「あなたという存在の何が、周りの人達を幸せにしているのか?」という問いに即答できるだろうか?

これは、リッツ・カールトンのリーダーシップ研修において、受講者への宿題として出題される問いらしい。

最近経営学の世界では「パーパス(Purpuse、存在意義)」というキーワードがブームになっている。資本主義が終焉を迎えたといわれている今、社会課題を解決するという企業の「パーパス」に共感した「人」を中心とした経営モデルへの変革が必要であり、それがグローバルの新潮流となっている(らしい)。

同じように、アフターコロナ、ニューノーマルといわれる今、個人の「パーパス(存在意義)」は何なのか? それは周りの人を幸せにしているのか? といったことも自分に問うてみてもいいんじゃないだろうか。

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先日、元リッツ・カールトン日本支社長の高野登さんの講演を聴く機会があった。これまで高野登さんの講演は何度か聴いたことがあるが、どれも強烈な印象が残っている。特に、独立した直後(もう15年くらい前)に聴いた講演で、リッツ・カールトンが大切にしているのは1人1人のお客様との「情緒的なつながり」だという話を聴いたのだが、この一言は心に突き刺さった。これが「商売の原点」だと思ったし、私のその後の商売においても大切にしていることのひとつでもある。

先日の講演では、高野登さんは「多くのサービスで抜け落ちてものがひとつある」とおっしゃっていた。それは何か。「後味」だという。例えば、お気に入りのレストランを予約すると、その当日までワクワクすると思う。これが「先味」である。大切な人とレストランで食事をする。美味しい料理を頂き、幸福感が上がる。これが「中味」である。レストランを後にしても、その時間・空間・サービス・幸福感の余韻が残る。これが「後味」である。高野登さんは、多くのサービス業が、この「後味」の提供を忘れているという。顧客を一回切りの「フロー」のもので終わらせるのか、顧客にファンにして、リピートしてもらい、「ストック」にするかは、この「後味」の良さを提供できるかどうかだという。例えば、顧客リストを作り、その人達に定期的に連絡を取っているのか。その人達の何人がリピートし、何人が知り合いを連れてきてくれるのか。そういったデータを取っているのか。

ビジネスの環境も、顧客の嗜好も常に変わり続ける中で、常に自分自身が変わり続け、イノベーションを起こし、新しい需要を創り出すことが、ビジネスで成功する「条件」だともおっしゃっていた。では、どのように新しい需要を創り出すのか? これに対する用意された答えはない。考えるしかない。本当の顧客は誰なのか? パーパスは何なのか?

この講演の最後に紹介されたのが、冒頭の「あなたという存在の何が、周りの人達を幸せにしているのか?」という問いである。

これも用意された答えはない。「永遠に答えはない」ともおっしゃっていた。問い続けることが大切だということだろう。思考の質が高まると、使う言葉の質が変わり、行動が変わり、世界を変えるのだと思う。