知人から「この人すごい!」と薦められた本。

確かに、「この人すごい!」と唸った。

著者 工藤勇一氏は、千代田区立麹町中学校という名門校の校長先生。

宿題の全廃テストの廃止固定担任制廃止・・・と次々と世間の常識を廃止していった。こういう施策がすごいのではない。工藤校長は、教育の「目的」(原点)を最上位に位置づけ、「当たり前」を徹底して実施し、「真の教育」を貫いているからすごいのだ。

そもそも、教育の「目的」(原点)は何なんだろうか?

工藤先生は、教育の「目的」(原点)は子どもたちが「社会の中でよりよく生きていけるようにする」ことであり、子どもたちが「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する資質」、すなわち、「自律」する力を身に付けさせていくことだ、という(P6)。

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しかし、いまの教育の現場は「本来の目的」を見失っている(P5)。

いま、教育の現場で行われていることは「手段の目的化」が多い。テストがあるから授業を受ける、宿題をこなすために机に向かう・・・というように。宿題をこなすことや、テスト勉強を一夜漬けで行うことが、「目的」を達成することになるのだろうか・・・?

こういった「手段の目的化」が、様々な問題を生み出している(第2章)。特に、大人が「問題」を作っているという話は、子どもに関わるすべての方が読んだ方がいいと思う(P88〜)。

この箇所に、こんなエピソードが載っている。根本的問題を示していると思う。
・・・ある日、女の子が家で食事をしているときに、母親が「どうしたの? 食欲ない? 具合悪そうだけど」と聞いてきます。その女の子は、そんなふうに感じていなかったので驚くのですが、その言葉を受けて「ひょっとしたら、いつもより少し食欲がないかも」と返します。すると、母親は、「何かあった? 友達に何か言われた?」と、さらに追求してくる。そのうち、女の子は(略)嫌なことを次々と思い出し、本当に気持ちが悪くなって、トイレに駆け込んでしまう・・・(P89〜)

手取り足取り丁寧に教え、壁に当たればすぐに手を差し伸べる。何か問題が起こればすぐに仲裁に入り、仲介する。子どもの言動に過剰に干渉することにより、自ら考え、判断、決定、行動できず、いつまでも「自律」できない人間になってしまう(P6参照)。

「愛情」と「教育」、「躾」と「教育」の境目は難しい。これらを履き違えると、子どもの「自律」を育むことと真逆のことに陥ってしまう。過干渉が教育の目的を骨抜きにする。

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同校では、子どもの「自律」を育むために、様々な新しい学校教育を創造している(第3章参照)。その中でも私が素晴らしいと思ったのは、ノートの取り方(黒板を写すのではなく、目的や気付きをメモさせる)をキチンと指導していること(P104〜)、スケジュール管理のためにビジネス手帳を全員に持たせ、入学後のオリエンテーション合宿で手帳ガイダンスを行い、手帳の活用法などを指導していること(P108〜)。中学生からこのような指導をしているのは珍しいと思うが、これぞ「自律」を育むための「真の教育」だと思う。

本書で書かれていることは、容易いことにも思えるが、実際に「教育者」として実践することは容易いことではないはずだ。とてつもないリーダーシップも求められる。生徒、教員、PTA、教育委員会などから反発されても、最上位の「目的」を果たすために改革の努力を惜しまぬ姿勢こそ、真の教育者だと思う。色んな意味で得るものが多い一冊だった。