かがみの孤城 上 (ポプラ文庫)
辻村深月
ポプラ社
2021-03-05


かがみの孤城 下 (ポプラ文庫)
辻村深月
ポプラ社
2021-03-05


いろんな人に薦められていたし、本屋大賞も受賞したので、「いつか読もう」と思っていたが、数年経過。文庫化されたので、やっと読んだ。

上下巻770ページ位ある長編だが、一気に読めた。

不登校の中学生が主人公の物語。ネタバレになるので内容には触れないが、私が中学生の時に、世の中(学校と教師と教育制度)に対する不条理と闘い、苦しみ続けた3年間を思い出さずにいられなかった。思春期と反抗期の真っ盛りで、親に心を閉ざし、自分の「孤城」に閉じこもっていた。学校に行くことがイヤでイヤで仕方なかったが、”皆勤賞” 以外は絶対に許さないという担任の理不尽な怒りや暴力を恐れ、毎日中学校に通い、終礼までひたすら耐えた。私はこの中学を「刑務所」と読んでいた。何をした訳でもないが、「懲役3年の刑に処されたのだ」「3年耐えたら出所できる」と自分に言い聞かせ、ただ耐えた。中高一貫校だったが、高校は違う学校に行くと決めていたので、夜は進学塾に通った。が、ここも「刑務所」みたいな場所だった。阪急電車に飛び込もうと思ったことは一度や二度じゃない。

いまでこそ自由に生きているが、自由に生きることができない時期が私にもあった。誰にでもそんな時期はある。私はたった3年の刑であったが、その時に個性やキャラは歪められたし、コンプレックスやトラウマは消えない傷と共に今でも残っている。人生はそんなもんだ。

「先生たちだって、教師だっつって偉そうな顔しているけど所詮は人間だしさ。教員の免許は持ってるんだろうけど、もとの頭がオレたちより劣ってる場合だって多々あるわけ。」(上巻P107)

教師も親も、所詮人間。日本語が通じないこともある。そこで人は孤城という仮想世界で生きていき、自由を手にする。しかし現実世界に戻ると自由には責任が伴う。全て負えるはずもない責任が。

そうやって仮想世界と現実世界、パラレルワールドを生きていきながら、自分自身と静かな対話をしていく。



人生は所詮フィクション。
完璧な人間なんて一人もいない。
ってか、人は皆、どこかおかしい。
だから闘わなくていい。
人生に深みを求めなくていい。
楽しんでなんぼ。



って、本書を読んで改めて思った。

書評でもなんでもない、独り言。