脳科学者 中野信子さんの本は、『不倫』、『サイコパス』、『努力不要論』などを読んだことがある。いずれも、興味深いテーマを脳科学的な視点から解説してくれるので面白い。

その中野信子さんの新刊書『キレる!』も読んでみた。あおり運転、児童虐待、DV、毒親などのニュースが絶えない中で、タイムリーなテーマだと思う。

本書によると、「間違った行動をした人を正す」という正義感を持って制裁行動を取ろうとするときに、脳内にはドーパミンが放出されるらしい。ドーパミンは一度放出されると、快感を得てしまい、理性が効かなくなり、中毒状態になることから、止めることが難しくなる。「自分は正しいことをしている」という「承認欲求」が充たされるから、脳は快感を覚えるのだ(P57〜参照)。モラハラ、パワハラなど他人を攻撃する人も同じ症状なのだろう。そこには「承認欲求」があるのだ。でも、「認めてくれ!」と叫んだところで、人は認めてくれない。むしろ、理性を失った人間から人は逃げていく。

ただ、キレるということが必ずしも「悪」ではない。本書を読んで有益だったのは、「キレる」というコミュニケーションスキルを学べ、と書かれていること(P29〜、P158〜参照)。キレる人間が周囲にいたら「避ける」ことが最善策であるが、キレる人が家族・上司・先生などであればそこから逃げることが難しい。かといって黙っていたら、いいように利用されたり、搾取されたり、いじめられたりする可能性もある。なので、サバイバルするためにも、(こちらも)「キレる」というスキルが必要になる。

そのためには、「受け身的」でもなく、「攻撃的」でもなく、「アサーティブ」(Assertive:自己主張する)なコミュニケーションをすること。ポイントは、「私は」を主語として、自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい表現方法で伝えること(P183〜参照)。

例えば、「なぜ、(あなたは)そんなひといことを言うの!」と言ってしまうと、相手は責められてると感じ、「君だって同じことを言ったじゃないか!」と喧嘩になってしまうかもしれない。そこで、「私は、〇〇なんて言われて辛い。もう言わないで欲しい」という表現に変えるだけで、相手に対する伝わり方も変わるし、「もう言わないでほしい」という目的も果たすことができる。「キレる」というより、「切り返す」方法かもしれないが、このようなコミュニケーション能力を身に付けることは有益だと思う。