多くの公認会計士にとって、6月30日は一区切りの日だと思う。3月決算の上場企業の株主総会が終わり、有価証券報告書が出揃う。4月から続く繁忙期が一旦終わる。Twitterを見ていても、6月末を区切りに退職・異動・転職・独立する公認会計士が多かった。私もサラリーマンを卒業したのは2005年6月30日だった。

そこから独立し、15年間、めちゃくちゃ働いた。15年間、常に複数のコンサル案件を抱えて走っていた。一度も仕事が途切れなかったことは奇跡だと思う。15年連続増収を続けたが、スタッフゼロで上場企業のコンサルを10案件も同時並行で走らせるということは、もう体力的にも精神的にも不可能だと思ったし、そろそろ区切りを付けるべきだと思った。だから新規受注を抑えていった。そして、2020年6月30日に全てのプロジェクトが終了した。

我ながらよくやったと思う。
自分で自分を称賛したい。


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で、2020年7月1日から人生第2幕が始まり、1年経った。あれから大型コンサルはやっていないが、執筆、セミナーなどの仕事はやってきた。収入のポートフォリオは変わったが、会社も個人もキャッシュ残高は減らなかった(というか増えた)。最近、色んなところで「FIRE」というコトバを聞く(Financial Independence Retire Early(経済的自立&早期リタイア)の意味)。かつて、ロバート・キヨサキさんが「Financial Independence」と言い、本田健さんが「経済的自由」と言ってたが、最近の流行りは「FIRE」らしい。

ただ、「FIRE」に関する本や記事を読むと、「FIRE」=「仕事をやめること」と解釈している人が少なからずいる。「食欲・物欲は極限まで抑え、持っているものは出来るだけ売り、給与の数分の1で生活できれば、○年後に仕事をやめても○年間過ごせます!」 みたいなことが書かれている。こういう記事を見ると、ツッコまざるを得ない。おいおい、それってFinancial Independenceじゃねーよ。貯金を取り崩してるだけじゃねーか。

Financial Independenceに関する本に書かれていることに共通するのは、従業員(employee)ではなく、投資家(investor)にならねばならないということだ。貯金を取り崩すのではなく、資産を運用し、その利回りで生活することがFinancial Independenceであり、(平均的にその運用利回りは4%位あるから)資産運用額の4%未満の額で生活すれば貯蓄を減らすことなく生きていける。これを「4%ルール」といい、ブライス・リャン著『FIRE』にも紹介されている。これを、どういう訳だが、「支出を減らせば仕事を辞められる」と解釈している人がいる。仕事を辞めることが目的なら、とっとと辞めればいいじゃねーか。

私はいつでもリタイアできるだけのFinancial Independenceを獲得したと思うが、私の幸せは無職になることではないし、食欲・物欲を極限まで抑えたり、メルカリやブックオフで換金しながら生活することも望まない。有形資産のみならず、自分の無形資産も投資し、社会に足跡を残したい。

ある年配の方が「歳を取るとカネを使うことが減るから、若いうちに使っておいた方がいいぞ」というようなことを言ってたが、その通りなんだろうなぁと思う。カネを貯めることも大切だと思うが、カネをどう使うかも大切であり、自分の幸せを考えるのであれば、残りの人生のカネの使い方をきちんと考えた方がいいと思う。富を得ても、普通預金に貯め込んで死ぬのはカッコ悪い。

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7月1日は、私にとって、会計年度の初日のようなものなので、この1年間の仕事・投資・収入のポートフォリオを考えていた。執筆、講演、大学講義は決まっているが、あとは何も決まっていないので。

残りの人生のカネの使い方を考える時、今から2年前に「アナザースカイ」という番組で石田ゆり子さんが言っていたコトバを必ず思い出す。「お金って紙だから・・・経験に換えていきたい」。

以前のような働き方はもうやらないが、以前できなかった仕事や経験はしていきたい。そこにカネを使うことに躊躇したくない。貯蓄は減っても、幸福度が増すならそれでいい。楽しむことに躊躇せず、弾を撃ちまくる人生であれ。本音で生きろ、本気で生きろ。それが我が人生。

この1年も燃焼したい。



経験に換えていきたい
(※ 画像はネットから拝借した)