長崎

長崎を旅したことがある人から「グラバー園に行くのか?」と言われることが多かった。余りにも色んな人から「グラバー」「グラバー」「グラバー」と言われるので、行っておくべきなのだろう。午前中の軍艦島ツアーが終わったら、その足で「グラバー園」の方向へ歩いていった。


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旅の下調べは、あえて余りしていない。成り行きでいいかと思って。
ただ、長崎空港に向かうスカイマークの機内誌が「坂のまち、長崎」という特集を組んでいて、これは隅々まで熟読した(スカイマークの機内誌は毎号良い記事が多い)。この特集記事に「迷い込むことも坂道の醍醐味」といったことが書かれていた。なるほど。真っ直ぐ「グラバー園」に行っても面白くないので、google mapを見ながら、坂道(階段坂)をあえて歩いた。

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「ドンドン坂」
かなり急勾配。沖縄の首里城周辺を思い出す。雨が降ると石畳の側溝を水がドンドン音をたてて流れることから「ドンドン坂」の名前が付いたらしい。


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「プール坂」
雨が降るとプールのように水があふれるのかと思ったら、そうではなかった。以前、この坂の脇に閉校した小学校のプールがあったから「プール坂」の名前が付いた。


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↑ 「プール坂」の途中で振り向くと、長崎港が見下ろせる。

ひたすら細い坂道(階段坂)が続く。外気はめちゃくちゃ寒かったが、ヒートテックの下は汗だくになる。クルマもバイクも通れないような階段坂の両脇に民家が立ち並ぶ。この人達は日々どうやって生活してるんだろう。もちろん歩くしかないが、近くに商業施設も見当たらない。買い物はどうしてるんだろう。ドミノピザもUber Eatsも来てくれないだろうなぁ。と、どうでもいいことを考えてしまう。


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↑ 長崎は、幕末から明治にかけて造船と石炭産業で日本の産業発展を担ってきた。見下ろすと三菱長崎造船所が見える。軍艦島ツアーに申し込むと、この造船所のドックの側を通ってくれる。


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「オランダ坂」
出島に住むオランダ人の影響か、開国後も長崎の人々は東洋人以外を「オランダさん」と呼んでいたらしい(ホンマかいな・・・)。で、「オランダさん」が多く通るので「オランダ坂」の名前が付いたとか。ここは道幅は広いが、フェラーリでは通りたくない急勾配。ドミノピザのバイクも登らないんじゃないか・・・。



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↑ 「グラバー園」の近くまで行くと、道が開ける。
なんでもない坂なのだが、左のベンチに座って読書をしているおじさんが気になって写真を撮った。ちなみに、1時間後にこの道に戻ると、まだおじさんは読書をしていた。私が横を通ったことも気付かないくらいに没頭して。いつもここで長崎港を見下ろしながら読書の時間を楽しんでいるんだろう。ステキだ。私の家には本を読んでいる人の写真ばかりを集めた写真集がある(スティーヴ・マッカリー「読む時間」、アンドレ・ケルテス「読む時間」)。これは断捨離の対象外として大切に本棚に置いている。


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↑ 散歩の途中で「角煮まん」なるものを食べる。これもスカイマークの機内誌で紹介されていたもの。美味しいのに小さい。で、450円もする。551蓬莱の豚まん位の大きさにして、値段を半分くらいにしてくれたら・・・。


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↑ ちなみに、長崎はボウリング発祥の地。



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かなり遠回りをして外国人居留地であった「グラバー園」に行ったのだが、「グラバー園」ではほとんど写真を撮っていなかった。敷地内に立ち並ぶ洋館に興味がなかった訳ではないが、館の内部の展示物に見惚れてしまった。

上の写真のような相関図が、意外と役立ったりする。詳述は省くが、開港まもない長崎にグラバーさんがやってきて、三菱を創設する岩崎弥太郎と会ったり、高杉晋作や坂本龍馬と取引をしたり、伊藤博文や井上馨の渡欧に手を貸したりしたらしい。グラバーさんは日本近代化のキーパーソンなのだ。そのグラバーさんの住宅が、なんと、世界遺産に登録されている。色んな人から「グラバー」「グラバー」「グラバー」と言われた理由がここに来て分かった。


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↑ 「グラバー園」の近くにある「大浦天主堂」
禁教令により250年間も神父が不在だったが、その間も信仰をまもってきた潜伏キリシタンがいたらしい。その「信徒発見」の場となったのがこの「大浦天主堂」。内部は写真撮影禁止につき、外から撮った写真のみ。

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↑ 歩き疲れて、ビールが飲みたいと、歓楽街の「思案橋横丁」へ向かう。
午前も午後もそうだったが、とにかく観光客がいない。そして「思案橋横丁」も無人。驚くほどに店が空いていない。これは想定外。困った。


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↑ 「思案橋横丁」を諦め、別の場所で開いていた居酒屋に入ると、ラッキーなことに鯨料理を出してくれる店だった。鯨盛りと鯨ステーキを注文し、地酒を頂く。美味しかった。


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↑ 普段は1日1食にしているが、旅に来ると1日3食+〆になってしまう(だから太る)。今日もちゃんぽんを食べたくなり、地元で有名らしい店に行く。9時頃に行ったが、私が最初の客だという。

店員3名、私1人。ひたすら愚痴に突き合わされた。コロナの影響で多くの飲食店は開けられない。開けたら食材を仕入れなければならない。でも客が来なかったら全部捨てるよね。人も雇うよね。赤字だよね。じゃ開けられないよね。これで東京に緊急事態宣言が出たら、観光客がさらに減るよね。そうなったら、今度こそ壊滅するよね、と。ずっと同じような話を3度も4度も繰り返し聞かされる。

絶望的な状況はよく分かった。ホントの絶望に追い込まれた時、その人の本性が見えるのかもしれない。この店の店員さんは、愚痴は言うが、めちゃくちゃ笑ってる。私もその笑顔を見ながら、腹を抱えて笑った。何がおかしいんだろうか。とにかく笑った。

私が帰ると今日は店を閉めるという。ちゃんぽん1杯、ビール2本、1日の売上1700円也。大赤字だが、最後の最後まで手を降って見送ってくれた。こういうのが思い出に残るんだなぁ。