公認会計士武田雄治のブログ

公認会計士武田雄治のもう1つのブログです。

おすすめの本

男性脳 VS 女性脳

昨年末から心理関連の本を乱読してきた。世の中には自分の理解の範疇を超えた人が沢山いることを知った。自分を中心に物事を見ると分からないことが多い。大尊敬する松岡正剛氏が、無知から未知、未知から既知、が読書の醍醐味だと言った通り、最近の読書を通じてまた新たな世界を知った。

amazonのベストセラーランキングを定期的にチェックしてるが、そこで『妻のトリセツ』という本がずっとランクインしている。最初は全く興味がなかったが、どんどんランキングが上昇していくのを見て興味が湧いてきた。ランキングが上昇していくというのは、世間の評価が高いということだから。

結婚したのになぜ分かり合えないのか。なぜ不機嫌なのか。なぜ会話がないのか。なぜ離婚が後を絶たないのか。男性脳、女性脳というコトバを使って、男女の心理・思考の違いを説明している。なるほど、ということが沢山書かれている。本書の結論ではないかもしれないが、私がこの本から受け取った著者からのメッセージは、女の『オチのない話』に対して、男は『共感したフリ』をしとけ、ということ。そんなドストライクに言っていいのか? と笑ってしまったが、120%の納得感。

自分の「箱」から脱出しなければと必死にもがいていた世の男性既婚者に、痛快なトリセツだ。『情』で話す相手に、『理』で返すな。相槌を打っておけ。 以 上。

この本の内容に納得してしまっていいのかという想いもあるが、まだまだ世の中には知らない世界が多いことを知った。読書の醍醐味だ。






白血病

Twitterで池江璃花子選手の白血病の公表を知った。ショックがデカい。まだ18歳と聞いて更にショックだった。以前も書いたが、私の知人も昨年ガンになった。私より若い人だ。この時もショックを通り越して言葉が出なかった。

「明日は我が身」と思ってるので、口に入れるもの、肌につけるものには気を遣ってるし、食事、睡眠、運動も相当規則正しい方だと思う。何事も「〜し過ぎ」ということがないようしている。でも、どれだけ摂生しても、完全に病気を防ぐことはできない。多くの病気が細胞レベルの話であり、その細胞が変質したものだ。そんな世界のことを完全にコントロールすることは私にはできない。

ただ、無知が原因による不運だけは避けたい。先日もガンが消えたという方に会いに行って話を聞かせてもらった。途轍もない知識量に驚いたが、私たちのこれまでやってきたこと(原因)が今の自分を作っている(結果)という当たり前のことを教えられた。これは病気になった人はこれまで不摂生だったということではない(上述のとおり、病気は完全にコントロールできない)。その方から教えられたのは、病気になっても原因を取り除くことはできるということだ。それは外科的にガン細胞を切除するとか、放射線を照射するということだけでなく、細胞を変えるほどに生活を変えるということだ。医学に委ねなくても、無法者になった細胞を元に戻すことが可能だということを、その方は証明した。以後、大きな病気もなく健康でおられる。

病気になって一番ショックを受けているのは間違いなく本人だろう。でも、池江選手も私の知人も負けないで欲しい。医師でなく意志のチカラで、細胞を我に返らせるほどのチカラで、病気を完治させて欲しい。

最近読んだ本でホントに良かったと思ったのがこの2冊。私と同様に無知が原因による不運だけは避けたいと思っている方は「必読」。無知ほど怖いものはない。







『ある男』

平野啓一郎氏の『私とは何か』という本を読んだのは2年前。この本で唱えられている ”人間は相手に応じて複数の顔を持って良い" とする「分人主義」の考え方に、私はかなり救われた気がする。

それまで、自分の中にいくつもの顔(人格)があることに苦しんでいた。しかし、平野啓一郎氏は、この本の中で、自分の中に複数の「分人」が存在し、どちらの「分人」も自分であり、付き合う人によって違った自分が引き出されるということを述べている。

自分が相手によって変わるのではなく、付き合う人によって違った自分が引き出される。だから、自分が最も愛する人とは、最もいい自分の顔(人格)を引き出してくれる人だ。だから、平野氏は愛をこのように定義している。『愛とは、相手の存在が、あなた自身を愛させてくれることだ』(同書P138)。これ以上にしっくりくる愛の定義はない。

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では、愛しあって結婚した相手が、嘘や隠し事をしていた場合、その愛は偽りなのか? しかも、相手が名前も出身も戸籍も全てが嘘で、赤の他人になりすましていたら??

この週末に平野啓一郎氏の最新作『ある男』を読んだ。
在日三世の弁護士の元に、事故死した再婚相手が実は全く別人の名前を使って生きていたとの相談を受ける。弁護士も国籍、民族、遺伝の問題に対して少なからず心に傷を負っている。だからこそ(だと思うが)依頼者からの相談に応じ、「ある男」の過去を追いかける。

私は以前、好きになった異性や、結婚を考えている異性の「過去」を知る権利はない、という趣旨のことを書いたことがある。この物語も似たような話といえるかもしれない。言葉で説明された過去が、真実の過去と異なっていたら、その愛は間違ったものなのか。台無しになるのか。むしろ、本当の過去を知らなかった(知らされなかった)からこそ、愛し合え、幸せな人生を過ごせた、ってこともあるのではないか。ここにも「分人主義」の考えが絶妙にブレンドされ、生きる意味を時間軸と断面図の両面で描く。

弁護士の男も、依頼人の女も、小さな子供を持つ私と同じくらいの年齢と思われる。家族を持ちながらも孤独を抱える男、愛する者を立て続けに失った不運な女、そんな男女の心理描写が素晴らしく、そこに自己の生活を投影して感情移入していく。そして同じような境遇の自分もここで救われていく。

気が付いたら最終ページだった、というような小説だった。平野啓一郎氏の小説は初めて読んだが、小説としての凄さ以上に、作家として凄いと感じた。京大在学中に『日蝕』でデビューした際に三島由紀夫の再来と騒がれていたのが懐かしい(あれからもう20年も経つ)。他の作品もまた読んでみようと思う。



ある男
平野 啓一郎
文藝春秋
2018-09-28

8/100,000,000,000

宇宙に命はあるのか


書店でこの帯を見て購入。

この本は超オススメ
夢を追い求めてる人は読んで欲しい。
夢を諦めてる人も読んで欲しい。
上の写真の帯にもあるように、子どもにも読ませたい一冊。

この世に存在するものは、先人がイメージしたものがカタチになったもの。イメージできないものが実現することはない。アインシュタインはこのように言っている。

Imagination is more important than Knowledge.
  (イマジネーションは知識より大事だ)

人間が宇宙に飛んだのも、月に到達したのも、先人がそれを強くイメージしたから。

しかし、宇宙の138億年の歴史を1週間に縮めてみると、人類が月に到達したのは7日目の23時59分59.9979秒のことであり、人類は宇宙のことをまだ何も知らない。銀河系にある約1000億個の惑星のうち、無人探査機を送り込んだものも含め、人類が近づいた惑星はいまだに8個しかないのだ。

知りたくないだろうか。 宇宙には何があるのか? 地球外生命体は存在するのか? 我々は何者なのか? 我々はどこから来たのか? 我々はひとりぼっちなのか? といったことを。

これまで多くの人がイメージした。1865年にジュール・ベルヌという人が書いた『地球から月へ』という小説はベストセラーになった。その本に影響を受けたロバート・ゴタードという人は、1926年に世界初の液体燃料ロケットを打ち上げた。飛行時間は2.5秒、到達高度は12mだったが、ゴタードは生涯にわたってロケットの改良を続けた。彼は宇宙への夢を果たせなかったが、彼のイメージは後世に引き継がれ、1969年にアポロ11号が月に向けて飛び立った。今、NASAには数万人が勤務しているという。著者もその一人だ。

たった「0.003秒」の間に、多くの科学者、技術者、政治家、小説家等がひとつのことに熱狂するのはなぜか。その原動力はなにか。それこそがImaginationなのだ。誰も知らないことを知る方法はひとつしかない。イマジネーションだ。

本書は、この「0.003秒」の人類のイマジネーションと宇宙探査の旅路、そして未来への旅の予見が詰まった1冊。最初から最後まで、ワクワクが止まらなかった。驚くことに、あと20年もすれば、我々は何者なのか? 我々はどこから来たのか? 我々はひとりぼっちなのか? という問いへの答え・ヒントが得られるかもしれないという。

人類のチカラは無限だと激しく感じる。

上述のジュール・ベルヌはこんな言葉を残したと言われている。
「人が想像できることは、すべて実現できる。」

ひとりの強烈なイマジネーションは、複製され、増殖され、人から人へと広がって、やがて実現するのだ。ひとりの人間が生きている間に成し遂げられることなんて、たかが知れてるかもしれないけど、大きな夢を持ち、ひとつの夢を追い求めることは大切なことであり、素敵なことだ。

色んな意味で壮大なスケールの本だった。久しぶりに何十冊と購入して、色んな人に配りたいと思った本に出会えた。感謝!




小休止のすすめ

小休止のすすめ (SB新書)
ヒロミ
SBクリエイティブ
2019-01-08



『小休止のすすめ』というタイトルの本を書店で見付けた。「いいタイトルやなぁ」と思った。表紙に写っているのは、生き様が好きなタレントのヒロミさん(53歳)と藤田晋社長(45歳)。二人とも若い頃は死ぬほど働いていたと思う。藤田晋社長は、20代の頃は、平日は9時〜26時まで、土日も12時間働いていたという(P38〜)。しかし、このような働き方をしていたのは20代だけで、30代、40代になってからは「小休止」を挟み、メリハリを付けているという。ヒロミさんも一時期テレビから消えたが、その間もめちゃくちゃ遊んだらしい。

20代から働き始めたら、長い人は50年、60年と働くことになる。休みなく50年も60年も走り続けるなんて無理に決まってる。私は35歳くらいでそれを悟り、資産形成をはじめた。

逆にいえば、気力体力のある20代は死ぬほど働くべきだと思う。世間は「働き方改革」だの、「残業禁止」だの、「休日出勤禁止」だの、労働時間を抑制することに躍起になっているが、いまだに納得できない。ハラスメントは絶対にダメだと思うが、好きで仕事をやってる人間に対して労働時間だけを抑制するのはナンセンスだと思う。死ぬほど働きたい人は死ぬほど働くべきだ。30代、40代になってからでは身体が言うことをきかなくなる。20代のうちに死ぬほど働いて付けた差は、30代、40代になっても埋まることはない。20代が勝負だと私は思う。

ただ、ある程度の歳になったら、ヒロミさんが述べているとおり、「引き際を自分で決める」(P50〜)、「山登りも人生も下山が大事」(P66〜)、「力の抜きどころを見極める」(P187〜)、「人生は長距離走で考える」(P223〜)といったことも大切だ。こういったことを考えないと肉体か精神を壊す可能性がある。


『小休止』とは関係ないが、本書でヒロミさんがとても共感できることを書いていたので、備忘録的に残しておく。
「俺、ヒロミさんにずっと付いていきます」と言ってくる人のことは、話半分で聞いておいた方がいい。大抵はいなくなる。経験上、言葉に出すヤツより、黙って付いてくる人の方が信頼できる。(P74)
ホンマ、そのとおり。こういうことを言ってきた人が何人かいたけど、見事に全員いなくなった。。。


【関連記事】
ヒロミ著『いい訳しない生き方。』(ロングセラーズ)

ナラタージュ

先日読んだ島本理生さんの『イノセント』という小説が良かったので、『ナラタージュ』(角川文庫)という作品も買ってみた。恋愛小説を立て続けに読むなんて多分人生で初めてのことだが、それは特に深い意味はない。

本作『ナラタージュ』は映画化もされており、主人公は有村架純だったらしい。映画は観てないが、どうしても有村架純をイメージしながら読んでしまう。

高校生の時に好きになった男性教諭(葉山先生)と、大学2年になってから再会する。今でも葉山のことが好き。しかし、葉山の嘘がばれる。バツイチ独身と思ってたが、妻と別居してるだけで離婚が成立していないことを知る。

「隠していたことを話したら最後、今度こそ君は離れていってしまうと思ったんだ」(P199)

ずるい男だし、不器用な男だ。前読んだ『イノセント』にも不器用な男が登場する。男は不器用なものだ。

私は葉山と別れることを決意する。別れと嘘と裏切られたという気持ちがぐちゃぐちゃに絡み合って責めたてられる。人目をはばからず号泣する、嗚咽する。全てをゼロに戻そうと思った時、私を想ってくれる同級生(小野君)に告白される。そして付き合うことになる。

小野君と付き合うことになったが、彼と寝てても目を閉じると思い浮かぶのは葉山の顔。結局、小野君も疲れ、二人は別れる。葉山は妻の元に戻っていくが、しかし・・・

という、なぜか不思議な既視感を覚えるストーリー。

『イノセント』に比べて深みがなく、展開が浅いのに400ページもある。長い。正直読むのに辟易とした。しかし、『イノセント』と同様に、所々に深く引き込まれていく魅力があり、一つ一つのシーンの表現力が秀逸で、ため息が出そうになった。小説なのに赤ペンを何ヶ所も引いた。

例えば、妻の元に戻っていく葉山と最後のセックスをするシーン。
私はふいに怖くなる。私はもう彼のことを愛していないのではないかと疑ってしまう。欲望の強さで愛情すら霞んでいく、この先もう誰と寝ても同じように満たされることはないのではないか。それとも今日この午後がすべてとなって、その余力で残りの一生を、セックスを持ちこたえていくのではないか。(P394)

これを著者は20歳の時に書いたというから驚かされる(「早熟の天才小説家」と称されているのも頷ける)。若くしてどれほどの恋愛をしてきたのだ・・・、それに引き換え、僕の20歳の頃は・・・と、どうでもいいことを考えてしまう。40歳を超えても、セックスをこのように表現する経験も表現力も私にはない。


ナラタージュ (角川文庫)
島本 理生
角川書店
2008-02-01



心の傷を癒す方法

自分のことを「言語化」しなさすぎる人は多い。
誰の周りにもいるはずだ。
”よく分からない人” が。

開示しないと「疑い」の対象になる場合がある。開示すれば「信頼」を得られる場合がある。では、自分のことを何でも開示すべきなのか。相手に何でも開示させるべきなのか。

例えば、好きになった異性や、結婚を考えている異性の「過去」を知る権利はあるのだろうか。Yesという人もいるかもしれないが、私はNoだと思う。そんな権利はないと思う。その相手が婚約者であろうが、「過去」に何があったのかはどうでもいいと思っている。夫婦になったってプライバシーというものがあるように、相手の全てを知る権利も必要性もない。「疑い」を始めたら、戸籍謄本から家系図から在学証明書から何から何まで調べなければならない。嘘は付いていないと「信頼」するしかない。

しかし、相手を全面的に「信頼」することが愛することではない。

どんな人間でも、大なり小なり、過去のトラウマ、コンプレックスなどを引きずっている。何か重いものを抱え、これ以上傷付くことを怖がって、色んなものから逃げてきた人もいるだろう。そういった過去を墓場まで持っていく人もいるだろうし、覆い隠すために ”大人の嘘” を付くことだってあるだろう。

ただ、何らかの事情で相手の「過去」を事後的に知ってしまった場合、それを全て引き受けることができるか。 例えば、未婚と思った相手が結婚していたら? バツが付いていたら? 隠し子がいたら? 浮気していたら? 罪を負っていたら? 自分はそれを引き受けることができるか。

相手の「過去」に目をつむって生きていく、という選択もできる。これ以上その相手と関わらない、という選択もできる。無責任な優しさで関係は続ける、という選択もできる。しかし、これらのどの選択をしても、それは「信頼」したことでもなければ、愛することでもない。

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書店でたまたま手に取った島本理生さんの『イノセント』(集英社文庫)という本をこの週末に読み耽っていた。「イノセント」とは純潔という意味だ。最初の数十頁は余りにもフツーの純愛小説的な内容だったので途中で読むのを止めようかとも思ったが、途中から引き込まれていった。後半は唸った。こんな素晴らしい小説に出会えるとは思わなかった。後から島本理生さんが直木賞作家だと知った。納得だ。こんな若いのにこんな本が書けるのは凄いとしか言いようがない。

万能の神でも全員を救ってくれる訳ではない。神でも善人でもない自分が人を救うことができるのか。聖書の教えを所々に織り交ぜながら、重い過去を抱えた人、深い絶望を抱えた人に対し、人生を捧げ、身を犠牲にして救うとはどういうことなのか、救済とは何なのか、そして本当の愛とは何なのかについて教えてくれる物語。

読みながら、自分自身がいかに相手と向き合っていなかったのかを思い知らされた。相手に踏み込んでいないのだ。踏み込むことに恐れているのかもしれない。他方で、自分自身にも過去のトラウマ、コンプレックスなどを引きずっている。そんな過去を覆い隠している。そんな過去は「言語化」したくない。そう、つまり、自分自身も周りから見たら ”よく分からない人” なのだ。根本には、相手が自分のことをさらけ出すこと、また自分が自分のことををさらけ出すことに対し、相手から拒絶されることが怖いという心理があるのだ。自己防衛が働き、相手と距離を置き、自分を殻に閉じ込めている。

かと言って、人間は万能の神にはなれない。完璧な平穏も完璧な人間もこの世にはいない。人の心は弱く、うつろいやすい。神の導きどころか、悪魔が用意いた誘惑に引っかかり続けるのだ。そうやって、向き合わなければならかいものからさらに逃げる。そして「過去」から追いかけられることになる。本書にもそういった3人の登場人物が、不器用に振り回されていく。まるで自分自身を見ているようだ。

本書を読んで、他者とどう交わり、どう生きていくべきかを教えてもらったような気がする。相手の「過去」に対しても、自分の「過去」に対しても、きちんと向き合わなければならない。自分の気持ちに素直になり、相手に気持ちを伝える。さらけ出す。自分のトラウマもコンプレックスも弱さも全てを開示する。それが「信頼」してもらうことになり、相手の心を開くことにつながる。相手の心を力でこじ開けることなんて出来ないし、そういう方法で相手の「過去」を知ることも出来ない。

そういえば、昔何度も読んだ岩田靖夫『よく生きる』(ちくま新書)にも同じようなことが書かれていた。

本当に、人生は苦しいものです。なんの苦しみも負っていない人などこの世の中にはいません。こんなこと人に知られたら大変だなんて思うことも、一つや二つ誰にでもあるのです。そういうことから逃げていたのでは本物にはならない。そういうものを正面から受け止めて、そういうものを自分で背負って、あからさまにさらけ出して生きることが出来た時に、本当の人に出会う可能性が生まれるのです。
(岩田靖夫『よく生きる』(ちくま新書)P98)

それがイノセント(純潔)な愛となるのだろう。それが過去の傷を癒す唯一の方法かもしれない。

私たちを振り回すアンビバレンスな人たち

人間は相反する気持ちを同時に抱えることがある。そのため、本心とは反対のことを言うことがある。

例えば、
 ・会いたいのに、「しばらく会えない」と言ったり
 ・愛しているのに、「あなたは私のことを愛してないのよ」と言ったり
 ・結婚したいのに、「今は仕事に専念することにした」なんて言ってみたり


相手がこういう言動に出ると、こちらとしてはどう受け止めたらいいのか戸惑うし、どう理解したらいいのか分からず混乱してしまう。愛されているのか、嫌われているのか、会いたいのか、会いたくないのか、方向性がみえにくいので、周囲は振り回されることになる。

精神科医の岡田尊司氏は、このような「方向性がみえないとき、そこには、まず間違いなく両価的なジレンマが潜んでいるとみていい」と断言する。精神分析の世界では、このような相反する気持ちを同時に抱えることを『両価性』(アンビバレンス)という。世の中には『両価性』が強い人と弱い人がいるが、悩んでいる問題や未解決な問題に関わる時、『両価性』が強まった状態になりやすい。例えば、結婚に踏み込むべきか、止めておくべきかで悩んでいる時に、人は『両価的なジレンマ』に陥る。

我々は、このような「あまのじゃく」な人が少なくないことを知っておくべきだ。「あまのじゃく」な言動を真に受けて、愕然としてはならない。ここで、怒りや憎しみや「許せない」という気持ちになり、それを引きずると、人間関係が破綻することだってあり得る。「あまのじゃく」と「嘘」とは違うのだと知っておくだけでも、人間関係で傷付けられることはある程度避けられるはずだ。


【参考文献】
岡田尊司『あなたの中の異常心理』(幻冬舎新書)

人を遠ざける人に共通する問題

人はなぜ、ウソをついたり、暴力を振るったりという、邪悪・異常な行動を取るのか。

例えば、イタズラ、イジメ、DV、虐待を見ても分かるように、そこには(本人が意識しているにしろしないにしろ)一種の「快感」があるのだ。麻薬のようなものであり、嗜好性があり、一度やり出すと止められなくなる。虚言、暴力、支配、戦争も「悪の快感」を味わっているのである。

同じ人を殺すという行為にしても、やむにやまれず身を守るために行った場合と、殺すこと自体が目的化した場合では、受け止め方が全く違う。我々は概して、「自己目的化」した行為というものに生理的な反発を感じるし、理解出来ない「異常性」を感じる。さらには、強い嫌悪感、許し難い怒りを覚える。当然、そういう相手との関わりは避けるし、信頼もしない。

では、そういう行為がやめられない人間は、相手からの信頼失墜という代償を払ってでも、なぜそういう行為を繰り返すのか。そこには快感という「麻薬的な報酬」があるからであるが、次のような共通する問題(背景)が見え隠れするという。

それは、自分が愛されていないという寂しさであり、欠落したものを抱えているという飢餓感である。それを本来は満たし、癒してくれるはずの相互的かかわりが不足しているのである。その結果、自己目的化した快楽の円環に飢餓感を閉じ込めるために、いくら繰り返しても満たされることのない行動に耽り続けるのである。
(岡田尊司『あなたの中の異常心理』P97より)

こうした悪循環に陥ってしまうと、本人は自己目的化した行為を正当化し続けてしまう。そうやって邪悪・異常な行動は繰り返されていく。イジメや虐待が人殺しになるように。心の暴力が相手に永遠の傷を負わせるように。

では、そのような「異常心理」をもった人間が異常性から克服することはできるのか。前出の本によると、克服するためには、両親、配偶者、恋人、友達などの相互的な関係を愛情で満たされたものにすることだ。自分を愛し、大切にしてくれる存在がいるということを実感することそれによって自分も愛されるに値する存在だと思うこと(この点、先日紹介した『平気でうそをつく人たち』の結論と似ている)。

そうしなければ、さらに人を遠ざけ、自分が愛されない存在となり、孤立し、寂しさが増し、自分の弱さが露呈することになる。


【参考文献】
岡田尊司『あなたの中の異常心理』(幻冬舎新書)

あなたが消えた夜に

南国


旅をする時は、殆ど荷物を持っていかない。周りの観光客を見ると、あんなに馬鹿でかいスーツケースに何を入れてるのかが気になる。数日分の下着と、本とkindleとペンとメモがあれば十分だ。観光でスケジュールを埋めることはしない。ビーチかプールサイドかカフェでぼーっと本を読んでいるのが心地良い。

今回の旅で中村文則さんの『あなたが消えた夜に』という小説を持っていった。旅行好き・読書好きの友達Tの薦めで。中村文則さんの本は初めて手に取ったが、この本はハマった。持参した他の本は放ったらかしで、この本を年末年始に二度読んだ。

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「あなた」が消えたら、「わたし」はどうなるんだろうか。

「あなた」が他の異性とSEXしてたら
「あなた」が他の異性と逃げたら
「あなた」がどこにいったか分からなくなったら

「わたし」はどのような感情が生まれるんだろうか。

特にそれが、愛をはぐぐんだ相手だったとしたら。


悔しい、寂しい、辛いといった悲しみの感情ばかりか、怒り、憎しみ、許せないといった憎悪の感情が生まれる場合もある。「わたし」は絶望の淵を彷徨うかもしれない。そうなれば、消えた「あなた」をひたすら追いかけるかもしれない。復讐するかもしれない。不幸のどん底に突き落とすかもしれない。殺すかもしれない。それが、まるで愛情表現の手段であるかのように。実際そうして自分の人生を破滅させてしまう人もいる。

そういう人が本書に登場する。

本書に登場する複雑な人間関係にしばらく ”意味が分からない” と思った。しかし、読み進めていくにしたがい、その糸がほどかれていき、過去の記憶、心の傷、人間の暗部に焦点が当たり、人間の狂気性、罪悪感をえぐり出す。人はなぜ愛に狂い、闇に堕ちていくのか。人はなぜ自ら歪んだ状況をつくり、破裂していくのか。

それも無意識に。

自分が望んでもない方向に…。

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読みながら自分自身の過去の記憶とオーバーラップしていく。気にかけてくれる人が現れるとわたしの元から消えていった「あなた」。堕ちていく「わたし」。すべてが空虚になり、自分の存在意義を失いかける。人間はそんな経験を何度も経て内面が作られていく。良くも悪くも。

最近「孤独」「寂しさ」をテーマにした本が多いし、そういうタイトルの本が売れているように思う。人間は何かに依存しなければ生きていけない生き物だから。それは神かもしれない、宗教かもしれないし、異性かもしれない。「性依存」というコトバがあることを本書で初めて知ったが、性に依存しなければ生きていけない人もいる。その依りかかれるものを失った時、「もう終わった生活をしているような感じ」(P221参照)になる。だから、それが自分が望んでいる方向ではなくても、何かに依存せざるを得ないのだ。それが周りから ”狂気” と見えても。だから、世の中には自分が理解に努めても理解できない人がいる。

果たして、今のわたしは何に依りかかっているんだろうか。それは自分が望んでいる人生なのだろうか。さざなみの音を聞きながらしばらく考えた。



あなたが消えた夜に (毎日文庫)
中村 文則
毎日新聞出版
2018-11-07



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