平松一夫

7年前の今日(2016/7/3)、ホテル阪急インターナショナルにて、恩師 平松一夫先生の退職記念パーティーと最終講義が行われた。平松先生が何度もおっしゃっていた「教育とは、知識を与えることではなく、インスピレーションを与えることだ」というコトバを忘れることはない。真の教育を通して「天才」を生み出していく真の教育者になりたいと思う。


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さて、今日は、母校 関西学院大学へ。
春学期(前期)全14回の授業のうち、今日で13講目。
最終回の14講目に期末試験(授業内試験)を実施するので、実質的に今日が最終講義。最後も知識を与えることなく、活きたインスピレーションを与えたいと想いながら、上ケ原キャンパスに向かった。

春学期の最後に、これから社会に出る学生達に私から3つのメッセージを伝えた。
(これは、私が、若い会計士にも常に言い続けていることでもある。)

まず、1つ目は、「行き急ぐな」
人生はいつ終わるか分からないため、いまを大切に生きるべきだし、何でも直ぐにやるべきだと思う。しかし、多くの人は100歳近くまで生きるだろうし、社会人生活を40年、50年と送るだろう。そうした中で、短期的利益を追い求めるようなことはすべきではない。「1万時間の法則」のとおり、プロフェッショナル、エキスパート、天才といわれる人達は、1万時間に及ぶたゆまぬ努力をしてきた人だ。1万時間といえば、1日3時間の努力を休まずしたとしても10年かかる。何事もコツコツとやることが、大きな目標を達成するための唯一で最短の方法であるということを忘れないで欲しい。継続したものしか残らない継続できないものは残らない

2つ目は、「隣の芝を見るな」
隣の芝は青く見える。特にSNS等を見ると、そこに映る人は華やかに見えると思う。しかし、華やかに見える人の多くは、その裏でどれだけの努力をしてきたか、どれだけの苦難を乗り越えてきたか、どれだけのコンプレックスを抱えているか。表層的な華やかだけで他人を判断すべきではない。他人と比較して生きている人は絶対に幸せになれない。他人と比較してキャリアを選ばないこと。キャリアとは、隣の芝に飛び込むことではなく、自分の芝に深く根を張っていくことなのだ

ある大学の生物学者の実験の話。広さ30cm四方、深さ56cmの砂が入った小さな木の箱に、1本のライ麦の苗を植え、4ヶ月あまり水をやって育てる。するとライ麦は貧弱な姿であるが、その木の箱で育っていく。木の箱を壊して、砂の中にどれほどの麦の根が伸び広がっているかを計測すると、なんと11.2kmに達していたという(これは、五木寛之さんの『人生の目的』に書かれていた話である)。私もかつて、西宮の山の上に住んで、数年間、庭いじりをしていたので、「根が深い」というのを見てきた。小さな木がどんな強風にさらされても折れないのは、見えないところでとんでもなく根を張っているからなのだ

大した根も張らず、隣の芝にぴょんぴょんとバッタのように飛んでいく生活をしていたら、ちょっと強風が吹いただけで吹き飛ばされるだろう。社会人になったら、隣の芝を見ず、根を深く伸ばしていくような生き方をして欲しい

3つ目は、「Connecting The Dots(点と点をつなぐ)」
君達が生まれた頃の話なので、知らない人が多いかもしれないが、2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った伝説のスピーチがある。このスピーチの冒頭で述べられたのが”Connecting The Dots”。点と点をつなぐ。スティーブ・ジョブズは、大学でカリグラフィ(書体)の勉強をすることになった。この勉強が将来の仕事に役立つとは思えなかった。しかし、彼が最初のマッキントッシュ(Mac)を設計したとき、この学びが役に立ち、美しいフォントを持った初めてのPCが誕生したのだ。その後、iPhoneを世に出すことになるが、これもおそらく学生時代に学んだ美的センスが活かされたのだろう。

皆さんは、勉強をしながら「こんなことが何の役に立つんだ?」と思ったことがあると思う。私も会計士試験の勉強しながら、ずっと思っていた。しかし、役に立たないことは殆どない。いずれ、点と点はつながり、線となる

人間関係も同じ。いま、私と皆さんは、点と点の関係でしかない。この授業をもって先生と生徒という関係は終わりになるかもしれない。しかし、関学の先輩と後輩という関係は永続するんだよ。この点と点の関係が、何年後か分からないが、線となって繋がり、蜘蛛の巣のように人脈が広がっていく可能性もある。私は沖縄に完全移住してまだ4ヶ月だが、点と点の人脈が蜘蛛の巣のように広がっていき、それが新しいビジネスにも繋がっている。御縁とは不思議なもんだ。縁ある人との関係は大事にした方がいい。

終末期における緩和医療に携わる医師の大津秀一さんという方が『死ぬときに後悔すること25』という本を書いてベストセラーになったが、この本の25番目に書かれていること(つまり、最も後悔することだと思う)は、愛する人に「ありがとう」と伝えなかったことなのだ。皆さんは、愛する人や、大切な人や、お父さん、お母さんに「ありがとう」と言ってるか? 「おはよう」「おやすみ」「ごめんなさい」と言ってるか? 「自分ひとりでも生きていける」なんて言ってる人間関係を粗末にするヤツを時々見かけるが、そんなうぬぼれたことを言ってるヤツとは縁を切れ。ひとりで生きていけるもんなら生きてみろ。どんな人間だって、誰かに育てられて大人になったことを忘れないこと。


「生き急ぐな」「隣の芝を見るな」「御縁を大切にしろ」、これが私からの最後のメッセージ。

そして、”Stay hungry, Stay foolish"。ハングリーであれ、愚か者であれ。


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授業後、月1で食事をする先輩(関学教授)・同期(関学非常勤講師)と共に、阪急六甲駅前のレストラン『バッカナール』へ。

先月もご一緒させて頂いた副学長がが招待してくれた。オーナーも関学同窓生だった。今日は満月なんだろうか。レストランの窓に六甲山の夜景と満月が映り、幻想的なパノラマが窓一面に広がっていた。そんな絶景の中、絶品の料理とワインが次々とサーブされてくる。

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ペアリングのワインが「asatsuyu」って、おかしいやんか。これ以外にも相当レアで美味しいワインを頂いた。このレストランも値決めがおかしいと思うが、身近にこれだけのワインが揃っているお店があろうとは。すごい店だった。ここもまた来る。

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出てくる器が沖縄のやちむんだったり、琉球グラスだったりするので、オーナーさんに聞いてみたら、元同僚の何人かが沖縄で店を出してる関係で、沖縄で買い付けたらしい。その店を教えてもらったら、そのうちの1つが、先日行った「和洋葡 yoshi」というレストランだった。狭っ。点と点が繋がっていく。縁尋機妙 多逢聖因。


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ちなみに、今日の最終講義が終わったあと、私のところに「ありがとうございました」と言いに来てくれた学生が何人かいた。授業をノートを取りながら熱心に聴いてくれていた学生達だった。こちらこそ「ありがとう」。感謝。この御縁は大切にしていきたい。