バンコクに行く前に、友人から映画『サヨナライツカ』を薦められた。Prime Videoで観ることができる。書籍『サヨナライツカ』は文庫化された時(2002年)に読んだことがあるが、映画は観てなかった。

もう小説の内容を忘れていたが、舞台はバンコク。それも、私がバンコクで一番好きなホテル「マンダリンオリエンタルバンコク」が舞台(映画では「オリエンタルバンコク」)。映画の公開が2010年なので、10年前のマンダリンオリエンタルということになる。マンダリンオリエンタル自体はそれほど変わりないが、周辺の景色が全然違うことに驚いた。バンコクはこの10年でとてつもなく発展したことがこの映画からも分かる。

小説版は(確か)涙なしでは読めない恋愛小説だった記憶があるが、映画版は涙を流すようなシーンはなく、ただただ切ない物語だった。バンコク赴任中の「好青年」(西島秀俊)の前に、同僚の元カノである美女 沓子(中山美穂)が現れる。「好青年」には日本に婚約者がいるが、2人は愛に溺れていく。かなわぬ恋と分かっていながらも。「好青年」は、婚約者と仕事(=出世)への道を選択し、沓子と別れるという選択をする。

が、しかし、25年後・・・、予想もつかない展開になる。

こういう恋愛小説(恋愛映画)は賛否が分かれるんだろう。私は純粋に良い内容だと思った。このブログで何度も書いてるが、人生なんて所詮フィクションだ。都合の良いように編集されるフィクション。第1章が終われば、第2章が始まる。第3章が始まる。どんどん新しいストーリーが展開する。1冊目が終われば、続編が続く。番外編も待ち受けてる。特別編だってある。いつ終わるかも分からないけど、ストーリーはひたすらに続いていく。出会いがあれば別れもあるだろう。嬉しいこともあれば悲しいこともあろうだろう。何を選択して生きていくかは自分次第。ストーリーを自分で作っていけばいいのだ。主人公は自分。他人でも世間でもない。

この映画の2人は、思い通りにならないこともあったが、生涯忘れられない相手となった。そして、人生を楽しんだ。幸せな人生だった。だから見ている私もハッピーになった。批判する点なんてどこにもない。幸せでなければ意味がない。楽しまなければ人生じゃない。

映画の中での名ゼリフがこれ。

『人間は死ぬ時、愛されたことを思い出すヒトと、愛したことを思い出すヒトにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す』
(辻仁成著『サヨナライツカ 』(幻冬舎文庫)より)

私は、もちろん、愛したことを思い出す人間でありたい。