4月1日。

先日(2018/3/26)の日経新聞朝刊の池上彰さんのコラム『池上彰の大岡山通信 若者たちへ』に、池上彰さんが4月から新しい人生の門出を迎える若者たちへのメッセージが載っていました。

あの池上彰さんも新人の頃は辛い経験をされてきたようです。

非常に良い内容なので、少し長いですが、引用させて頂きます。

私が大学を出たのは、いまから45年前のこと。NHKに記者として採用され、初任地は島根県松江市の松江放送局でした。松江市内の住宅の2階4畳半に下宿しました。いまならマンション住まいが当然でしょうが、古い城下町には、当時マンションと呼べるものが見当たりませんでした。

放送局での仕事が一段落して夜の8時頃にNHKを出ると、外は真っ暗。酔客を乗せたタクシーが通るだけで町は静まりかえっていました。その時間に開いている喫茶店がないということを知ったときの驚き。探し回った揚げ句、市の中心部からはずれた場所に夜10時まで営業しているジャズ喫茶を見つけたときの喜び。きのうのことのように思い出します。

記者の仕事は帰りが遅く、4畳半に入ると、松江駅の方から蒸気機関車の汽笛が聞こえてきます。住宅街だというのに牛蛙(うしがえる)の鳴き声が響きます。

都会暮らしから離れ、知人友人もいない土地での一人暮らし。心細い思いだったのは当然のことでした。慣れない仕事で疲れがたまり、休日は昼すぎまで寝ていました。

初任地での仕事は、警察と検察、裁判所担当です。毎朝、松江警察署と島根県警察本部の中を回るのですが、これの辛(つら)いこと。ベテラン刑事たちは、新米記者など歯牙にもかけません。「おはようございます!」と元気よく声をかけても、ギロリと睨(にら)むだけ。身が縮む思いでした。

そのうちに警察署の玄関を入ることができなくなりました。中に入るのが怖いのです。でも、これをしないと記者の仕事にならない。歯を食いしばって署内に入っていきました。

ひとりひとりの刑事と仲良くなるにはどうしたらいいか。先輩のアドバイスに従い、夜の当直勤務の刑事のところに顔を出すようにしました。松江の夜は、大都会と違って警察の出番は多くありません。刑事たちが暇を持て余しているときを狙って顔を出せば、雑談相手にもなってくれます。こうして知り合いを増やしていきました。

この仕事は、自動車のセールスマンと似ていることに気づきます。セールスマンは、まず自分を相手に売り込み、信用を得なければなりません。記者も情報を取るには、相手の信用が不可欠。たくさんの車を売ったカリスマセールスマンの体験記を読んで勉強しました。

異業種のことを知ると、自分の仕事にも役立つことを、このとき知ります。それからは、あらゆるジャンルの本を乱読。松本清張の推理小説を愛読するようになったのも、この頃からでした。社会派ミステリーが多く、視野も広がります。

経済学の勉強も再開しました。大学時代に勉強していなかったことへの反省からです。

結局、新人時代の仕事の困難さを突破できたのは、豊富な読書量に裏付けられた知識でした。

なので、新人諸君。仕事に辛くなったら、読書に逃げ込むという手があります。そこで得た知識や教養が、やがて仕事でも生きてくるのです

私も、社会人になったばかりの頃が一番読書量が多かったと思います。それまで数千時間も公認会計士試験の勉強をしてきたのに、社会に出たら必要な知識の1%も持ち合わせていない。教えてくれる人もいない。頼るものは本しかなく、あらゆる本を乱読したような気がします。私も池上さんと同じ意見です。新人の時に、必要に迫られて読んだ本から得た知識や教養が、やがて仕事でも生きてきます。


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