原田マハ


原田マハさんの『旅屋おかえり』 (集英社文庫)、『生きるぼくら』 (徳間文庫)、『総理の夫』(実業之日本社文庫)と読んできて、完全にハマった。マハった。

次に、『楽園のカンヴァス』(新潮文庫)を読んだ。

これは唸った。読後は放心状態。

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アート(近代美術)にそれほど詳しくないので、「アートを題材にした小説って、面白いのか…!?」と思って、避けてきた本だった。しかし、裏切られた。アートに詳しくなくても楽しめる。第1章から引き込まれて、最後までページをめくる手が止まらなかった。

マハさんは、作家になる前に、森ビル森美術館の設立準備室で5年程勤め、その在籍時にニューヨーク近代美術館(MoMA)に派遣され同館で勤務した経験もある。本作は、近代美術と近代美術館の裏側を知りつくしていなければ絶対に書けないだろうという内容。

伝説のコレクター秘蔵のルソー作品を、ルソー研究家の第一人者2人がその真贋を追うというストーリーなのだが、読みながらフィクションなのかノンフィクションなのか分からなくなってきた。創作と忠実の境目が分からなくなるような、忠実な創作。

そして、ルソーの絵画が、マハさんが文章で表現すると、目の前に絵画が立体的に浮き上がり、自分が美術館にいるような感覚になる。さらには、ルソーのアトリエでカンヴァスを見ているような、そんな感覚にもなる(絵画の見方まで勉強になった)。

そこにサスペンス的な要素もミックスされ、読者を引き込ませる。

すごいとしかいえない。

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読みながら、本書の舞台となったバーゼル(スイス)に行きたくなった。
本書に出てきたライン川沿いの5つ星ホテルに泊まり、バーゼル美術館に行きたい。
誰か付いてきてくれるかな。


楽園のカンヴァス (新潮文庫)
原田 マハ
新潮社
2014-06-27