傲慢と善良


文庫化を待っていた!

帯のとおり、突き刺さった。

タイトルは、オースティンの名作『高慢と偏見』から取ったっぽい。

『高慢と偏見』という小説を知っていますか
(略)
当時は恋愛するのにも身分が大きく関係していました。身分の高い男性がプライドを捨てられなかったり、けれど、女性の側にも相手への偏見があったり。それぞれの中にある高慢と偏見のせいで、恋愛や結婚がなかなかうまくいかない。
(略)
対して、現代の結婚がうまくいかない理由は、『傲慢さと善良さ』にあるような気がするんです
(略)
現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、”自分がない” ということになってしまう。(P134〜)

婚約者の真実(マミ)が失踪する。西澤架(かける)は彼女を探すが手掛かりが見当たらない。そこで、真実の両親、友人、過去の婚活の相手、結婚相談所にまで手掛かりを求めに行く。そして、真実の大きな「嘘」に気付く。

色んな登場人物の無自覚の行動・言動の描写を通して、人は誰しも『傲慢さと善良さ』があることを突き付けられる。自分自身にも当てはまるので、ぐさっと痛む。

人を好きになるって単純なことなのに、どうしてこんなにも難しいのだろうねぇ。愛と感謝を忘れ、善良なフリして、傲慢なんだよねぇ。素直になれずに複雑に生きるんだよねぇ。


傲慢と善良 (朝日文庫)
辻村 深月
朝日新聞出版
2022-09-07