heaven_hell


先日、平松ゼミの同期で、大手監査法人でパートナーをしているK君から、連絡が来た。「クライアントの経理の方が、決算早期化について武田先生に話を聞きたいとおっしゃっているが、お引き合わせしてもよいか?」という内容だった。拒む理由がない。是非是非。即OK!

今日、その会社を訪れた。

この2年、打ち合わせはほぼ全てオンラインだったので、企業に訪問するということがなかった。スーツを着て、ネクタイを締めて、革靴を履いて、上場企業を訪問するのも2年ぶりじゃないだろうか。

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売上高が兆を超える巨大企業。門衛さんに許可を取って会社に入るという行為に懐かしさを感じた。

お問い合わせを頂いた方は若い課長さんだった。先月登壇したラクス社主催するイベント『経理プラスサミット2022』を聴講してくれ、「これだ!」と思ってくれたらしい(そういうのは素直に嬉しい)。

『経理プラスサミット2022』は、経理部を進化させ「真の経理部」を作るにはどうしたらいいのかということを述べた講演だったのだが、講演内容がこの会社の経理部の問題点・課題とドンピシャだったらしい。

しかし、上層部は旧態依然とした思考の人が多いし、社長も技術部門上がりの人でバックオフィスの重要性を認識していない。そのような組織なので、部下も与えられた業務をこなすだけで、社長や経営陣に対して価値ある情報を提供しようという発想はない。中途で入った課長は、入社した時から「これじゃアカンやろ…」と思っていたらしい。より詳しい話を聴いて、私も「それじゃアカンやろ…」と思った。会社の規模と経理の質は比例しない。

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『経理プラスサミット2022』の講演において、企業に変革をもたらすDX(Digital Transformation)が必要だと叫ばれているが、DXよりもCX(Corporate Transformation)、CXよりもBX(Back-office Transformation)が必要である、という話もした(この話は、今書いている原稿でも述べているので、発売をお待ちください)。

上場企業の社長であっても、経理部を含むバックオフィスへの変革(Transformation)を渋る人が多い。特に営業部門・技術部門あがりの社長は、バックオフィスの重要性をまったく理解していないことがある。バックオフィスの変革には1円たりとも投資しないというスタンスの社長も少なくない。変革への投資どころか、経理業務・決算業務に必要不可欠なシステム投資、人材採用、教育投資、備品購入なども徹底して渋る社長すらいる。経理部への必要な投資を渋り続けたことにより、「昭和の経理部」が社内に取り残され、経理部から正しい情報、価値がある情報をタイムリーに発信できないばかりか、経理部が事業運営の足を引っ張っているケースもある。

「昭和の経理部」に優秀な人材が残ることはない。優秀な人材が抜け、また人材を補充し、また優秀な人材が抜け…と、人が定着しない状況に陥り、経理部が更に劣化するのだが、根本的な原因が「昭和の経理部」にあることを上層部は気付かない。

私は、独立して以来、「経理を変えれば会社は変わる」を経営理念として掲げているが、経理を変えるのは誰かといえば、社長なのだ。社長のマインドセットをしなければ、経理部が進化することはない(よほど優秀なスーパー経理部長がいれば別だけど)。

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ということで、今日は、課長さんから色々と現状をお聞かせ頂いたが、上層部の方も含めたバックオフィス全体のマインドセットをやっていきましょう、というご提案をさせて頂いた。課長さんのチカラだけでどうにもならないようなら、私をうまく使ってください。

日本中の上場企業の経理部を「真の経理部」に進化させることが、私のミッションですから。