荒野へ (集英社文庫)
ジョン・クラカワー
集英社
2007-03-20


旅に出る時は、旅の本を持参することが多い。先週沖縄に行った時は、『荒野へ』into the wild)という本を持参した。誰か忘れたが、雑誌で絶賛している人がいたので。

いまから約30年前、アメリカの裕福な家に育ち、学業も優秀なマッカンドレスという青年がいた。しかし、彼は大学を卒業すると、名前を変え、貯金を全額寄付し、財布にあった現金をすべて燃やし、過去ときっぱり訣別するための旅に出る。が、アラスカで腐乱死体となって発見される。なぜ彼は、すべてを捨てて、荒野に向かったのか。綿密な取材によって書かれた本書は全米でベストセラーになり、映画化もされた。

旅には色んな出会いがある。24歳のマッカンドレスは、カリフォルニアでヒッチハイクをした際に、80歳のロン(ロナルド)という老人のクルマに乗る。それが縁で、2人は数週間一緒に生活をする。

ロンはマッカンドレスを家族のように愛するが、マッカンドレスは新しい場所へ旅立つ時が来てしまう。マッカンドレスが旅立った後、ロンは何通かの手紙を受け取る。そこには、自分より56歳も年下の若者からの「アドバイス」も書かれていた。これとても良い。

要約すると、ざっと以下のような内容。
いまの安全で、画一的で、保守的な生活をやめて、思い切ってライフスタイルを変えるべきだ。そういう生活は唯一無二の心の安らぎかもしれないが、安全な将来ほど男の冒険心に有害なものはない。生きる気力の中心になるのは冒険への情熱ではないのか。単調な安全を求めるのはやめて、常軌を逸しているようないい加減な生活をしなければならない

あなたはただそこにじっとして、新しい光を灯してくれることを待っているだけだ。なすべきことはただひとつ、自分から掴みにいくことだ。あたなが闘っている相手はまさに自分自身であり、新しい環境に入ろうとしない頑固さなのだ。自分に言い訳することを許さないでほしい。現状を飛び出して、実行するだけでいい。そうすれば、本当に良かったと心から思えるはずだ。

24歳の生意気な放浪者からこんな「アドバイス」をもらったら普通は不快に思うだろう。しかし、ロンはこの「アドバイス」を真面目に受け止め、ヴァンを購入し、キャンプ用品を詰め込んで、テントを張った。そして、来る日も来る日も「若い友人」の帰りを待ったのだ。8ヶ月以上も。

ある日、ロンは郵便物を確かめるために自宅へ戻る途中、またヒッチハイカーをクルマに乗せる。そこでロンは、ヒッチハイカーに「若い友人」の話をする。すると、そのヒッチハイカーが話をさえぎってきた。「彼の名前はマッカンドレスでは?」と。ロンは、そこでマッカンドレスが凍死したことを知らされる。

ロンは悲しみに暮れたに違いない。実際、無神論者になり、酒を呷ったという(以上、第6章参照)。


旅は人生を変えるというが、旅は人生であり、人生は旅でもある。今の場所に安住し、単調な生活ををしていると、人生に新しい光を灯してくれることはない。しかし、自分から新しい環境に一歩踏み込めば、人生が変わる可能性がある。踏み込むことに躊躇する必要もないし、年齢も関係ない。ロンは80歳を超えてから、新しい人生を掴んだのだ。

マッカンドレスのように、無防備に、無一文で、アラスカに行こうとは思えないが、彼くらい常軌を逸した生活をしていると人生は楽しいだろうなぁと思う。私も、単調な生活より、そういう生活をしていきたいと強く思う。



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次回のYouTube Liveは、

8月14日(金)20:00〜

次回は、「知的生産術」の最終回、アウトプット編

自分の考えをどうやって相手に伝えるのか、的なお話し。

どうやって19年も複数のブログを書き続けてきたのかという話もしようと思います。

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