独ソ戦


この帯を見て購入。

たまたまではあるが、読み始めた日に『新書大賞2020』が発表され、本書『独ソ戦』が大賞を受賞。我ながら本をチョイスするセンスに長けていると思う。

さて、本書『独ソ戦』、これはすごい本だった。

1941年にはじまった『独ソ戦』は、「人類史上最大にして、もっとも血なまぐさい戦争」(はじめにより)といわれている。ソ連の死者数は3000万人、ドイツの死者数は(独ソ戦以外も含め)800万人超(ちなみに当時の日本の総人口は7000万人超)。一般市民も含め、敵とみなした者や、ナチ体制にとって危険と思われる異分子、ドイツの占領支配の障害となるであろう教師、聖職者、貴族、将校、ユダヤ人などを「みな殺し」にし、絶滅を追求する絶滅戦争を実行したのだ。軍事的な合理性など逸脱した狂気としか思えない。(P98〜参照)

捕虜を虐待し、殺戮する残虐なシーンが多く登場し、何度も胸が締め付けられそうになった。ソ連の大都市レーニングラードでは、ドイツ軍が市内への物資輸送を遮断したため市民の飢餓が蔓延し、最後には死肉食・人肉食が横行したという(さらに、死肉食・人肉食の嫌疑で市民を逮捕する)。「これが人間か」というような愚行が行われていたのだ。(P110〜参照)

個人的に興味深かったのは、独ソ戦とホロコーストとの関連(P107〜)。ナチス・ドイツは最初からユダヤ人絶滅を企図していたのではなく、ユダヤ人を国外追放しようとした結果、国外に逃げようとしなかった貧困層、高齢層という、ナチスの眼からすれば最も残って欲しくなかった分子が「滞留」することになってしまった。加えて、領土拡張によりナチス・ドイツ支配下にあるユダヤ人の数は急増することになった。このように、大量移住計画が破綻した結果、システマティックな「絶滅政策」へと舵を切っていくことになったのだ(1942年1月、「ユダヤ人問題の最終的解決」が正式に国家の方針として採用され、労働可能なユダヤ人は劣悪な条件での労働を課して自然に死に至らしめ、労働できない者は毒ガスで殺害することになる)。このドイツの愚策により、ソ連軍も人道を踏みにじる蛮行が繰り返され、通常戦争を超えた空前絶後の暴力・犯罪行為が遂行されて、ナチス・ドイツの崩壊まで戦い続けることになったのだ。

歴史は、都合よく編集され「虚像」を作ることがある。しかし、本書は、ドイツ戦史研究家の著者により「史実」として確定しているものを多面的に新書1冊にまとめてくれている。約4年にわたり、数千kmの長い戦線で行われた戦争を新書1冊にまとめることは簡単ではなかったというが(それは読んでいて痛感するところでもある)、人類史上最悪の戦争を新書1冊にまとめてくれた意義は大きい。

かなりオススメの一冊。







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