10年前に発売された書籍ですが、日本テレビ「世界一受けたい授業」で又吉直樹氏が紹介したことによりベストセラーランキング入り。


本書の概要を、非常にざっくりと、少し乱暴に言えば、

「誰とでも仲良くなることなんて、どだい無理な話だぜ!」ってこと。

さらに言えば、

「自分のことを100%分かってもらおうなんてことも、無理な話だぜ!」ってこと。


親や教師は、「誰とでも仲良くしなさい」とか、「相手のいい所を見て、こっちから仲良くなる努力をすれば、仲良くなれるよ」とかいいますが、誰とでも仲良くなれるなんて幻想だし、自分というものをすべて受け入れてくれる友達がいるってのも幻想だと。

そういことを理解していないから、人間関係に苦しむことになる。

だから相手に過剰な期待を持つのはやめ、どんなに親しくなっても相手のことは「他者」なんだという意識をもつこと。また、相手はすべてを受け入れてくれるわけではないけれど、それでも自分のことをしっかりと理解しようとしてくれている「他者」を求め、向き合っていくこと。そういうことを提案してくれています。

人間関係に苦悩する学生など若い方に向けて書かれた本かと思いますが、大人や教育者も一読の価値があると思います。


・・・学校を卒業してやがて社会に出れば、自分たちと同じ属性を帯びる集団以外の、さまざまな世代や違う価値観をもった人たち、違う地方や、場合によっては外国からきた人たちなどと出会い、関係を作っていかなくてはなりません。

気が合うか合わないかというフィーリングの共有というよりは、役割を分担しながら一緒に仕事をして業績を上げることが第一に重要になる「社会的な関係」にはいると、フィーリングの合う人とだけ付き合うというわけにはいきません。だからそれまでに、自分のなかに異質なものを取り込めるようなある種の構えというものが、自分の中にどうしても必要になってくるのです。
(P123)




【参考図書】
土井隆義著 「友だち地獄―『空気を読む』世代のサバイバル」
高野登著 『あえて、つながらない生きかた』