人を知り、心を動かす-リーダーの仕事を最高に面白くする方法-
ダイキン工業会長 井上礼之
プレジデント社
2021-03-29



空調業界世界No.1企業、ダイキン工業 井上礼之会長の新刊書。

ダイキンは、日本の上場企業の時価総額ランキング12位(8.2兆円、現時点)。大阪本社の会社では、キーエンスに次いで2位

井上礼之会長がダイキンの社長に就任した1994年と現在(2021年)を比較すると、
 ・株価は約30倍
 ・売上高は約6.6倍
 ・営業利益は約83倍
 ・海外生産拠点は約10倍
となっている。

現時点で従業員数は約83,000人、海外従業員比率は8割以上になった。「かつて地味で収益の上がらない『ボロキン』と揶揄されたダイキン工業」(P3)が、世界No.1のグローバルカンパニーになったのだ。

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井上礼之会長は、(珍しいと思うのだが)総務・人事畑から社長になった方。それもあってか、本書を読んで強く感じるのは、「人を通じて事をなす」という経営をされてきたということ。メンバーひとりひとりに関心を持ち、メンバーひとりひとりを成長させ、そのメンバーひとりひとりの成長の総和が組織の成長の基盤となり、上述のような組織の劇的な成長へと結びつけていった、ということがよく分かる内容。もちろん技術力もNo.1なのだと思うが、個々の能力を最大限に発揮させ、その力を束ねて組織の力にし、その力で会社を世界No.1に成長させていったのだろう(P148〜参照)。

リーダーは、戦略は二流でもいいが、実行力は一流でなければならない(P158〜)。デジタルの時代だからこそ、face to faceの対話を重視するリーダーの姿勢は共感した(P78)。先日紹介したソニーの平井一夫元社長兼CEOと同じように、井上会長も世界中の拠点を周り、直接現地のメンバーとコミュニケーションを取るようにしてきたという(P81)。中には優秀じゃないメンバーもいるだろうが、「すばらしい料理人は、理想の食材がそろわなくても、目の前に用意された食材で最高の一品を作る」(P151)という一言はノートにひかえておいた。ホンマその通り。

メンバーひとりひとりを大切にすることは、ダイバーシティ(多様性)を尊重ということでもあり、異質な人材をいかに束ねて組織にするかという点も、これからのリーダーに求められる(P54〜)。組織やリーダーの価値観を押し付けたり、帰属意識を求めたりする時代ではなくなっており、異質で多様な人材の能力や発想を企業競争力につなげる時代になってきた。リーダーが夢を語り、理念を語り、メンバーを束ねる力がこれまで以上に必要となると思う(P192〜)。「同じ色の絵の具を混ぜても1つの色しか出ませんが、いろんな色の絵の具を混ぜると、ときにはとんでもない素晴らしい色が出せたりします」(P195)というコトバも気に入った。これもノートにひかえておいた。

1〜2時間もあればさらーっと読めてしまう本で、私も最初は1時間位でさらーっと読んだのだが、その後何度か読み返したら赤線だらけになってしまった。時価総額ランキング12位の会社の現会長の書籍が役に立たないはずがない。得られるものは多かった。