人間は相反する気持ちを同時に抱えることがある。そのため、本心とは反対のことを言うことがある。

例えば、
 ・会いたいのに、「しばらく会えない」と言ったり
 ・愛しているのに、「あなたは私のことを愛してないのよ」と言ったり
 ・結婚したいのに、「今は仕事に専念することにした」なんて言ってみたり


相手がこういう言動に出ると、こちらとしてはどう受け止めたらいいのか戸惑うし、どう理解したらいいのか分からず混乱してしまう。愛されているのか、嫌われているのか、会いたいのか、会いたくないのか、方向性がみえにくいので、周囲は振り回されることになる。

精神科医の岡田尊司氏は、このような「方向性がみえないとき、そこには、まず間違いなく両価的なジレンマが潜んでいるとみていい」と断言する。精神分析の世界では、このような相反する気持ちを同時に抱えることを『両価性』(アンビバレンス)という。世の中には『両価性』が強い人と弱い人がいるが、悩んでいる問題や未解決な問題に関わる時、『両価性』が強まった状態になりやすい。例えば、結婚に踏み込むべきか、止めておくべきかで悩んでいる時に、人は『両価的なジレンマ』に陥る。

我々は、このような「あまのじゃく」な人が少なくないことを知っておくべきだ。「あまのじゃく」な言動を真に受けて、愕然としてはならない。ここで、怒りや憎しみや「許せない」という気持ちになり、それを引きずると、人間関係が破綻することだってあり得る。「あまのじゃく」と「嘘」とは違うのだと知っておくだけでも、人間関係で傷付けられることはある程度避けられるはずだ。


【参考文献】
岡田尊司『あなたの中の異常心理』(幻冬舎新書)