人類哲学序説 (岩波新書)
梅原 猛
岩波書店
2013-04-20


先日、哲学者 梅原猛(1925-2019)の『学ぶよろこび』(朝日出版社)を読み返し、書評を書いたが、その後も本書を読み返していた。

山川草木悉皆成仏」(山川草木など自然のすべてに仏性があって成仏するという思想)というコトバが梅原猛の造語だと知ってかなり驚いたのだが、この思想をもっと深掘りして知りたいという知的欲求が溢れた。

すると、『人類哲学序説』 (岩波新書)という本に行き着いた。古代→近代→現代と文明が発展し、それが「哲学」に影響してきたという歴史的な時間軸と哲学的な断面図をサクッとまとめてくれている良書。産業革命後の科学技術の発達により、人間による自然支配と環境破壊がなされてきたが、このような問題は哲学の問題でもあり、宗教の問題でもある、という。

そこで梅原猛は、人類を支配することを前提としていた「近代哲学」を否定(批判)し、自然と共存することを前提とする「人類哲学」(新しい人類の哲学)を提唱する。

斎藤幸平著『人新世の「資本論」』 (集英社新書)における提唱と被る。

これまで人間は、動物、植物、地球、自然に対して、”上から目線” で支配してきたが、人間はそれほど強くない。天災にもウイルスにも無力である。成長を止め、思想も哲学も原初的、根源的なものに戻さなければならない。時代の節目に来たように思う。梅原猛は、「近代という時代は、私は、もう終わったと考えます」と述べているが(『学ぶよろこび』P63)、私も全く同じように考えている。

梅原猛は、これらの思索のプロセスを、近代哲学を批判しながら『序説』として本書にまとめた。さらに研究を続け、より正確でより体系的な著書を『人類哲学本論』として出すつもりだったと思われるが、残念ながら、その前に亡くなられた。しかし、『序説』からもエッセンスは十分に伝わる。2013年に出版された本であるが、脱成長や脱炭素が叫ばれる今こそ、梅原猛の哲学の足跡をなぞるべきではないかと思う。