先日札幌で買い付けた物件の所有権移転登記が完了した。長年の友人でもある司法書士の友達が、登記済証(権利証)を持ってきてくれた。せっかくなので、一緒にランチをした。彼女と食事をする時は、グルメの彼女に店を選んでもらう。いや、彼女以外の人と食事をする時も、彼女にお店を選んでもらうことが多い。そんじょそこらの食レポよりも、「この人に聞いた方が確実」といえる美食家がいるのは助かる。

彼女は、私と同じく、基本的に1日1食の生活をしているらしいが、私と違う点は、彼女はランチしか食べない。ランチでフルコースを頼んでも、ディナーの半額で済む。もとから酒を飲まないから、毎日外食しても、エンゲル係数は低い。浮いたカネは、書籍代、旅行代に注ぎ込んでいる。

夕方には自宅に戻り、夕方以降はTVもスマホも見ないことに決めているらしい。確かに、夕方以降にLINEを送って既読になったことはない。夕方から寝るまでの間(5〜6時間?)は、「読書、読書、読書」の読書三昧だという。午後も、移動中も、読書をしているので、1日の読書時間は相当なものになるはず。数百ページもあるような分厚い本も、ペロンと読んでしまうのは、この圧倒的な読書時間にあるのだろう。



弱すぎる阪神タイガースの試合を観る時間で、1日1冊くらい本を読むことはできるだろうなぁ〜と思いながらも、夕方になると「サンテレビ」を付けてしまうのだが、さすがに今年の野球観戦ばかりは時間の無駄に思えてならない。今日の広島戦は途中でTVを消した。指揮官に覇気が無く、何もかもが噛み合わず、打ちのめされていく姿が痛々しい。去年は最終戦間際まで優勝をつかみかけていたチームだから実力はあるはずなのに、実力以外の何かが明らかに欠けている。

しばらく読書の時間を意識的に増やしていこうと思う。


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朝が来る (文春文庫)
辻村 深月
文藝春秋
2018-09-04



執筆が終わって、最初にしたかったことは、「小説を読むこと」だった。
何冊かの小説がデスクに積み上がっていたが、最初に手に取ったのは辻村深月さんの『朝が来る』だった。良い作品だった。

辻村深月さんの本は、昨年、本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』を読んだことがある。これも面白い作品だったが、個人的には『朝が来る』の方が好きだ。映画のように切り替わる視点、展開、描写に、読みながらの「すごい作家だなぁ」と唖然とした。

本作には、何組かの「家族」が登場する。血が繋がっている家族、血が繋がっていない家族、家族も十組十色である。本作は、特別養子縁組という難しいテーマを取り上げ、真の家族、真の愛について教えてくれる。

親といえども、子より長く生きているだけであり、大人であるとは限らない。未熟な親は多い。そのような親ほど、子の全部を理解できると信じ、子の些細な言動が気になって仕方ない。「何を考えてるの!?」「なんなことしたらダメでしょ!?」「どれだけ心配したと思ってるの!?」「どんな気持ちでいたと思ってるの!?」といった言葉は、子のためにいってる訳ではなく、自分の望む通りに子を操るために発しているに過ぎない。親は子を見ているようで、子の後ろにいる別の子を見ているのだ。それは失敗せず、品行方正な穢れのない、自分の望む通りに育った子。他人と比べられて育った子は、親が、自分の中味を見ていないことを当然に理解する。

本来、子供にとって、親しか頼る人がいない。しかし、その親の傲慢な考えにより、子供はプライバシーを失い、自尊心を傷付けられ、打ちひしがれるような、気の遠くなるような青春時代を過ごすことになる人もいる。そんな長いトンネルの先に、朝は来るのか。

純粋無垢に育った子が理性を持ち始めると、親から離れていくというのは自然の摂理なのだろうが、傲慢な親によって傷付けられていくというのもそうなのだろうか。家族、親子という不思議な関係について、あれこれと考えさせられる一冊だった。

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そして、阪神タイガースに朝は来るのか。

余計なことまで考えてしまう。。