人生に目的はない。
ブッタが説いた4つの心理の第一は「一切皆苦」(人生は苦である)という考えだった。生きるということは、苦しみである。「苦」とは、「思うにまかせぬこと」「思いとおりにならないこと」という意味もある。つまり、人が生きるということは、「思うにまかせぬこと」である。
人は好きなことをしたいと思う。しかし、好きであっても素質がない場合もあり、素質はあっても環境や運に恵まれず、好きではない世界で一生を送らなければならないこともある。犯罪者として塀の中で一生の大部分を過ごすような人生もある。他人から利用され、泣きながら暮らさなければならない人もいる。愛する人と離別、死別することもある。計算どおりに進行するものは、ほとんどない。
私たちが選ぶ最も自然な道は、与えられた運命と宿命を、人生の出発点として素直に受け入れることだろう。「受容する」と表現してもよい。受容することは、敗れることではない。絶望することでも、押し付けられることでもない。運命を大きな河の流れ、そして宿命をその流れに浮かぶ自分の船として、自らを認めることである。そこから出発するしかないのだ。
自己の運命と宿命を受け入れた上で、どうするか。答えは一つしかない。それは「生きる」ことである。生き続ける。自分で命を投げ出して枯れたりせずに生きる。みっともなくても生きる。苦しくとも生きる。何のために、という答えは、あとからついてくるだろう。
本書の幾つかのページをつなぎ合わせたら、こんな感じ(少し編集したけど)。
人生は思い通りにいかなくて当たり前。思い通りにいったら奇跡。運命と宿命を受容し、川の流れに身を委ねて流れ落ちていけばいい。以前紹介した『〈いのち〉とがん』という本にも書いていたが、「ただ死ぬまで生きればいい」と私も思う。
(※ 本書は、文庫版『人生の目的』(2000年)と新書化したもの。文庫本の新書化って・・・。)