帯の一文に惹かれ購入。
先日紹介した山尾三省著『アニミズムという希望』(新泉社)という本を買いに行った時に、同じ棚に平積みされていたのがこの本。
この本はめっちゃ良かった。
人生観が変わった何冊かの本の一冊になった。
第1章から打ちのめされた。
本書は、フランスの社会学者・人類学者による本であり、初の邦訳書らしい。最初から最後まで「歩き旅」「歩くこと」の効用が書かれているエッセイだが、(上述の山尾三省さんが言うところの)「文明の時間」から逃避し、世の中のしがらみや競争から自由になり、慣れ親しんだ機器の便利さから解放され、何の役に立たない時間を過ごすことこそ、生きることの本当の豊かさをもたらしてくれるということを教えてくれる。
本書には、ソロー『森の生活』、レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』、ルソー『エミール』など、過去に私の人生観を変えた本からも多くの名文が引用されている。著者も多くの本から影響を受け、人生が変わったのだろう。
私が非常に気に入った引用文はこちら。
「人が砂漠に行くのは、自分のアイデンティティを見つけるためではなく、それを失うため、個性を失い、無名の人間になるためだ」
(P161、エジプト出身の仏詩人、エドモン・ジャベス)
旅が好きな人にもオススメだが、現状の何かから解放され自由になりたいと思う方に強くオススメしたい一冊。