東京駅_自粛

東京都が不要不急の外出を控えるよう呼びかけた週末、都内に住むパートナーが東京駅の写真を送ってきてくれた。「不要不急」(=重要でなく、急ぎでもないこと)の外出を控えるように要請しているだけなのに、東京駅構内も、新幹線の車内も、ほぼ無人だったようだ。ネットでは(匿名で)徹底して政治をバッシングしている人達がウヨウヨといるのに、外出自粛要請を出したらピタっと街から人がいなくなるという変な同調性がウイルスより怖い。旅をしながら絶景写真をアップしている著名なインスタグラマーが、しばらく投稿を控えると言う。こんな時に旅をしているだけで非国民扱いされ、叩きのめされるのだろうか。在宅に疲れたという声をよく聞くが、一部の人間からの同調圧力や他者監視も疲れる。

さて、この週末も特に予定はなく、必要火急の用事も、不眠不休の仕事もないので、ひたすら読書day。

昨年亡くなった小池一夫さん(享年82歳、Twitterのフォロワー86万人以上)が、Twitterでのツイートをまとめた『だめなら逃げてみる』などの作品は今でも書店で平積みされているが、これとは別に『人生の結論』という本を上梓されている(亡くなる数ヶ月前に上梓されている)。

『人生の結論』といいながら260ページくらいあり、なかなか結論に辿り着かないのだが、86万人もの人を共感させ、感動させてきただけある。一頁一頁、一言一言が共感できる。「八方美人は八方塞がり」、「仕事を選ぶことは人生を選ぶこと」、「許しは過去との決別」、「不機嫌は無言の暴力」、「人に与える愛だけが、己に残る愛」・・・などなど。

本書の最後の方で、小池氏は「人生は二毛作も三毛作も可能だ」というようなことを言っている(P253〜)。プロスポーツ選手のように、ファーストキャリアが終わったら、さっさと次の人生を生きれば良いのだ。ちょうど昨日、「人生のシナリオや、ビジネスのシナリオを描き換えるタイミングなんだろう」と書いたところなので、この箇所は大きく頷いた。もう一つの畑を耕そうと思う。

第4章の「粋について」は、他の章と趣が異なる。電車でスマホを見るな、食事中にケータイを触るな、喫煙可の飲食店だからといってチェーンスモーキングするな、高級料理店に小さな子供を連れて行くな、モノにはこだわれ・・・と、一見「不要不急」と思われるようなことが書かれているが、私はとても大切なことだと思う。「人は人、自分は自分」と思って生きるのは構わないが、周りが不快に思うようなことを平然とすべきでない。人は外見に美意識、知見、生き様が表れる。単に年だけを重ねた幼稚な人間にはなりたくない。

著者は80万人以上もの人にフォローされていたので、一つのツイートに対して、心無いリプライや攻撃、バッシングがあったという。しかし、そういう人のツイートを観察すると、「生きている自分の世界が驚くほど狭い」人であり(P131)、「自己評価も低い」人であり(P33)、「パソコンという小さな窓から世界を眺めることに、あまりにも慣れすぎている」人だという(P192)。精神科医の中野信子さんは「カミカゼ遺伝子」というコトバを使って、この日本人の生得的で特異な特性を説明しているが、こういった特異な遺伝子の欲望のままに熱狂や炎上を起こす人達を見ていても疲れる。

結局のところ、『人生の結論』における結論は、「人として美しいほう」「楽しいほう」「相手が喜んでくれるほう」を選べ、と書かれている(最終ページ参照)。何も難しいことではないが、成熟した人生を歩むためには、よいほうを選択しながら生きていくことが必要となる。果たして、この3つが実践できているだろうか。この裏には「(ネットばっかり見てないで)自分の頭で考えろよ」と言われているような気がする。



人生の結論 (朝日新書)
小池一夫
朝日新聞出版
2018-08-10