木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)
恩田 陸
文藝春秋
2010-11-10



これはすごい小説。

なのにamazonの評価は低い・・・。

それだけすごい。

アパートの一室、別々の道を歩むことが決まった同居の男女が最後の夜を徹し語り合うという、たった「数時間」の物語。ただそれだけの物語なのに、実に深い。深すぎる。

他者愛と自己愛、真実と偽り、事実と解釈、生と死、時間と存在… とは何か?といった問いかけを、二人の会話の中に出てくる「父」「母」や、部屋にある「ピアス」「ナイフ」、記憶にある「柱時計」、現存する「写真立て」…とった象徴・表現を使って、我々読者にしてくる。

「うわぁ〜、こういう文章書ける人って、すごいなぁ〜」と思ったのは、佐藤正午著『鳩の撃退法』以来かもしれない。

この小説の中に上の問いに対するストレートな答えが書かれている訳ではないので、読者にとってはモヤモヤ感だけが残るかもしれません(それがamazonの評価が極めて低い理由だろうと思います)。二度三度読み返すことを前提に読んでいいかと思います。私もまた読み返してます。


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