良心をもたない人たち (草思社文庫)
マーサ スタウト
草思社
2012-10-04



先日紹介した『平気でうそをつく人たち ―虚偽と邪悪の心理学』(草思社文庫) がめちゃくちゃ面白かったので、草思社文庫の心理学関連の本を数冊まとめ買い。そのうちの一冊が本書『良心をもたない人たち』

これもめちゃくちゃ面白かった。

原題はThe sociopath next door』(隣のサイコパス(※1)


『サイコパス』というと、凶悪犯、殺人鬼のような人をイメージするかもしれませんが、実はそれだけではありません。医学的には以下7項目のうち、少なくとも3つを充たす者を『サイコパス』(反社会的人格障害)と診断されるようです(アメリカ精神医学会、P15〜)。

1.社会的規範の順応できない
2.人をだます、操作する
3.衝動的である、計画性がない
4.カッとしやすい、攻撃的である
5.自分や他人の身の安全をまったく考えない
6.一貫した無責任さ
7.ほかの人を傷つけたり虐待したり、ものを盗んだりしたあとで、良心の呵責を感じない

さらに、『サイコパス』には次のような特徴もあるといいます。
口の達者さと表面的な魅力(P16)
●病的に嘘をつく(P17)
感情の浅さ、ぞっとするほどの冷たさ(同)
自分にしか関心がない(利己的、チームプレイが下手)(P255)


これを見て思うのは『サイコパス』は身近にいるじゃないかということです。実際に、現在のアメリカでは25人に1人人口の4%)が『サイコパス』だといいます。これは大病を患っている人の割合より遥かに多い割合なのです。我々の職場の中にも、クラスの中にも、もしかしたら家族、身内、恋人、友人の中にも『サイコパス』はいるかも、ということです。

では、身近にいる『サイコパス』とは、どんな人なのか?

本書では様々な角度から説明がされていますが、最も納得感があったのは、「サイコパスの根底にあるのは、愛情の欠如」(P169)であるという説明。つまり、サイコパスは、愛とか優しさといった感情に乏しく、気持ちいい(=快感)とか痛い(=肉体的苦痛)といった原始的な情緒に反応するといいます。情緒的に「幼い」「冷たい」と言い換えることもできるでしょうか。そうであるならば、嘘をつく、だます、無責任、無計画といったサイコパスの特徴も、なんとなく理解ができます。

ただ、サイコパスは自分本位の理由で結婚することはあっても、愛のために結婚することはない。本気でだれかを愛することはできない(P171)というのは私の理解の範疇を超えています。結婚って、そういうものですか・・・(?) (ちなみに、サイコパスには、性関係の乱れ、短い結婚生活、多くの離婚歴、といった特徴もある。)



良心を持たず、自分本位で、愛情が欠如したサイコパスにどのように対処したらいいのかについても書かれています(第8章)。簡単にいえば、「避けろ」「逃げろ」「関わるな」と。自ら防衛しなければなりません。なぜなら、身近にいるサイコパスによって与えられる傷は一生消えないこともあるし、命取りになることもあるから・・・。



最後の章に書かれているマハトマ・ガンジーの言葉に、ページをめくる手が止まりました。
しあわせとは、あなたの考えと言葉とおこないが、調和していること。
思考と言葉と行動が合致していることが幸せだと。
実に深い言葉です。

平然と嘘をついたり、だましたり、欺いたり、隠し事したり・・・、そうやって他人を傷つけ、良心の呵責もなく、罪悪感もなく、短絡的に、冷淡に、自己中心的に生きている人は「幸せ」なんだろうか。それが哀れな末路を辿るとしても、それでも同じ過ちを繰り返しながら、無計画に生きていくのだろうか。

著者は、「人は良心がないとけっして本気で愛することはできない」といいます(P256)。良心をもっていると自己中心的に生きていけないかもしれません。自分の思い通りの人生にならないかもしれません。けど、良心をもっていれば、哀れな末路を辿ることもなく、今よりも「幸せ」という感情を持てるのではないでしょうか。

100%良心の塊みたいな人間はいないと思いますから、誰の中にもサイコパス的な邪悪な要素が潜んでいるかもしれません。

幸せに生きていくために、『良心をもたない人たち』から学ぶことは非常に多かったです。

かなりオススメの一冊です。



(※1)「sociopath」(ソシオパス、社会病質者)と「psychopath」(サイコパス、精神病質者)は厳密には異なりますが、本書では両方が同じ意味で使われているため、ここでは「サイコパス」に統一しました。