カジキマグロ漁_勝丸

朝7時、与那国島の西の端にある久部良港へ。

我が人生において、カジキマグロ漁を経験する日が来ようとは思いもよらなかった。そもそも素人がカジキマグロ漁船に乗ることが出来るということも知らなかったし、仮に知っていたとしても旅人Tさんから誘われなければ申し込むこともなかっただろう。

Tさんが「勝丸」という船をチャーターしてくれていた。


カジキマグロ漁_勝丸

我々が到着するや、漁師さんは船を西(台湾の方向)に走らせる。
上の写真は、海からみた与那国島。
地図で見るとポツンと小さな島にしか見えないが、海から見ると大きな島だ。

与那国島から西に1時間程走ると、今度は台湾が大きく見えてくる。これはちょっと感動した。先日も書いたが、沢木耕太郎『視えない共和国』によると、明治時代までは与那国島と台湾の間の交流は盛んだったのだ。しかし、「国境」が引かれることにより、与那国島は「日本の果ての島」という位置づけになってしまう。1本の線が、豊かだった島を「果ての島」にしてしまったのだ。

話は反れるが、与那国島に「国境」という名の飲み屋がある。「こっきょう」と読んでいたのだが、正しくは「はて」と読むらしい。「はて」というと、なんとなく自虐的だなぁと思ったのだが、こちらの人はどのようなニュアンスでこのコトバを使っているのだろうか。


カジキマグロ漁_勝丸

朝8時、与那国島から西(台湾側)へ数十キロ、水深1000mもあるという沖合まで出て、カジキマグロの餌となる魚を釣る。あっという間に数匹の魚が捕れた。これを漁師さんが竿の先に結びつけてくれる(上の写真)。

いよいよカジキマグロ漁開始。

漁船は、沖合を時速何十kmかの速度で大きく旋回しながら走り続ける。30分、1時間と待つが、獲物が引っ掛かる気配はない。そう簡単にカジキが釣れるとは思っていないので、船上で風を浴びながら竿から伸びる糸を見続ける。

しばらくするとお腹が空いてきた。時計を見ると11時だった。3時間経過。普段は1日1食だが、船上では空腹過ぎるのも気分が悪くなりそうなので、おにぎりを1つ食べる。

午後になると猛烈な日差しが照り付ける。漁船最後尾に取り付けられている「ファイティングシート」に座る人は、いつカジキが引っ掛かるかを見ておかなければならないが、強い日差しが体力を奪っていく。そこで、我々4人は、誰が言い出した訳でもなく、15分毎に「ファイティングシート」に座る担当を交代することにした。すると45分は日陰で休んでられるし、昼寝もできる。

そうやって、仮眠を取りながら、12時、13時・・・と竿先にアタリが来るのを待つ。

船のチャーターは8時間(15時まで)なので、14時を過ぎた辺りで諦めモードになってきた。死闘7時間。100kg超えのカジキマグロを釣って、インスタ映えするような写真を撮りたかったが、叶わなかった…。




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船は港に向けて舵を取りはじめ、与那国島に近づいたその時、なんと、竿先にアタリが!!

そんなドラマみたいな話があるか!?

漁師さんが「糸を巻け!」と叫ぶ。その時の模様が下の写真。まだ余裕がある。


カジキマグロ漁1



大阪出身の漁師さんが「死闘は30分続くで」という。「そんなに続くんですか?」「カジキが暴れだすと手に負えへんからなぁ」

漁師さんの言う通りだった。数十mで大きなカジキが暴れているのが見える。遂に100kg超えのカジキマグロを捕らえたか!? 今日も運を引き寄せた!

Tさんが「ファイティングシート」に座り、糸を巻こうとするが、糸を巻く以前に、竿を支えるだけで精一杯。すごい勢いで竿を持っていかれる。次第にTさんも余裕がなくなり、力の限界に達し、叫び続ける。カジキが波にのった一瞬のすきに糸を巻き、また叫び、を繰り返す死闘を20分ほど続け、ようやくカジキが目の前に表れてきた。


カジキマグロ漁_勝丸




遂に捕まえた。でかい!

カジキマグロ漁_勝丸



引き揚げるのは漁師さんがやってくれた。めちゃくちゃ重そう。

カジキマグロ漁_勝丸



漁師さんが「食べられたー!」と叫ぶ。

なんと・・・胴体がサメに食べられていた。

カジキマグロ漁_勝丸


ガーーーン。

「こんな経験は初めてや…」と漁師さん。

頭だけでも推定20kg。もし胴体があれば、推定70〜80kgの大物だった。残念無念。


カジキマグロ漁_勝丸



残念ではあったが、我々は落ち込むこともなかった。
8時間、めちゃくちゃ楽しい経験ができた。
普段できないような経験をすることができて、大満足だった。
Tさん、ありがと。

港に戻るまでの数十分は、戦いを終えたアスリートのような快感だった。

カジキマグロ漁_勝丸


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久部良港に戻ると、漁師さんが釣った魚をさばいてくれた。

カジキマグロ漁_勝丸



最初に釣ったキハダマグロ。

カジキマグロ漁_勝丸



3匹さばいてくれた。
「これだけあれば夕食に充分やろ?」と。
充分です。


カジキマグロ漁_勝丸



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腹ペコの我々は、宿に戻り、早速キハダマグロに包丁を入れる。

マグロを切る経験すらない我々に、宿のオーナーさんが見るに見かねて包丁を握ってくれた。しかもマグロの硬い箇所を小さく刻み、マグロ漬けまで作ってくれた。

旅で出会う人は、みんな優しいなぁ。

カジキマグロ漁_勝丸



早めの時間から、宿のルーフテラスで捕れたばかりのマグロを食した。
自分達で釣ったマグロ。
ホントに美味しかった。

与那国島fiesta


昨日の海底遺跡、今日のカジキマグロ漁の経験は、一生の思い出になるだろう。

一人旅もいいが、気の置けない友との旅もいい。

腹をかかえて笑ったのはいつ以来だろうか。

私は、幸せとは「笑い転げること」と定義している。

今日も幸せだった。

人生楽しんでなんぼ。
No Fun,No Life!!


マジメに働いて、コツコツとカネを貯めるのもいいかもしれないが、貯めたカネは経験に使うべき。その経験が人生の彩りとなる。旅は人生を変える。与那国島の最後の夜は、そんな当たり前のことを思い出させてくれた。