旧古河庭園



朝9時、自宅で作業をしていたら、携帯電話が鳴る。
クライアントの経理部長からだった。

その電話で、今日が5月最終日ということを知った。
令和になって1カ月経ったのか。1カ月前のことが脳裏によぎる。随分と遠い過去のように思った。

2年間に及ぶ「決算早期化コンサルティング」の契約が今日で終了する。「メールじゃ何ですから」とご丁寧にお電話を頂いた。本来、私から御礼の電話をすべきところなのに恐縮する。

「お陰様でこの2年間で想像を超える成果を出すことができました」「本当にありがとうございました」と言ってもらえた。ビジネスをしていて一番嬉しいコトバだ。この言葉を聞きたいから、プロフェッショナルは日々格闘するのではないだろうか。

先日、私がなぜコンサルという法形態でのビジネスにネガティブなのかを書いた。私のやっている仕事は、外科手術のようなものだと思っているが、ガンの手術を受けるのであれば、本人の病気の知識と治す気持ちが必要だ。どんな優秀な医者でも、治す気のない人を治すことができないだろう。私はこれまで上場企業40社前後の決算早期化コンサルティングを受嘱してきたが、中にはそういう患者がいた。改善する気もなく、メールの返信もなく、コミュニケーションも拒絶し、改善提案も納品物も見ることもない。それでも契約があるから外科手術を施すが、やりながら虚しさや切なさを感じるし、術後もストレスに晒される。こういう企業が少なくないのだ。言われることは同じ。

「いま、忙しい。」

他方で、主体性をもってプロジェクトに取り組んでくれ、私の1の提案に対して、10も20も代替案を出してくれたり、1つの納品物に対して、芸術的なブラッシュアップをしてくれるクライアントもいる。そのようなクライアントは、私が驚く程の改善をみせるし、驚異的な成果を上げる。win-winというのはこういうことをいうのだろう。当事者意識なくして結果なんて出る訳がない。

今日お電話を頂いた経理部長さんは、もちろん、こちらのタイプのクライアントだ。これまで受嘱した案件の中でもトップ3に入るくらいの改善をしたと思う。正直、契約前は最も難関な手術になると思ったが、全経理部員が自分事として取り組んでくれたお陰で、1年で大きな手術もリハビリもほぼ完了し、2年目は筋肉質な身体に強化することに専念できた。理想的なプロジェクトだったと思う。私もこの2年間で大きな経験をさせて頂いたし、成長した。一緒に働くことができたことに感謝している。

今回の契約は終了するが、また別の依頼も頂いた。「コンサルを辞めようとされているのに申し訳ないですが・・・」と笑いながら言われたが、何をおっしゃりますか。こういうクライアント様とは一生のお付き合いをさせて頂きたいと思う。ビジネスだけではなく、プライベートでも。

この件に限らず、6月は何か新しい人生が開けそうな気がする。


(※ 写真は散歩中に立ち寄った旧古河庭園。本文とは何の関係もない。)