公認会計士武田雄治のブログ

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おすすめの本

アケミ・ジョンソン著『アメリカンビレッジの夜』

アメリカンビレッジの夜——基地の町・沖縄に生きる女たち
アケミ・ジョンソン
紀伊國屋書店
2021-08-31



2〜3日の旅をしただけでは気付かないことは多い。沖縄に住むようになってから、米軍基地のデカさと米軍関係者の多さに驚かせれた。私の住んでるマンションの傍にも基地があるが、基地の反対側に行くには車で10分以上かかる。

日本は世界のどの国よりも多くの米軍の構成員を受け入れており、日本政府は米軍基地の年間経費、数千億ドルを払い続けている(いわゆる「思いやり予算」)。国内にある基地の約70%が沖縄にあり、本島に米軍の構成員や家族約5万人が暮らしている。

終戦から1972年に日本へ復帰するまでの27年間、そして沖縄本土復帰から今日までの50年間、沖縄はアメリカに占領・統治され、基地が置かれ続けてきた。その間に、レイプ、殺害、事件、事故、騒音、爆音など、様々な問題が勃発し、「基地はいらない」「米軍出て行け」と叫ばれてきた。

しかし、私が初めて北谷町にある「アメリカンビレッジ」に行った時、兵士たちや日本人たちが海沿いの商業施設に集まり、バブル時代のディスコの如く盛り上がっていた。そこには「米軍出て行け」と叫ぶような人はいない。人種・国籍を超えて、ビール瓶を交わしている。日本にもこんな活気がある場所が残っていたのかと嬉しくなったものだ。

本書の著者(日系アメリカ人4世)も、アメリカの大学生だった時に初めて沖縄を訪れ、「アメリカンビレッジ」を通った時に、「これまで見たこともないアメリカを垣間見」、「私の頭から離れなくなった」(P17)という。再び沖縄に戻ってきた著者は、沖縄で暮らし、沖縄に生きる女性たちの話を聞き歩き、沖縄の政治・社会・歴史の真実を浮かび上がらせ、本書をまとめたのだ。『アメリカンビレッジの夜 —基地の町・沖縄に生きる女たち』というタイトルなので、沖縄の「部分」にフォーカスを当てた本だと勘違いしていたが、実は沖縄の「全体」をめちゃくちゃ奥深くまで掘り下げて書かれている。沖縄の過去・現在・未来を知るにはベストな一冊かもしれない。

これまで沖縄では残忍極まりない強姦事件はあったが、それ以上に恐ろしい殺人事件が報道されないこともある。レイプはもちろん犯罪だが、それを政治利用する者もいる(第1章参照)。沖縄には、アメリカ人を好む日本人女性(アメジョ)や黒人を好む日本人女性(コクジョ)も少なくないようで、彼らと付き合うために夜な夜なクラブに行ったりもする。米兵よりも、沖縄人女性が軽蔑されることもある(第2章参照)。報道だけでは分からないことが多いものだ。

衝撃を受けたのは沖縄戦についての記述の箇所。昨年4月に渡嘉敷島に行った時に、「なんでこんな島に集団自決の跡地が何ヶ所もあるんだろ??」と不思議に思ったのだが、その答えも本書に書かれていた(第4章参照)。沖縄の人たちは、子供の時から、アメリカ軍に捕まったら、服を剥ぎ取られ、強姦され、使い終わったら戦車で轢き殺される…というようなことを吹き込まれていたのだ。生き残ることは恐怖だという異常心理が渡嘉敷島の島民にも伝播し、アメリカ艦隊が近づいてくると、手榴弾を使って集団自決をする者や、石やカミソリなど身近な物を凶器として親や子を殴り殺す者が続出し、「地獄絵さながらの阿鼻地獄が展開していった」(P128)という。そして、島民の約半数が犠牲になった。生き残った人は当時を回顧する。「アメリカ人よりも日本人のほうが私どもにとって恐ろしい存在」だったと(P129)。実際に、日本兵は、沖縄人をよそ者とみなし、多くの沖縄人を殺害している(P41参照)。

多くの人が知らない沖縄の真実が淡々と400ページ以上にわたり語られている。初の著書とは思えない文章力・取材力。注釈・参考文献に挙げられている本の数もすごい。参考文献に含まれている本まで購入して、夢中で読み続けた。とにかくすごいノンフィクションだった。まるで小説のように読ませる翻訳家の力量もすごいと思う。今年読んだノンフィクションの中ではダントツNO.1。

樋口耕太郎著『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』 (光文社新書)と共に、超オススメ!

生物はなぜ死ぬのか




この世の始まりは、138億年ほど前の「ビッグバン」から始まったと言われるが、それを見た者は誰もいない。しかし、138億光年(1光年は光が1年間に進む距離)先が見える望遠鏡があれば、ビッグバン直後の情景が見えるかもしれない。

実は、そんな望遠鏡が近い将来、完成するらしい(第1章)。

最初に10ページで、かなりワクワクさせられる。

我々が見ている夜空には、様々な熱力学が働き(物理学)、化学反応が起きている(化学)。生物が誕生したのは(今のところ)もっと後の話だといわれている。つまり、生物学は、天文学・物理学・化学に比べると、「新参者の学問」(P22)ということになる。

しかし、この新参者の生物学者は、数マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1mm)の細菌や、数十ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1mm)のウイルスなど、肉眼で見えない世界のメカニズムを解明してきた。さらに、恐竜をはじめ多様な生物が進化し、変異し、絶滅してきた歴史や、そこから生き残った生物の進化の歴史も解明してきた(第2章参照)。

つまり人間は、138億光年先の世界から、ナノメートルの世界までの進化の歴史や実態などを把握することが出来てきたのだ。しかし、地球に存在する多様な生物が「なぜ死ぬのか」については、明確に答えられる人は少ないだろう。本書は、生物学者の著者が、その問いに答えている。その生物学的な論理展開は第3章〜第5章を参照されたい。「生き物は利己的に偶然生まれ、公共的に死んでいく(P216)ものなのだ。

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本書の最後に、ヒトの未来について書かれている。

著者の知り合いで、普段は温厚で優しい方が、メールでは過激なことをズバっと言う人がいるという(P205)。そういう人は私の周りにも多い。そういった「ネット人格」が、本人とは逸脱した人格を形成していく。数年のうちに、AIやメタバース(仮想空間)がヒトを支配し、ヒトが従属する世界が来ると思うが、そうなるとヒトはどうなるのか。ここで、とても印象に残る一節があった。

「何より私が問題だと考えるのは、AIは死なないということです」(P211)

ここに、もし人間が死なないとしたら我々はどうなるのか、というヒントがあるのではないだろうか。

おそらくヒトが(AIと同じように)死なないのであれば、社会や集団の中で進化をすることもなかったのではないだろうか。思考することも、学習することもなかったのではないだろうか。複雑な言葉を使ったり、豊かな表情をジェスチャーを交えてコミュニケーションをすることもなかったのではないだろうか。大切な人と価値観や喜怒哀楽を共有することもないだろう。

AIは、ある意味でヒトよりも合理的な答えを出すようにプログラムされている(P214)。ヒトが人らしくあり続けるために、ヒトが作ったAIは、進化を続け、私達よりもヒトを理解できるかもしれない。その結果、本当に優れたAIは、自分で自分を殺す(破壊する)かもしれない(P215)。

生物は死ななければならないのだ。

死は恐怖であり、悲しいことかもしれないが、そう思うのは、美味しい料理を一緒に食べて「美味しいね」と共感できる人がいるからなのだ。つまり、死の恐怖は、常に幸福感を与えてくれたヒトとの絆を喪失する恐怖なのである(P204参照)。

逆説的にいえば、そういう幸福感を与えてくれるヒトを大切にすることが「生きる意味」なのかもしれない。

なんという壮大で感動的な話か!

人生は有限、人生は二度なし。
いまを大切に生きよう。
大切な人を大切にしよう。


人生百年の教養

人生百年の教養 (講談社現代新書)
亀山郁夫
講談社
2022-04-13



言わずとしれたドストエフスキーの翻訳家 亀山郁夫さんが『人生百年の教養』という本を出された。知的興奮を覚える本だった。

教養とは何か。

大学の一般教養の授業のような知の詰め込みではない。

真の教養とは、人間の知とエモーションが一体化したものであり、他者と対話・コミュニケーションを通じて共有されることで初めて価値を持つものであり、経験されるべき何かである(序章・第1章を元に、私なりに再定義した)

著者 亀山郁夫さんは、「『共通知』としての教養は死んだ」と述べている(P9)。知識だけ詰め込んで、その優越感に浸り、他者と対話を拒み、他者の批判ばかりし、一人で喜怒哀楽をむき出しにしている人がいるが、それは「知識人」ではなく、単なる「常識人」にすぎない。そんな常識人の知識は「知識同士を結び合う鎹(かすがい)のようなものが存在せず、知識としてばらばらに散財しているだけ」(P33)なのだ。

上述の通り、「知」は「共有」されるべきのである。その「知」は世界中のいたるところにある。「隣人は、知の宝庫」(P181)である。そのため「知」を共有できる相手(同志)を広く世界に求めるべきなのだ。自分だけが知の体現者であると考えるのは「傲り」である(P9)。

本書で最も重要な文章は、次の一文かもしれない。
「謙虚な気持ちで隣人の言葉に耳を傾け、隣人の愛の対象を正確に見きわめる努力を重ねたほうがどんなに得策かわかりません」(P10)

著者は、隣人が愛するものを知り、隣人が何を喜びとしているかを知ることが、自分の思考を豊かにする秘訣であり、それを盗み、反復し、思考し、また反復することが、自己発見のための最短の道であると述べている。隣人の「喜び」を模倣する欲望に素直になることが大切だとも述べている(P181〜)。そして、その隣人と、喜怒哀楽をすこやかに経験できる知性を持つことが、真の教養人である(P21、P275等参照)。すこやかな喜怒哀楽を経験する準備として、文学や芸術や歴史を学ぶのである。

ほとんどの知識・情報がウェブから入手できるようになった今、知の詰め込みにさほど意味はなく、知の取得や教養それ自体が、「探究型」から「選択型」へと代わっていった。そして、知の「共有」は、一歩進んで「継承」すべきものになっていった。真の教養人の「使命」は、教養を「継承」することである。その「継承」とは、文学者、芸術家、教育者、研究者などが作品を残すだけでなく、同志で「語り合い」をすることも含まれる。東京外国語大学の学長でもある亀山郁夫氏は、コロナ禍におい、学生の授業・課外活動が全面的にオンラインに置き換えられた事態に陥ったことについて、「大学はおそらく精神的な危機にさらされるはず」と述べているが(P242)、この精神的危機は大学や学生だけの問題ではないだろうと思う。

誰しもが平和を願うが、平和を願う人々の輪が広がろうと、ひとりの人間の「狂気」の前には無力であった。そして、ロシアによるウクライナ侵攻という深刻な悲劇が起こった。これに対して、教養人は何ができるのだろうか。繰り返すが、知識の詰め込みは意味がない。教養人としての「使命」は何なのか、本書の随所にその答えが書かれている。

本書は、最近の教養ブームの中で出された教養本とは一線を画する、真の教養人とは何かを教えてくれる本である。超オススメ。

煙か土か食い物

煙か土か食い物 (講談社文庫)
舞城王太郎
講談社
2012-12-03



昨日紹介した 凪良ゆう著『流浪の月』に続き、すんごい小説に出会った。

舞城王太郎著『煙か土か食い物』という本。いつもベッドに入ると1分後には寝てしまう私が、寝る間も惜しんで夜中遅くまで読み耽った程にハマった。

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この本との出会いは、雑誌『BRUTUS』(2022/1/15号)「百読本」という特集。この特集は、読書家に「100回読みたい本、ありますか?」と聞いたもの。読書家が「100回読みたい」と思うような本なので、誰もが知ってるロングセラーも何冊か紹介されているが、聞いたことも見たこともないという本をピックアップしている人もいる。

ある声優さんが、舞城王太郎著『煙か土か食い物』という本をピックアップしていた。私は、この著者も、この本も存じ上げていなかったのだが、変わったペンネーム、変わったタイトル、しかも副題の「Smoke,Soil or Sacrifices」という英題に、直感が働いた。

そして、直感は正しかった。

すげーー面白い本だった。

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この著者、学歴・職歴など非公表で、三島由紀夫賞の授賞式にも欠席するなど、公の場に姿を現したことがないらしいが、文章を読む限りにおいて、かなり頭がいい人だと思う。

最初のページから猛ダッシュで駆け抜けるスピード感と、文章力、表現力が凄すぎる。さらに、この内容も展開も発想も衝撃。ネタバレになるので内容には触れないでおくが、幅広い教養と深い知識無くしてこんな内容の本は絶対に書けない。これまで読んだことがないタイプの小説だった。著者の本業は外科医なのだろうか。文学にも造詣が深い方と思われる。引用される本がまた凄い。

100回読むかどうか分からないが、何度か読み返すことになりそうな小説に出会った。興奮する一冊だった。かなりオススメ。

「生きていても虚しいわ。どんな偉いもんになってもどんなたくさんお金儲けても、人間死んだら煙か土か食い物や。火に焼かれて煙になるか、地に埋められて土になるか、下手したらケモノに食べられてしまうんやで」(P162)

流浪の月

流浪の月 (創元文芸文庫)
凪良 ゆう
東京創元社
2022-02-26



これはすごい作品。
2020年本屋大賞受賞作。
もう文庫化された。

夏の夜明けは早く、東の空には炎のような薔薇色が立ち上がっている。けれど夜の領域にはうっすらと白い月がまだ残っている

もうすぐ消える、まるでわたし自身のように感じた。
(P144)

人生は、もうすぐ消える月のごとし。

人には、コンプレックスや、トラウマ、心に負った傷など、それぞれの事情があり、それは家族であっても打ち明けられないこともある。いや、身近な人だからこそ、そういったことは打ち明けられないものかもしれない。

誰もレールに沿って生きていないのに、人にはレールに沿って生きることを求める。自分の痛みには弱いのに、他人へは容赦なく痛めつける。人間は、そういう生き物なのだ。

本書『流浪の月』には、コンプレックスを抱えた青年、性的悪戯をされた少女など、事情を抱えながらも、自分の思いを言葉で伝えられない人や、発した言葉が伝わらない人が登場する。私もコンプレックスを抱えて生きてきた人間なので、彼らの悲鳴が痛いほど分かった。

本書において、「事実と真実はちがう」という文が2箇所出てくる(文庫版P256、P344)。著者が言いたかったのはここだろう。みんな、自分の好き勝手に解釈しているだけで、「事実」なんてどこにもない(P229)。事実と真実の間には、月と地球ほどの隔たりがあるのだ(P281)。だから、どんなに言葉を伝えても、絶望的に分かり合えないこともある。

本書の中で、「世の中に『本物の愛』なんてどれくらいある?」(P157)と主人公が自問する箇所がある。本物の愛、無償の愛と思われている夫婦、親子、婚約者などとの関係も、それは自分が愛と定め、そこに殉じようと心に決めているだけではないのか。「本物なんてそうそう世の中に転がっていない」(同)。

だから、様々な事情を抱えた人は、人を避ける。そして、黒々とした絶望を抱えながら生きていく。しかし、それを解放してくれるのもまた人である。そういう手を差し伸べてくれる人こそ、(本物の愛ではないかもしれないが)本物の人間関係ではないだろうか。そういう人を大切にしたい。

朝が来る

先日札幌で買い付けた物件の所有権移転登記が完了した。長年の友人でもある司法書士の友達が、登記済証(権利証)を持ってきてくれた。せっかくなので、一緒にランチをした。彼女と食事をする時は、グルメの彼女に店を選んでもらう。いや、彼女以外の人と食事をする時も、彼女にお店を選んでもらうことが多い。そんじょそこらの食レポよりも、「この人に聞いた方が確実」といえる美食家がいるのは助かる。

彼女は、私と同じく、基本的に1日1食の生活をしているらしいが、私と違う点は、彼女はランチしか食べない。ランチでフルコースを頼んでも、ディナーの半額で済む。もとから酒を飲まないから、毎日外食しても、エンゲル係数は低い。浮いたカネは、書籍代、旅行代に注ぎ込んでいる。

夕方には自宅に戻り、夕方以降はTVもスマホも見ないことに決めているらしい。確かに、夕方以降にLINEを送って既読になったことはない。夕方から寝るまでの間(5〜6時間?)は、「読書、読書、読書」の読書三昧だという。午後も、移動中も、読書をしているので、1日の読書時間は相当なものになるはず。数百ページもあるような分厚い本も、ペロンと読んでしまうのは、この圧倒的な読書時間にあるのだろう。



弱すぎる阪神タイガースの試合を観る時間で、1日1冊くらい本を読むことはできるだろうなぁ〜と思いながらも、夕方になると「サンテレビ」を付けてしまうのだが、さすがに今年の野球観戦ばかりは時間の無駄に思えてならない。今日の広島戦は途中でTVを消した。指揮官に覇気が無く、何もかもが噛み合わず、打ちのめされていく姿が痛々しい。去年は最終戦間際まで優勝をつかみかけていたチームだから実力はあるはずなのに、実力以外の何かが明らかに欠けている。

しばらく読書の時間を意識的に増やしていこうと思う。


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朝が来る (文春文庫)
辻村 深月
文藝春秋
2018-09-04



執筆が終わって、最初にしたかったことは、「小説を読むこと」だった。
何冊かの小説がデスクに積み上がっていたが、最初に手に取ったのは辻村深月さんの『朝が来る』だった。良い作品だった。

辻村深月さんの本は、昨年、本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』を読んだことがある。これも面白い作品だったが、個人的には『朝が来る』の方が好きだ。映画のように切り替わる視点、展開、描写に、読みながらの「すごい作家だなぁ」と唖然とした。

本作には、何組かの「家族」が登場する。血が繋がっている家族、血が繋がっていない家族、家族も十組十色である。本作は、特別養子縁組という難しいテーマを取り上げ、真の家族、真の愛について教えてくれる。

親といえども、子より長く生きているだけであり、大人であるとは限らない。未熟な親は多い。そのような親ほど、子の全部を理解できると信じ、子の些細な言動が気になって仕方ない。「何を考えてるの!?」「なんなことしたらダメでしょ!?」「どれだけ心配したと思ってるの!?」「どんな気持ちでいたと思ってるの!?」といった言葉は、子のためにいってる訳ではなく、自分の望む通りに子を操るために発しているに過ぎない。親は子を見ているようで、子の後ろにいる別の子を見ているのだ。それは失敗せず、品行方正な穢れのない、自分の望む通りに育った子。他人と比べられて育った子は、親が、自分の中味を見ていないことを当然に理解する。

本来、子供にとって、親しか頼る人がいない。しかし、その親の傲慢な考えにより、子供はプライバシーを失い、自尊心を傷付けられ、打ちひしがれるような、気の遠くなるような青春時代を過ごすことになる人もいる。そんな長いトンネルの先に、朝は来るのか。

純粋無垢に育った子が理性を持ち始めると、親から離れていくというのは自然の摂理なのだろうが、傲慢な親によって傷付けられていくというのもそうなのだろうか。家族、親子という不思議な関係について、あれこれと考えさせられる一冊だった。

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そして、阪神タイガースに朝は来るのか。

余計なことまで考えてしまう。。

ぷらっと沖縄

WOLFGANG PUCK PIZZA

しばらくアポもないので沖縄へ行くことにした。
監査をしている公認会計士は4月〜5月が繁忙期だが、上場企業を顧客にもつコンサル屋は4月〜5月が閑散期となる。この間はセミナーもない。執筆も終わったので、ちょっとゆっくりしようかと。

伊丹空港(大阪国際空港)は旅行客で賑わっていた。春休みなので、女子大生や家族連れも多かった。沖縄便はほぼ満席だった。

ずっと閉店していた空港内のハンバーガー屋も、昨日から営業を再開したらしい。出発前に腹ごしらえ。

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機内で、橘玲さんの『裏道を行け』という本を読んだ。副題は『ディストピア世界をHACKする』。副題が重要な意味を持つ。

これまでの橘玲さんの本を寄せ集めたような内容であり、『無理ゲー社会』の続編のような内容であるが、「攻略不可能な理不尽なゲーム」(無理ゲー、P231)の社会、かつ、「正直者が馬鹿を見る」(P268)という社会において、HACKされる側ではなく、HACKする側に回り、自分らしく、幸せに生きるヒントを教えてくれる。

ベストセラー『スマホ脳』にも書かれているが、大半の人が平均で1日4時間、若者の2割は7時間もスマホを見ている。1日4時間ということは、1日の16.6%ということであり、人生100年に換算すれば16.6年ということになる。このスマホの時間を、何か違うことに当てれば、どれだけ人生が変わるだろうか

本書で、カル・ニューポートという方の『デジタル・ミニマリスト』(ハヤカワ文庫)という本を紹介している(P244〜)。「オンラインで過ごす時間を容赦なく削り、ごく少数の価値ある活動に集中する」ことを提唱し、これを「デジタル・ミニマリズム」と名付けているらしい(P245参照)。テクノロジーの最先端にいる西海岸の若者が、最近、テクノロジーから距離を置いているようだが、それは「SNSなどの現代のテクノロジーによって、日常的に脳をハックされていることに(最近の若者が)気づいているからではないだろうか」(P248)と橘氏は述べている。スマホに依存せず、デジタル・ミニマリストの生活をすれば、HACKされる側ではなく、HACKする側に回ることができるはずである。上述のカル・ニューポートは、これを、「疲れ果てたマキシマリスト」から「主体的に行動するミニマリスト」に生まれ変わることができる、と表現している(P245、良い言葉なので、ノートに書き写しておいた)。

かつての「顕示的消費」に若者が興味を持たなくなり、SNSの「評判」に価値を重んじるようになった流れは「巨大なパラダイム転換」(P262)であり、この流れはコロナにより加速した。そうすると我々の働き方も転換していかざるを得なくなる。橘氏は、やがていくつかのプラットフォーマーと、そのインフラを利用してビジネスを行う個人(フリーエージェント)や小企業(マイクロ法人)だけになっていくのではないか(P261)と述べている。この主張は『黄金の羽根の拾い方』の初版が出た20年前から何も変わっていないと思う。つまり、このような働き方は「裏道」ではなく「王道」であり、「黄金の羽根」だと思うのだが、ロングテールの世界において大多数の人がそれに気付かずに、スマホ中毒者の如く、人生をHACKされていく。

本書の最後で、橘氏は、バラバラの個人が協働するという働き方が近代の価値観の完成形だと述べてて締めくくっている(P261)。沖縄にいても、海外にいても、フリーエージェント同士がチャットするだけで仕事ができる時代になった。富の獲得を目指さなくても、FIRE(早期退職)しなくても、ミニマリストにならなくても、やりたいことをやれば生きていける。

没頭して読んでいたら、あっという間に那覇空港に着いた。


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美浜アメリカンビレッジ


レンタカーを借りて、北谷に着いたら、日が暮れた。
アメリカンビレッジも、観光客が多かった。

沖縄は既に海開きをしており、もうTシャツで過ごすことができる。夜は涼しくて気持ちよかった。

何が良いって、スギやヒノキの花粉がないこと。来年から沖縄に移住する予定だが、もう花粉症の苦しみから解放されるのかと思うと、EDMをかけて飛び跳ねたいくらいに嬉しい。


北谷ビール


マンションに帰り、冷蔵庫にあった地元の北谷ビール(Chatan Beer)を飲む。
こっちのスーパーで売っていたミミガージャーキーをツマミに。

今日は「デジタル・ミニマリズム」な1日だった。
これからもできるだけデジタル・デトックスをしていこうと思う。
人生をHACKするために。

スマホを捨て、町に出よう!
No Fun,No Life!!

リン、腎臓、老化

腎臓が寿命を決める 老化加速物質リンを最速で排出する (幻冬舎新書)


本の書評を書くことって、本を読むことよりも時間と労力がかかる。
執筆中も何十冊か本を読み漁っていたが、書評を書く余裕がなかった。書評を楽しみにブログを読んでくれている方もいるのだが、「評する」というのはなかなか時間がかかることであり、(私の場合は)おいそれとできることではない。

とりあえず、執筆が一段落したので、これまで読んできた本の書評も書いていこうかなと思う。

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ということで、今日は『腎臓が寿命を決める』という本を。

長生きしたい方にはオススメの一冊。

著者は、老化の仕組みを解明する研究を続けている方で、老化抑制遺伝子である「クロトー遺伝子」というものを発見されたという、この道の最前線をいく方。医学的な説明は省略するが(本書第1章〜第3章参照)、結論を言えば、「リンこそが老化を加速させる物質」ということ。リンは人体に欠かすことができない物質だが、過剰摂取すると腎臓をの機能を低下させ、血管や細胞にゲメージを与え、老化を加速させるという。

ただし、厄介なのは、リンは無味無臭であり、塩分、糖分、脂質のように、「これだけは控えよう」という食行動が取りにくく、知らず知らずのうちに口に入れてしまっている。そのため、リンが多く含まれるであろう食品の過剰摂取を控えなければならない。

リンが多く含まれるのが食品添加物であるため、日頃から加工食品、ファーストフード、カップラーメン、スナック菓子、スーパー・コンビニのお惣菜、スイーツ、清涼飲料水などは控えた方が良い。

また、食品表示に、リン酸塩Na、メタリン酸Na、ポリリン酸Na、ピロリン酸Na、かんすい、酸味料、香料、乳化剤、pH調整剤、強化剤、結着剤などの表示があるものも控えた方が良い。「◯◯料」「◯◯剤」といった表示が多いものは買わない方が良い。

食品添加物が多そうなものだけでなく、とんでもなく日持ちがするもの、いかにも着色料を使ってそうなもの、値段が安すぎるものなども買わない方が良い。

こういったものは(発がん性があるだけでなく)リンの過剰摂取からくる「老化」の原因になるという訳だ。

さらに著者は運動すること(体を動かすこと)も重要だという。われわれの祖先は、陸に上がって生活をするようになり、リンとカルシウムを骨に貯めるシステムを進化させ、硬い骨を身につけるようになった。しかし、最近の人は座りっぱなしの生活をしており(特に日本人は世界の中でも座位時間が長いといわれている)、運動量・活動量が極端に減っている。そうなると、骨の中のリンが「役目は終わった」と判断し、骨の中のリンやカルシウムが流出し、体内のリンが増え、骨と腎臓が衰え、老化が加速することになる。

つまり、長生きするためには「食事」と「運動」が大切というシンプルであり分かり切った結論になる訳であるが、そのカギとなるのがリンと腎臓という、これまであまり目立つことのない”地味な存在”(P188)だったという話。

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執筆中は異常な位に座りっぱなしの生活を続けていたので、ちょっと運動量を増やさないとなぁ。




困難は必ず解決策とともにやってくる

スタバ


「黒字社長塾」のクライアントで、契約を「永久自動更新」してくれる会社がある。毎月、月次決算を分析し、P/Lを圧倒的な黒字にし、B/Sを強固な筋肉質にしていくということは、既に実現している。

元々会計に詳しくなかった社長が、私と出会ってから数字を細かく見るようになり、さらに企業価値の源泉がキャッシュであるということも理解するようになり、キャッシュフロー経営を行ないながら、キャッシュの最大化に努めている。ファイナンスをせずにキャッシュを2倍にする目標をたてており、そのためにはP/Lの利益を最大化するだけでなく、B/S側でもアレヤコレヤと戦略を立てなければならない。

いま取り組もうと思ってるのが、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を最適化すること。CCCとは、仕入れた商品を販売し、何日間で現金化されるかを示した指標。CCCが小さければ、現金を回収するサイクルが短いということなので、手元のキャッシュが増えることになる。逆に、CCCが大きければ、現金を回収するサイクルが長いということなので、手元のキャッシュは減ることになる。

例えば、月末に商品を現金で仕入れ、その日のうちに翌月末日払いの掛売りをすれば、現金化されるのに30日かかるということなので、CCCはプラス30日となる。

大半の中小企業はそんなことを考えずに、早めに支払い、回収は滞る。しかし、逆なのだ。支払いは遅らせ、回収は早めなければならない。そうすれば、CCCは小さくなり、キャッシュは増える。現金で支払っていたものについては、翌月(もしくは翌々月)の末日払いに変更し、受け取る側についてはなるべく現金かPayPayなどで受け取る。それだけで、CCCは大幅に圧縮され、キャッシュは増える。

ちなみに、AmazonのCCCは、マイナス28.5日である。これは、商品が発売される28.5日前にすでに現金化されているということを意味する。なぜ、そんなマジックのようなことが起こりうるのかは、成毛眞さんの本に詳しい(経営者は必読)。

最近読んだ日本電産 永守重信会長の『永守流 経営とお金の原則』という本にも、日本電産グループが重視する指標はCCCだと書かれていた(P65〜)。CCCが悪化するということは「経営にひずみが出ている証拠である」(P66)と述べるだけでなく、(たいてい不正が起こるのは在庫と売掛金であるから)CCCの管理は「不正防止という観点からも役立つ」(P67)と述べているあたり、さすがの永守氏である。


永守流 経営とお金の原則
永守 重信
日経BP
2022-01-01



なお、この本は、日本電産が創業して13年後の1986年に、永守重信氏が上梓した『技術ベンチャーが書いた体あたり財務戦略』という本を底本とし、全面的に書き改めた本。なので、底本は36年も前の本ということになるが、こちらも経営者の方にはオススメ。

最後に載っている「トップの心構え」(P222〜)、「経営者のための10か条」(P225〜)は何度も読み返した。

未来を語るには、「ホラ」「夢」「目標」の3段階があり、「ホラ」にも「大ホラ」「中ホラ」「小ホラ」の3段階があるというくだりは笑った(P162〜)。いつも大ボラばかり言ってるが、それを実現させているのがすごい。

創業以来、年中無休で家にいる時間がほとんどない生活をしていたので、子供が小さい時の作文に「こんな父で不幸だ」と書かれたことがあるらしい。父はそういうことが忘れられないものだ。しかし、1998年に東証一部に上場した際に、大学院生になった子供が「お父さんのような親を持って誇りに思う」とお祝いの手紙をくれたらしい(P158)。ええ話や。

大ホラばかり言って、何も実現しなければ、ホラ吹きで終わる。結果を出さねばならない。経営には困難がつきものだが、「困難は必ず解決策とともにやってくる」(P224)の一文は染みた。

会計の本

執筆中は、参考文献を読むのに精一杯で、経営や会計の本ばかり読んでいる。読みたい本が溢れてきた。早く脱稿したい。

経営関連の本は100冊以上は目を通しただろうか。年末に紹介した『2021年下期 良かった本』の上6冊がとっても良かった。特に『スターバックス成功物語』『ソニー再生』『稲盛和夫、かく語りき』は何度読み返したか分からない。原稿でも大いに参考にさせて頂いた。あと、『ビジョナリー・カンパニーZERO』も。

会計関連の本は、やはり『実学』がしびれる。また何度も読み返した。読み返すたびに気付きがある。

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ふだん、会計の本は余り読まないのだが、最近買った本で参考になったのは以下の2冊。


この1冊ですべてわかる 経理業務の基本
小島 孝子
日本実業出版社
2022-01-21


これはすごい本だった。

『経理業務の基本』というタイトルだが、経理の日常業務・決算業務の説明のみならず、財務、税務、労務、監査、予算、IFRS、国際税務、情報セキュリティーなども触れており、著者の小島孝子さんの守備範囲の広さには驚かされる。暗号資産の会計処理まで触れられている。

基本的に、1テーマ、1ページ(もしくは見開き1ページ)でシンプルに説明してくれているので、1つのテーマを深く学ぶための本ではないが、経理実務の全体像を大局的に俯瞰するにはとても良い本だと思う。

「経理の新人が実務を学ぶのにオススメの本はないか?」と聞かれることが多いが、遂にオススメしたい本が出てきた。

経理事務の基本



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もう1冊。



中小企業向けの本。中小企業の経営者で、会計が苦手という方にはオススメ。『実学』の中で「会計がわからんで経営ができるか!」と書いているが、経営をするには、最低限の会計リテラシーは絶対に必要。しかし、会計を避けている経営者は多い。野村克也監督が提唱した「ID野球」の如く、数字・データを重視・駆使して、理詰めで利益を上げ、キャッシュを増やし、企業価値を高めなければならないと思う。

少なくとも本書に書かれていることは理解した方がいいと思う。個人的には、第4章の経理業務の「電子化」の話は全ての中小企業の経理部門が読んで欲しいと思った。紙の伝票を使うとか、ATMで振り込みをするといった「昭和の経理」はそろそろ恥じるべき。

先日登壇の『経理プラスサミット2022』でも言ったのだが、DX(Digital Transformation)の前に、CX(Corporate Transformation)や、BX(Back-office Transformation)が必要だと思う。

そんな話を原稿にも書いているので、新刊を楽しみにしておいてください。

脱稿に向けて、あと少し頑張ります。
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