金曜日は大学授業の日。

先週も書いたが、私の授業は、毎回課題を出し、レポートの提出ではなく、次回の講義でプレゼンしてもらうようにしている。自分の頭で考え、編集し、相手に伝わるように発表するという練習をして欲しいので。

前回の授業で、以下のような課題を出した。
『会計監査はなぜ必要なのか。また、時代の変化と共に、会計監査はどのように進化すべきか。自身の考えを簡潔にまとめよ。』

2つの問いを投げかけたのだが、私が彼らから聴きたかったのは『時代の変化と共に、会計監査はどのように進化すべきか』という2つ目の問い。模範解答がない問いに、彼らがどのように思考し、どのようにアウトプットをするのかを知りたかった。

今日の授業のはじめに、すべての生徒にプレゼンしてもらったが、今回も非常にすばらしい内容だった。

企業のディスクロージャーが「財務情報」から「非財務情報」へと重きが移ってきている中で、会計監査も非財務情報の保障が必要になるのではないか。「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」へと移行する中で、会計監査は投資家保護だけでなく地域社会も含めたあらゆるステークホルダーを保護していくべきではないか。AIやDXの流れの中で会計監査もテクノロジーに依拠するところが増えていくと思われるため、AIができる監査手続はAIに全面的に委ね、人間にしかできない監査手続にフォーカスして監査の質を高めるべきではないか。

などなど。

どれも満点の解答。そして、現状での会計監査の課題でもある。

受講者の中から公認会計士を志している人は1人いるかいないかという感じなので、クソ真面目に監査基準を説明しても面白くないと思う。社会・経済全体の潮流を知ってもらって、そこから色々なことを考えてもらって、なにかのインスピレーションをつかんでくれたらと思いながら授業を組み立てている。

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今日の授業は、シラバス上は証券市場について説明する予定であったが、これもクソ真面目に株式制度の歴史を語っても面白くないので、渋沢栄一を取り上げ、彼の生き様を語り、そこから資本市場勃興期の出来事、ミルトン・フリードマンの話、リーマン・ショック、ライブドア・ショック、資本主義終焉論(脱成長論)、そこから「論語と算盤」が注目をされるようになった経緯に至るまで、知を横断した。ディスクロージャーや監査の進化も、証券市場の長い歴史を俯瞰しなければ語れない。

おそらく関心をもって聴いてくれたと思う。
どんどんと関心の幅を広げていって欲しいと思う。

たった90分の授業だが、ド真剣。



現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)
渋沢栄一
筑摩書房
2014-01-10