珍しく日帰りで東京。
相変わらず新幹線はガラガラ。

先月末に実施した『SBM』という経営者・起業家向けセミナーのフォローアップセミナーに登壇した。先月末のセミナーでビジネスプランを作成するという課題を与えたので、今回それを全員に持参してもらい、1人2〜3分でプレゼンをしてもらい、私がひとりひとりにフィードバックし、再度ビジネスプランをブラッシュアップしてもらう、ということを半日かけてやっていった。

ある女性のプレゼンを聴いた時、「えええっ!?」と耳を疑った。プレゼンの冒頭から、「子育てや家庭で起こる問題の原因の多くは母親にある」というような趣旨のことを言い始めたから。これ、男性が言ったら大炎上するに違いない。「ほとんど家におらず、夜は飲みに行ってる男性に、家事と子育ての大変さが分かってたまるか!!!」と言われるだけだ。

でも、その方のプレゼンを最後まで聴いて、納得と共感しかなかった。母親の子供に対する過剰な愛情、干渉、厳しさの間の揺れ動きが、子供や父親、はたまた本人(母親)にもストレスを与え、家庭内の不調和音となる。離婚率が高いのも、不倫が跡を絶たないのも、子供が非行に走るのも、根本的な原因は家庭内のストレスである可能性が高い。

その方も10歳の子供を持つ母親であり、コーチングの経験と実績をお持ちの方でもある。自身の経験もふまえ、子供を産んだばかりの初心者マークの母親よりも、子育て10年目位のベテランの母親こそ、頼れる相手や相談できる相手が必要だし、コーチングが必要だという。この視点は唸った。


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このプレゼンを聴いて、2018年直木賞受賞作『銀河鉄道の父』を思い出した。

宮沢賢治の父、政次郎を主人公にし、宮沢賢治の生涯を父の視点で書くというユニークな作品。

時は明治時代、過剰な厳格さとデレデレな過保護の両面を持つ父政次郎と、成績はトップでありながらも父の仕送りをアテにする困り者の長男 宮沢賢治、2人の親子愛や機微をうまく描く物語。

時代背景は違えど、現代の親子関係とそう変わらないのかもしれないと思った。

ここの主人公は母親ではなく父親であるが、愛する子供に対する厳しさと甘さに揺れ動く姿が描かれている。政次郎は、父喜助から「お前は、父でありすぎる」と苦言を呈されるが、賢治が入院した際は病院に泊まり込み、献身的に看病を続ける。賢治が詩を書いた時は、一晩かけて幾度も読み返す。詩人として芽が出ず机に向かえない時は「あまったれるな」と厳しく背中を押す。そういう政次郎の姿はジーンと来る。しかし、質屋を営む政次郎は「質屋に学問は必要ねぇ」と、当初賢治の進学を認めなかった。父子の相克が絶えることがなく、子供にとっては不条理な親だと思ったに違いない。

しかし、子は親を選ぶことも変えることもできない。苦悩や葛藤を抱えながら、父も子も成長していくのだ。

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親の世界観と、子の世界観は明らかに違う。子には子の価値観があり、親とは異なる才能の原石がきっとある。親はその可能性を引き出さなければならない。

しかし、親は自分の世界観を子に押し付けがちだと思う。それが子の成長や可能性を潰すことも大いにある。「頑張っている親」こそ、変わらなければならないし、コーチングが必要だというのは確かにその通りだと思う。



今日は、他にも素晴らしいプレゼンを聞くことが出来た。
楽しく充実した1日だった。




銀河鉄道の父 (講談社文庫)
門井慶喜
講談社
2020-04-15