公認会計士武田雄治のブログ

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おすすめの本

【オススメ本】小榑 雅章著『闘う商人 中内功――ダイエーは何を目指したのか』(岩波書店)




学生時代、図書館にある中内功の書籍を片っ端から読んでました。
大阪のはずれで薬局からスタートしたダイエーが、創業わずか15年(1972年)で小売業界の王者三越を抜いて小売業日本一となり、1980年に小売業で初めて売上高1兆円を超えました。私の地元の兵庫県に「流通革命」を起こしたとんでもない経営者がいると、当時は英雄であり、崇拝しておりました。

その中内功に関する書籍が発売されたので、即買い、即読破しました。

著者は中内功の秘書として中内功と長年共にした方。著者しか書けない話が多い。

本書を読むと、改めて、中内功が「商売の原点」を貫き、「商人の哲学」を完成させていった稀有な経営者であることを痛感しました。庶民のために「よい品をどんどん安く」という経営理念を最後の最後まで貫き、松下電器との30年戦争をはじめ、生産者と徹底して闘う商人の姿は、今読んでも痺れます。本書のタイトルの通り、「闘う商人」そのものです。

ダイエーの衰退はバブルの崩壊と阪神大震災が原因と言われることがあります。しかし、本書を読むと、それは根本的な原因ではなく、それよりも前のホテル進出などの多角化の時期からあったのです。

強烈なカリスマ創業者のもと、誰もがおかしいと思っていることすら、何もいえない組織の在り方も問題だったと思います。それ以上に、私が問題だったと思うのは、創業以来、まったくブレることがなかった「経営理念」にあったのかなぁと。「よい品をどんどん安く」という経営理念が、スーパーのダイエー以外にも当てはめてしまった。さらに時代が変わり、飽食の時代になってもその理念を貫いた。誰よりも庶民のために闘かったカリスマが、庶民から見放されてしまった。

「経営理念」というものは簡単に変えるものではありませんが、「経営理念」が社会や消費者のニーズと合わずに陳腐化することもあるということは忘れてはならないと思います。


日本型GMSの先駆者であり覇者でもあるダイエーが、GMSというビジネスモデルそれ自身が衰退の原因だと認めるには、過去の栄光があまりに大きく輝かしすぎた。自分自身を否定されるようなことには、目を向けたくない。

だから中内さんはこう言った。ダイエーの店に行っても品物は並んでいるが、買いたいものがない。もっと買いたいもの、売れるものを並べろ。商品力が足らないのだ。そしてもっと安く売ることに注力するんだ。

ダイエーの確固たるDNAは、規模の拡大とローコスト・マス・マーチャンダイジングである。大量に販売し、価格決定権を確立し、よい品を安く売る、このダイエーの原理原則を順守い突き進む、その道しかなかった。(P233〜)

「おれは自分が間違っていたとは思えない。どんな時代になっても <よい品をどんどん安く> は正しい。不易だ。そう思わんか。 <よい品をどんどん安く> 売って、なぜダメなんだ。ダメなはずはない。この道しかないのだ。この道しかない」(P268、中内功の社長退任の翌年のことば)


【オススメ本】菅野 仁著『友だち幻想』 (ちくまプリマー新書)




10年前に発売された書籍ですが、日本テレビ「世界一受けたい授業」で又吉直樹氏が紹介したことによりベストセラーランキング入り。


本書の概要を、非常にざっくりと、少し乱暴に言えば、

「誰とでも仲良くなることなんて、どだい無理な話だぜ!」ってこと。

さらに言えば、

「自分のことを100%分かってもらおうなんてことも、無理な話だぜ!」ってこと。


親や教師は、「誰とでも仲良くしなさい」とか、「相手のいい所を見て、こっちから仲良くなる努力をすれば、仲良くなれるよ」とかいいますが、誰とでも仲良くなれるなんて幻想だし、自分というものをすべて受け入れてくれる友達がいるってのも幻想だと。

そういことを理解していないから、人間関係に苦しむことになる。

だから相手に過剰な期待を持つのはやめ、どんなに親しくなっても相手のことは「他者」なんだという意識をもつこと。また、相手はすべてを受け入れてくれるわけではないけれど、それでも自分のことをしっかりと理解しようとしてくれている「他者」を求め、向き合っていくこと。そういうことを提案してくれています。

人間関係に苦悩する学生など若い方に向けて書かれた本かと思いますが、大人や教育者も一読の価値があると思います。


・・・学校を卒業してやがて社会に出れば、自分たちと同じ属性を帯びる集団以外の、さまざまな世代や違う価値観をもった人たち、違う地方や、場合によっては外国からきた人たちなどと出会い、関係を作っていかなくてはなりません。

気が合うか合わないかというフィーリングの共有というよりは、役割を分担しながら一緒に仕事をして業績を上げることが第一に重要になる「社会的な関係」にはいると、フィーリングの合う人とだけ付き合うというわけにはいきません。だからそれまでに、自分のなかに異質なものを取り込めるようなある種の構えというものが、自分の中にどうしても必要になってくるのです。
(P123)




【参考図書】
土井隆義著 「友だち地獄―『空気を読む』世代のサバイバル」
高野登著 『あえて、つながらない生きかた』

【オススメ本】石牟礼道子著『新装版 苦海浄土』 (講談社文庫)

新装版 苦海浄土 (講談社文庫)
石牟礼 道子
講談社
2004-07-15



全国民、読むべし。

水俣病の被害者や家族の苦しみを克明に綴った壮絶な記録。

 ・1954年(昭和29年)ごろに水俣市で原因不明の疾患が散発的に発生する。
 ・1956年(昭和31年)5月1日が「水俣病」の公式発見の日とされる。


著者の石牟礼道子(1927-2018)は熊本県天草市に住んでいた一介の主婦でしたが、自らの故郷を襲った惨禍にやむにやまれない気持ちになり、水俣病患者からの聞き書きを開始します。

 ・1960年(昭和35年)頃から本書の原稿が断続連載される。
 ・1969年(昭和44年)に『苦海浄土』として出版される。


『苦海浄土』は第1回大宅壮一ノンフィクション賞を与えられたが、「いまなお苦しんでいる患者のことを考えるともらう気になれない」と受賞を辞退。

その後、半世紀近く読み継がれた不朽の名作であり、作家の池澤夏樹さんは『苦海浄土』を「戦後日本文学第一の傑作」の太鼓判を押し、自身が編纂した「世界文学全集」に唯一の日本の作品として収録しました。

「いつか読もう」と思いながらズルズルと来てしまいましたが、先日著者の訃報を知り、ようやく本書を手に取りました。

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上述の通り、1954年(昭和29年)ごろに水俣市で原因不明の疾患(急性脳症患者)が散発的に発生することにより「水俣病」は発見されました。

原因は、日本窒素肥料株式会社(現チッソ株式会社)水俣工場が海に排出していたメチル水銀を、魚介類を通じて人間の体内に摂取されたことによります。

しかし、チッソ社は水俣病の原因は自社にはないと、何ら対策を立てないばかりか、熊本大学医学部の原因究明を妨害さえする。税収と雇用の多くをチッソ社に頼る水俣市も操業を止めさせる訳にはいかない。厚生省に報告されたのは3年6カ月後のこと。その間に被害が拡大する・・・。時は高度成長期の真っ只中。戦後復興、経済発展という大義名分の前に、企業は人命・人権を犠牲にしてでも金儲けに走りました。

本書を読んで、色んな箇所でビックさせられましたが、1956年(昭和31年)5月1日に「水俣病」が公式に発表される以前から、住民や漁師たちはそれに気付いていたという点にも驚きました。例えば、こんな記述があります。

・・・水俣湾内は、網を入れると、空網で上がってくるのに、異様に重たく、それは魚群のあの、ぴちぴちとはねる一匹一匹の動きのわかるような手応えではなかった。

網の目にベットリとついているドベは、青みがかった暗褐色で、鼻を刺す特有の、強い異臭を放った。臭いは百間の工場排水口に近づくほどひどく、それは海の底からもにおい、海面をおおっていて、この頃のことを、漁師たちは、

「クシャミのでるほど、たまらん、いやな臭いじゃった」

と今でも語るのである。
(P86〜)

この工場の排水口からは、「原色の、黒や、赤や、青色の、何か油のごたる塊りが、座ぶとんくらいの大きさになって、流れてくる」(P87)ような状況だったといいます。「海底の魚どもが、おかしな泳ぎ方ばしよる」(P87)ともいいますから、かなり深刻な状況だったようです。

それでも(貧困層が大半の)漁師たちは、生きていくために、油の塊りの海に出ていく。

そして、生きたいくために、それを売り、それを食べる。

この記述も強烈です。

・・・水俣病わかめといえど春の味覚。そうおもいわたくしは味噌汁を作る。不思議なことがあらわれる。味噌が凝固して味噌とじワカメができあがったのだ。口に含むとその味噌が、ねちゃりと気持ちわるく歯ぐきにくっついてはなれない。わかめはきしきしとくっつきながら軋み音を立てる。(P287)


まさに無間地獄。

なぜこのようなことが起こったのか、根本的な問題は何なのか、罪とは何なのか、そして想像を絶する惨禍に見舞われた時に人はどう生きていくことができるのか・・・様々なことを考えさせられる一冊です。

『夜と霧』『原爆の子』『沈黙の春』などと並び、人間存在の意味を問う、語り継がれるべき名作だと思います。




【オススメ本】佐々木亨著『道ひらく、海わたる ―大谷翔平の素顔』(扶桑社)




新聞広告を見て購入。

著者は、大谷翔平選手が花巻東高校時代の15歳の時から取材を続けているスポーツライター。いかにしてこの「怪物」が誕生したのかを知ることができる一冊。

大谷翔平本人のみならず、御両親や、高校時代の野球監督へも、密な取材をされておりますが、興味深かったのはそういった周りの方の大谷翔平への「配慮」。高校時代から160キロが出ると期待された大谷翔平の成長を邪魔しない気配りが随所に感じられます。押しつけ・詰め込みの教育・指導ではなく、能力をフルに発揮できる環境を整え、可能性を最大限に伸ばしていく。そして、大谷翔平の考え・気持ち・決断・行動を尊重し、彼の喜怒哀楽を全て受け入れる。

これは、メジャー表明をした大谷翔平をドラフト一位指名した日本ハムファイターズの栗山監督にも当てはまります。メジャー行きの夢を尊重し、その夢に寄り添い、球団として手助けする。「二刀流」を薦めたのは栗山監督のようです。

この本は大谷翔平選手の素顔を見ることができる一冊でもありますが、監督者として、指導者として、教育者として、親として、かくあるべきかということを教えてくれる一冊です。

人の成長とは、可能性を伸ばしていくこと。自分よりも高いレベルの人たちと常に付き合っていくことが、成長するための大事な要素だと思います。足が速くなりたいと思えば、速い人の傍へいけばいい。勉強ができるようになりたいと思えば、勉強のできる人の近くへいけばいい。常に高い人の傍で競い合っていけば、何の分野でも成長するものだと思います。今、大谷は自分を成長させるために、さらに高いレベルの人たちの傍へいこうとしている。たとえ今は追いつかない存在かもしれませんが、彼らに追いつきたいんだと思っているはずです」(P192)
(花巻東高校野球部 佐々木監督のことば)


【オススメ本】小林昌平著『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』(文響社)




紀伊國屋書店で出会った一冊。

仕事、健康、家庭、お金・・・といった現代人が抱える悩みは、既に哲学者が格闘し、答えを出しているのではないか。

ということで、以下の目次の通り、現代人が抱えているであろう「25の悩み」を取り上げ、それに対する哲学者の「格闘した思索の跡」をたどっていく、という何ともワクワクする内容。


▼目次
■仕事
「将来、食べていけるか不安」 ⇒アリストテレス
「忙しい。時間がない」 ⇒アンリ・ベルクソン
「お金持ちになりたい」 ⇒マックス・ウェーバー
「やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない」 ⇒ルネ・デカルト
「会社を辞めたいが辞められない」 ⇒ジル・ドゥルーズ

■自意識・劣等感
「緊張してしまう」 ⇒ゴータマ・シッダールタ(ブッダ)
「自分の顔が醜い」 ⇒ジャン= ポール・サルトル
「思い出したくない過去をフラッシュバックする」 ⇒フリードリヒ・ニーチェ
「自分を他人と比べて落ちこんでしまう」 ⇒ミハイ・チクセントミハイ
「他人から認められたい。チヤホヤされたい」 ⇒ジャック・ラカン
「ダイエットが続かない」 ⇒ ジョン・スチュアート・ミル
「常に漠然とした不安に襲われている」 ⇒トマス・ホッブズ
「人の目が気になる」 ⇒ミシェル・フーコー

■人間関係
「友人から下に見られている」 ⇒アルフレッド・アドラー
「嫌いな上司がいる。上司とうまくいっていない」 ⇒バールーフ・デ・スピノザ
「家族が憎い」 ⇒ハンナ・アーレント

■恋愛・結婚
「恋人や妻(夫)とけんかが絶えない」 ⇒ゲオルク・W・F・ヘーゲル
「不倫がやめられない」 ⇒イマヌエル・カント
「大切な人を失った」 ⇒ジークムント・フロイト

■人生
「やりたいことがない。毎日が楽しくない」 ⇒道元
「人生の選択に迫られている」 ⇒ダニエル・カーネマン
「夜、孤独を感じる」 ⇒アルトゥール・ショーペンハウアー

■死・病気
「死ぬのが怖い」 ⇒ソクラテス
「人生がつらい」 ⇒マルティン・ハイデガー
「重い病気にかかっている」 ⇒ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン


哲学の入門書として読むのもよいと思いますが、それぞれの悩みに対する自分の答えと哲学者の答えを対比させながら読み進めると面白いのではないかと思います。

希代の哲学者の回答ですから、どれも「極端」なものばかりですが、妙に納得感があるのはショーペンハウアーなんですよね〜。「この世界は悪と悲惨に満ちたものだ」という人生観を指す悲観主義(厭世哲学、ペシミズム哲学)の代表ともいわれるショーペンハウアー。私もきっと楽観主義者を装っている悲観主義者なんでしょう。。。


ショーペンハウアーに興味がある方は、以下の『孤独と人生』 (白水uブックス)をオススメします。他の出版社から『幸福について』というタイトルで出版されているものと同じ内容ですが、こちらの金森誠也訳がずば抜けて読みやすいです。


孤独と人生 (白水uブックス)
アルトゥール ショーペンハウアー
白水社
2010-04-01







【オススメ本】サマセット モーム『月と六ペンス』 (新潮文庫)

月と六ペンス (新潮文庫)
サマセット モーム
新潮社
2014-03-28



99年前に出版されたサマセット・モームの作品

最高傑作。

『生まれる場所をまちがえた人々がいる。彼らは生まれたところで暮らしているが、いつも見たことにない故郷を懐かしむ。生まれた土地にいながら異邦人なのだ。(略)違和感にさいなまれ、方々をさまよって終の住処を探そうとする者もいる。おそらく、遠い先祖から連綿と受け継がれた本能が、彼らをそのような地へ導くのだろう』(P305)

富も名誉もなく、病気に苦しめられ、人間関係に苦しめられ、ポケットには”6ペンス”しかないような壮絶な人生であったとしても、「自分が在るべき場所」を狂気ともいえるほどの激しさで追い求めれば、人生の最後に最大の愛と幸福に到達する。それは雲に隠れていた”月”が姿を現し、夜空に輝くように。

読後、本書のモデルが画家のポール・ゴーギャンであることを知りました。ゴーギャンといえば「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」の絵画が有名。

まさに「我々はどこへ行くのか」を考えさせられる一冊に出会いました。

嗚呼、素晴らしきゴールデンウィークのはじまり。

【オススメ本】松岡正剛・佐藤優『読む力 ー現代の羅針盤となる150冊』 (中公新書ラクレ)




私の尊敬する松岡正剛、佐藤優の両氏による(意外にも)初めての対論集。単なるブックガイドとして読むも善し、天才2人の読書遍歴、ひいては思想の原型を覗き見するために読むも善し。

天才2人に共通する点は、思想の原型が「本」であるという認識を持っていること。そして、インプットした知をどのように編集し、アウトプットするのかというルールやこだわりのようなものを持っていること(第1章参照)。

例えば、松岡正剛氏は、佐藤優氏の本『国家論』を読んだ時に、こう思ったようです。
・・・その思想にいつどのように出会い誰を介して咀嚼し自らのものにしていったのかという事実、原点を常に並走させながら、論を進めていく。(略)そうしたバックボーンをきちんと挟んで書ける人は、あまりいないんですね。(P36〜)

私自身も知の編集をする際や、アウトプットをする際に、思想のプロセスを意識するように心掛けていましたが、「原点を常に並走させながら、論を進めていく」という手法は参考にして取り入れたいと思います。

松岡正剛氏は、自らの編集方法について、このように語っています。
僕の編集のやり方は、「伏せて開ける」ということです。あるものを開けたければ、伏せるものを考える。その伏せたところから、新しい概念生成がおこるんです。人類2000年の歴史の中で、諸々の思想や学問が言語化されてきたけれど、それらを全部使っても、開く量はわずかでしかありません。見せたいものは見せられない。
そうではなくて、ルネ・ジラールが「世の初めから隠されていること」と言ったように、歴史の中で伏せられてきたことをもっと考えるべきです。
(略)そういうことをすることが本来の編集だと思っています。(P67)

書評をするにしても、私は一介の読み手であり、研究者のような仕事をしたいと思っていないので、例えば丸山眞男や岡潔の著作でもなんでもいいのですが、ある本を褒めようと思ったときに、この本の中に足りないものはいったい何だろう、丸山眞男の中にないものは何だろうと考える。そこから見なければ、新しい丸山眞男も岡潔も見つからない。そんなふうに仕事をしてきたのです。(P68〜)

「松岡正剛らしい」といえばおこがましい言い方ですが、私が彼を尊敬し「天才」だと言うのは正にこれなのです。あるモノを見る時に、いったん伏せる、いったんカッコで括っておく、他のモノとの関係をみる、引き算をする・・・という視点を持つ。佐藤優氏も同じようなモノの見方をしていることが本書を読むと分かります(例えばP76〜参照)。

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最後に、佐藤優氏が本の世界に引き込まれたキッカケになったという中学校の時の学習塾の先生の話はすごい(第1章参照)。中学生を前に、サルトルよりカミュが好き、ニーチェとマルクスには気を付けろ、わからなくてもとにかく読め、雰囲気だけでも味わってみろ・・・といったことを言ってくれる先生がいたようです。佐藤少年はこの先生の「挑発」に乗ってしまったようですが、私は残念ながらそういう教師には出会わなかったなぁ。本書のような難解なブックガイドが私にとっては「挑発」であり、新たな世界を知るキッカケでもあるわけです。やはり、思想の原型は「本」だと思います。

【オススメ本】伊藤穣一、アンドレー・ウール著『教養としてのテクノロジー(NHK出版新書)




本を買う時・読む時は必ず「目次」を見ます。本書は「ジャケ買い」ならぬ「目次買い」。

▼目次
第1章「AI」は「労働」をどう変えるのか?
第2章「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?
第3章「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?
第4章「人間」はどう変わるか?
第5章「教育」はどう変わるか?
第6章「日本人」はどう変わるべきか?
第7章「日本」はムーブメントを起こせるのか?


先日紹介した 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』において、数学者の新井紀子さんはシンギュラリティは到来しない、と断言されていました。他方、『人工知能は資本主義を終焉させるか』において、スパコン開発者の齊藤元章氏は、シンギュラリティは2030年頃に到来する、と断言されていました。前者は「理」、後者は「情」で語っているように私は感じたのですが、実際にシンギュラリティは到来するのか。

本書では、シンギュラリティについて、このように述べています。
シンギュラリティは、技術開発により指数関数的な成長を遂げると信じる思想であり、「科学信奉」に近いものがあります。「科学的に証明されている」というのは、一見すると真っ当に見えるものですが、アカデミック分野においてあまりにも強い「仮説」が認められてしまうと、それを信じ込んでいまい、社会で単純に応用してしまうことが往々にしてあります。(第1章、P28〜)


「AIが我々の仕事を奪うのではないか」との議論が盛んですが、これについて新井紀子さんは「人間の仕事の多くがAIに代替される」と警鐘を鳴らしています。この問題について、伊藤穣一氏は違う視点から述べています。

それは、そもそも「働く」とは何なのか? という視点。「働く」=「お金」ではない。以前、私が『宗教と資本主義』という書籍を紹介した時にも書きましたが、私は金儲けのために働こうという気持ちは今は一切ありませんし、池上彰氏は7つの大学で教えているようですが「これほど経済合理性に反する行為はありません」と言っています。お金に換金できなくても、人は「働く」。つまり、人間から「働く」ことがなくなることはないのです。

伊藤穣一氏は、お金を稼いで生きることが幸せだという「従来型の資本主義」の発想ではなく、「自分の生き方の価値を高めるにはどう働けばいいのか」という新しいセンシビリティ(sensibility、肌感覚)を考えることさらには「人生の意味」(meaning of life)を考えることが重要だと述べております。これはとても共感できます。

日本人は、京都の旅館の女将やレストランの料理人のように、どこか非経済的な「こだわり」を持っている国民性があり、そうした文化を伝統的に持ってきた国であるにもかかわらず、普通の人をみるとこの「こだわり」がない。伊藤氏は、この「こだわり」がない中で、「イノベーションしよう」「変えていこう」という意欲は沸かないため、まず価値観から変えるべきだといいます(第6章参照)。

まさかテクノロジーの本を読んで「人生の意味」を深く考えることになるとは思いませんでした。テクノロジーは、働くことの意味、人生の意味を問う者に大きな富をもたらすのかもしれません。

【オススメ本】鎌田浩毅著『理科系の読書術 ―インプットからアウトプットまでの28のヒント』 (中公新書)




読書が苦手だという人をターゲットに書かれた読書術の本。
著者は京大の地震学者なので『理科系の〜』というタイトルになっていますが、理科系以外の方にもオススメします。

本書は、「難しい本は著者が悪い」(P24)、「読書は我慢大会ではない」(同)、また、本に対する執着や読書に対する強迫観念を持つ必要はないなど、徹底して読書に対する敷居を下げてくれます。

読書が苦行だという人は、「購入した本は全て読破しないといけない」、「読み始めた本は最初の1文字目から最後の文字まで読み通さなければならない」、といった考えを持っているかもしれませんが、その必要はない。

私の場合「全体」を見て「部分」を抜き取るような読書をしますが、本書でも同じような読書術を提唱してくれてます。

例えば、本を読みはじめる前の「コツ」として、以下のようなことが書かれています。
●「目次の読み方は意外と重要」(P22)
●「タイトルサブタイトルの三者は、本文よりもはるかに影響力がある」(P23)

つまり、「読前」に、目次、帯、タイトル、サブタイトルをじっくりと眺め、その本の全体像をまずは掴むこと(私の場合は、内表紙や裏表紙もじっくり眺めます)。この「前儀」に時間を割くことが非常に重要です。そこで「全体」を掴み、目次から「部分」を推測し、この本の中から自分が得るべき情報は何かをある程度特定するのです。著者は「情報は3つだけ取ればいい」といいますが、1つでもあればいいと思います。

そうすれば、最初の1文字目から最後の文字までをなぞるように読めば10時間かかるような本でも、30分、1時間で読めることもあります。「速読」というのは、1分あたりに読める活字の文字数を増やすことではなく、「全体」として一冊の本を一定時間内に読み終えることをいいます(速読については、第3章参照)。

それでも、読み始めたら面白くない本もあります。面白くなければ捨てればいい。
著者は、こんな風に書いてくれてます。
『2:7:1の法則』を読書にも応用するのである。世のなかで2割の書籍にめぐりあえれば、それだけで人生の幸福への切符を手に入れたことになると言えよう。
(略)
7割は、丁寧に取り組めばそれなりのよいものを自分に与えてくれるような本である。
(略)
最後の1割の本は、どうやってもご縁のない本である。人間関係と同様に、そうした本は存在するものなのだ。(P30〜)

10冊の本を読んで2割の本が人生を変えるきっかけとなれば超ラッキーだし、10万円分の本を読んでたった2万円で人生が変われば超絶的にラッキーです。そういう感覚で本と接することが大切だと思います。面白くない本には必ず出会う。そういう本に出会っても、amazonに★1つ付けて酷評するような人にはなりたくない。

そして、著者は、ショーペンハウアーの名著『読書について』を引用して、「読書に溺れる」ことに警告を発しています。つまり、強迫観念をもってインプットばかりするのではなく、「思索する時間」を持つことの大切さを訴えています。これは激しく同意します。
つまり、読書と思索のバランスを上手に取ることによって、人生の達人になれるのだ。(P123)

インプット vs.アウトプット、読書の時間 vs.思索の時間、このバランスを取ることは、私も大切だと思います。

本書の最後には『補章』という章があるのですが、個人的にはこの『補章』が一番オススメ。是非読んで欲しい章。この章では、著者は『フロー型の読書人生』(=ストックからフローへの転換)を薦めています。知識を詰めこみ、蔵書を溜め込むという読書人生ではなく、今すでに自分の中にあるもの使って生きていくことが、人生をよりよく生きていくことになると。「今、ここで(here and now)」を生きる読書に転換してみてはどうだろうかと。読書家の著者がこういう考えにいきついたきっかけが、トランクルームに保存していた「愛蔵」にカビが生え「死蔵」になったことだというのが面白い。ガビが生えた本の中でも、どうしても手放したくない何冊かの本だけを取り出し、あとは処分したそうですが、結局必要な本ってその何冊かに過ぎなかったといいます。

これは読書に限らず、ライフスタイルについてもいえることです。「とりあえず」を捨てていく、今あるもので生きていく。『補章』の最後はこのように締めくくられています。
書籍とは過去の人類が残したすばらしい遺産だが、それでも「今、ここで」にふるいの残ったものだけを自分の未来につなげる。これが本当の意味での読書術の「カスタマイズ」なのである。

すごい。
タイトル間違えてないか(笑)。



 鎌田浩毅教授の書籍はこれまで何冊か読みましたが、その中でも『座右の古典』は何度も読み返しています。


【オススメ本】若松英輔著 『悲しみの秘義』(ナナロク社)





先日読んだ『宗教と資本主義・国家  ―激動する世界と宗教』という本に、批評家の若松英輔さんが登壇されているのですが、この若松英輔さんの話がとても良かったので、若松英輔さんのエッセイ集を読んでみました。

今日の朝起きてから読み始め、読み終えた時には日が暮れてました。
こういう週末も悪くない。
むしろ、こういう本に出会えたという奇跡に感謝したい。

この本は、以前日経新聞夕刊に連載されていたエッセイを書籍化したもののようです。
1つ1つのエッセイが最高に良い。

心を開くとは、他者に迎合することではない。そうしてしまうと相手だけではなく、自己からもどんどん遠ざかってしまう。むしろ、心を開くとは、自らの非力を受け入れ、露呈しつつ、しかし変貌を切望することではないだろうか

変貌の経験とは、自分を捨てることではない。自分でも気が付かなかった未知なる可能性の開花を目撃することである
(P86)


自分が「心を開く」ということは難しい。相手に心を開いてもらうということも難しい。自然と心が閉ざされていくこともある。それが自己の悩みやコンプレックスになったり、相手を傷つけたり、はたまた、別れの原因となったりする。

いったい、そうやって同じ悩みを何十年繰り返してきたんだろうか。

若松英輔さんは、『心を開くとは、自らの非力を受け入れ、露呈しつつ、しかし変貌を切望することではないだろうか』という。

言われてみれば、そうだよなぁ〜と思う。

分かる分かる、と今日1日に10回以上、同じ箇所を読み返しました。

打ちのめされました。こういう魂の入ったコトバをさらっと書けるってすごい。

今後何度か読み返すことになる本になると思います。
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公認会計士 武田雄治


●武田公認会計士事務所 代表
●中小企業支援の「黒字社長塾」代表
●中小企業のコスト削減・業務効率化支援の「バックオフィスサービス株式会社」取締役



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