昨日、久しぶりに真面目に経営の話を書いたら、経営者の読者の方から御礼の連絡を頂いた。タマには真面目な投稿もしてみるもんだ…。


昨日、社長は、従業員とコミュニケーション(対話)を通して、従業員をインボルブしていくことが大切だと書いた。では、何をインボルブするのか? そっちの方が大切かもしれない。

例えば、給与水準をちょっと上げたり、ストック・オプションを付与したり、福利厚生を充実させたり…といったことをやれば、優秀な人材が集まるかもしれないし、従業員をインボルブすることができるかもしれない。しかし、そのような金銭的インセンティブで人を集めても、そういう人は自社よりも良い条件の会社があれば直ぐに消えていくのではないだろうか。物で釣られて来た人は、物に釣られて消えていくと思う。

私は、働くにあたって最も大切なことは「その会社で働くことによって喜びが得られるかどうか」だと思っている。これに優るモチベーションがあるだろうか。そして、これは「会社のビジョン・ミッションに共感できるかどうか」と言い換えることもできるのではないだろうか。

私が就職活動・転職活動を行った際(約20年前の話だが)、就職先・転職先の決め手になったのは、その会社のビジョン・ミッションだった。特に監査法人から上場企業へ転職する際は、その上場企業トップの語る壮大な夢に共感し、給与や福利厚生の話を聞く前に、その社長の下で働くことを決めた。入社すると、社内やトイレの壁にその会社のビジョンやミッションがデカデカと書かれており、また、それが書かれた名刺大サイズの冊子を全社員が持ち歩いていた。この会社のビジョンやミッションを知らない社員は、この会社には一人もいなかった。それがこの会社の求心力となっていたことは間違いない。この会社に転職して、監査法人時代より給与は下がったが、この会社で働いたことは今でも誇りに思っているし、楽しかった。本当に良い会社だった。

以前、ソフトバンクグループで働く方と食事をしたことがあるが、その方が、「ウチの会社で、社長(孫正義氏)のいうことを疑っている人は一人もいないと思いますよ。みんな、社長の夢を叶えるために働いていますし、夢は叶うと信じていますよ」といってくれたことが、とても印象に残っている。卓越した業績を残し、永続して成長する企業は、経営トップの壮大な夢と人々を引き寄せるビジョンやミッションが強固な土台となっていると思う。

昨日紹介したソニーの平井一夫元社長兼CEOが、世界中を回ってタウンホールミーティングを実施して従業員に語りかけたのは、同社の「KANDO」(感動)というビジョン(経営方針)だった。「KANDO」と言われても、よく分からない。でも、そこには平井氏の想いが詰まっているし、ソニーの向かうべき方向性をひと言で表したコトバでもある。このビジョンを従業員に浸透させるために、平井氏は「世界を回る旅に出た」(著書P166)と言っている。このビジョンに人はインボルブされ、インボルブされたチームの一体感が「仕事から得られる喜び」になるんじゃないだろうか。

社長は、夢を語り、ビジョンを語る人でもなければならないと思う。


-----

ネットでバズっていた以下の記事、これこそが「仕事から得られる喜び」だと思う。ディズニーランドのキャストの笑顔の背景には、「私はディズニーランドが、幸福を感じてもらえる場所、大人も子供も、ともに生命の驚異や冒険を体験し、楽しい思い出を作ってもらえるような場所であってほしいと願っています」というウォルト・ディズニーのビジョンを全キャストが理解しているからではないだろうか。


すてきな心
([出処]朝日新聞)