移行がスムーズに出来ない。他方、「その他の大勢の個人」は、従来型コンサル(コンサル1.0)に固執すると世の中から必要とされなくなり消えていく運命に合う。「コンサル2.0」時代になると、「その他の大勢の個人」にとっては、「組織(会社)」というものが必要なくなり、「個人」のバリューで勝負せざるを得ない時代になる。「組織(会社)」というものが必要なくなれば、「正社員」というものが必要なくなり、「アウトソーシング」を活用するようになる。

このように、会計士の働き方も、将来は劇的に変わるだろう。

しかし、2005年の独立開業時は、まだ「コンサル2.0」は、時代の二歩、三歩先をいくビジネスモデルでしたので、従来型コンサル(コンサル1.0)をやりながら、「コンサル2.0」の準備(種まき)を進めました。公認会計士で「ダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM)」を実践して結果を出したのは、私が初めてではないかと思います。

あれから10年。
「コンサル2.0」なんてコトバは定着しませんでしたが、私が予測した方向にある程度向かっているのではないでしょうか。
少なくとも、私の中は、従来の対面型オフラインコンサルティング(コンサル1.0)は終焉し、PC1台あればクライアントの依頼を解決させることはできるようになった。「組織(会社)」というものが必要なくなり、「個人」のバリューで勝負する時代になった。作業工数で請求することはなく、「情報価値」で請求するようになった。

かつて、松井証券の松井道夫社長が、対面営業を廃止し、ネット販売に特化した時に、社内外から猛烈なバッシングを受けたといいます。しかし、10年後、個人投資家の大半は株式をネットで売買するようになり、ネット進出への対応に遅れた「その他の大勢」は淘汰された。

環境の変化に対応できない動物は滅びる運命にある。
会計士でも同じです。

さらに10年先を考えると、もっと環境は変化するはずです。AI化、ロボット化、IoTといった技術が業界を劇的に変化させる(=従来型のビジネスモデルを破壊する)と思います。もちろん、既に種まきはしています。


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プロフィール
公認会計士 武田雄治


●武田公認会計士事務所 代表
●関西学院大学 非常勤講師

武田雄治


■武田雄治本人によるコンサルティング、セミナー、執筆、取材等のご依頼は、武田公認会計士事務所のHPよりお願いします。
■業者様からの営業はお断りしております
■ブログのコメント欄に、コンサルティング等のご依頼や、個別案件についてのご質問・お問い合わせ等を書かれても、回答出来ませんのでご了承ください。

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