読書が苦手だという人をターゲットに書かれた読書術の本。
著者は京大の地震学者なので『理科系の〜』というタイトルになっていますが、理科系以外の方にもオススメします。

本書は、「難しい本は著者が悪い」(P24)、「読書は我慢大会ではない」(同)、また、本に対する執着や読書に対する強迫観念を持つ必要はないなど、徹底して読書に対する敷居を下げてくれます。

読書が苦行だという人は、「購入した本は全て読破しないといけない」、「読み始めた本は最初の1文字目から最後の文字まで読み通さなければならない」、といった考えを持っているかもしれませんが、その必要はない。

私の場合「全体」を見て「部分」を抜き取るような読書をしますが、本書でも同じような読書術を提唱してくれてます。

例えば、本を読みはじめる前の「コツ」として、以下のようなことが書かれています。
●「目次の読み方は意外と重要」(P22)
●「タイトルサブタイトルの三者は、本文よりもはるかに影響力がある」(P23)

つまり、「読前」に、目次、帯、タイトル、サブタイトルをじっくりと眺め、その本の全体像をまずは掴むこと(私の場合は、内表紙や裏表紙もじっくり眺めます)。この「前儀」に時間を割くことが非常に重要です。そこで「全体」を掴み、目次から「部分」を推測し、この本の中から自分が得るべき情報は何かをある程度特定するのです。著者は「情報は3つだけ取ればいい」といいますが、1つでもあればいいと思います。

そうすれば、最初の1文字目から最後の文字までをなぞるように読めば10時間かかるような本でも、30分、1時間で読めることもあります。「速読」というのは、1分あたりに読める活字の文字数を増やすことではなく、「全体」として一冊の本を一定時間内に読み終えることをいいます(速読については、第3章参照)。

それでも、読み始めたら面白くない本もあります。面白くなければ捨てればいい。
著者は、こんな風に書いてくれてます。
『2:7:1の法則』を読書にも応用するのである。世のなかで2割の書籍にめぐりあえれば、それだけで人生の幸福への切符を手に入れたことになると言えよう。
(略)
7割は、丁寧に取り組めばそれなりのよいものを自分に与えてくれるような本である。
(略)
最後の1割の本は、どうやってもご縁のない本である。人間関係と同様に、そうした本は存在するものなのだ。(P30〜)

10冊の本を読んで2割の本が人生を変えるきっかけとなれば超ラッキーだし、10万円分の本を読んでたった2万円で人生が変われば超絶的にラッキーです。そういう感覚で本と接することが大切だと思います。面白くない本には必ず出会う。そういう本に出会っても、amazonに★1つ付けて酷評するような人にはなりたくない。

そして、著者は、ショーペンハウアーの名著『読書について』を引用して、「読書に溺れる」ことに警告を発しています。つまり、強迫観念をもってインプットばかりするのではなく、「思索する時間」を持つことの大切さを訴えています。これは激しく同意します。
つまり、読書と思索のバランスを上手に取ることによって、人生の達人になれるのだ。(P123)

インプット vs.アウトプット、読書の時間 vs.思索の時間、このバランスを取ることは、私も大切だと思います。

本書の最後には『補章』という章があるのですが、個人的にはこの『補章』が一番オススメ。是非読んで欲しい章。この章では、著者は『フロー型の読書人生』(=ストックからフローへの転換)を薦めています。知識を詰めこみ、蔵書を溜め込むという読書人生ではなく、今すでに自分の中にあるもの使って生きていくことが、人生をよりよく生きていくことになると。「今、ここで(here and now)」を生きる読書に転換してみてはどうだろうかと。読書家の著者がこういう考えにいきついたきっかけが、トランクルームに保存していた「愛蔵」にカビが生え「死蔵」になったことだというのが面白い。ガビが生えた本の中でも、どうしても手放したくない何冊かの本だけを取り出し、あとは処分したそうですが、結局必要な本ってその何冊かに過ぎなかったといいます。

これは読書に限らず、ライフスタイルについてもいえることです。「とりあえず」を捨てていく、今あるもので生きていく。『補章』の最後はこのように締めくくられています。
書籍とは過去の人類が残したすばらしい遺産だが、それでも「今、ここで」にふるいの残ったものだけを自分の未来につなげる。これが本当の意味での読書術の「カスタマイズ」なのである。

すごい。
タイトル間違えてないか(笑)。



 鎌田浩毅教授の書籍はこれまで何冊か読みましたが、その中でも『座右の古典』は何度も読み返しています。