多くの人が自分を偽りながら生きていると思う。自分に嘘を付き、自分の感情をねじ伏せ、何かを隠し、何かを抑圧し、何かを意識の下に閉じ込めている。

しかし、自分でない自分を生きていることに気付かない。

常にいろんなものを「抑圧」して生きているため、ストレス、イライラ、悩み、無気力といった神経症的な症状が出たり、身近な人に怒ったり、攻撃したりする。

それでも人は「本当はこうしたい」という思いを否定し、「したくない」と思い込み、それを正当化し、自己欺瞞に生きる。そうすることが、心を楽にするからであり、「安心」だから。

-----

社会心理学者 加藤諦三さんの本はこれまで随分と読んできたが、加藤諦三さんがパーソナリティを務めるラジオ番組『テレフォン人生相談』は聴いたことがなかった。もう55年も放送している超長寿番組らしい(YouTubeでも視聴可能)。この55周年記念の書籍が出版されたので、本だけでも読んでみようかと買ってみた。

『人生相談』が55年も続くのは、人間の悩みの源泉が昔から本質的に変わることがないからだろう。加藤諦三さんは、半世紀以上も『テレフォン人生相談』をやってきた中で、死にもの狂いで不幸にしがみつく人が非常に多いという(P115)。

なぜ人は不幸にしがみつくのか。
それは、以下の3点に要約できる(と読んで感じた)。

「人が最も恐れるのは不幸ではなく、不安」(P129)
「人が最も求めるのは幸せではなく、安心」(同上)
「安心への願望は全てに優先する」(P130)

多くの人は、先の見えない不安を背負いながら自己実現に向かおうとする「成長欲求」より、不安や負担を避け、安全、安心で生きようという「退行欲求」が上回る(P115)。これが、死にもの狂いで不幸にしがみつく人が多い理由なのだ。口では「幸せになりたい」と言いながら、現状維持の方が安全なので、無意識レベルで不幸になる方を選んでいる。

でも、そういう選択をしていると、意識下で怒りやストレスが起こるのだ。その矛先を「弱い者」に向けているのが、家庭内暴力やハラスメントなどの他者への暴力である。他者への暴力ではなく、自分へ攻撃する人もいる。暴飲暴食・うつ病などがそれに当たる(これらを心理学用語で「攻撃性の置き換え」というらしい。第2章参照。)。こうやって新たな対人関係の悩みが増殖していく。

悩みの根本的な原因は、自分自身の思考にある。だから、加藤諦三さんも、自分が変わる以外に解決策はない、といっている(P79)。「悩める全ての人は、幸せになることを自ら拒否してしまっている」だけなのだから(P9)。そのため、悩みを解決するには、「自分の本当の姿を出せ」とアドバイスしている(P185)。

長年自分を偽ってきた人が「本当の姿」を出すことは難しいと思うが、これが本当の「自分探し」なのだ(P31)。そして、この「自分探し」は、「死ぬほど苦しい仕事」(P29)でもある。

-----

本書の最後に、ドキっとすることが書かれている。

「人の感情は変装してあらわれる」「本質は仮面をかぶって表れる」と(P194)。

「ひどい目にあった」と被害者意識を強調している人でも、本当は誰かに敵意を持っていたりするしかも、その怒っている人から愛を求めていたりする。自分を偽っているから、被害者意識を強調するしかなくなる。仮面の下の自分は何を求めているのか。

「自分探し」は旅先にあるのではなく、自分の無意識の部分隠されているのだろう。