悪について (ちくま学芸文庫)
エーリッヒ フロム
筑摩書房
2018-01-11



ペラペラと本書をめくると、「肛門性格」「ナルシシズム」「近親相姦的共生」といった言葉が飛び込んでくる。

「何、この本・・・!?」

と一瞬思いましたが、読むうちにグイグイ引きずり込まれました。
打ちのめされました。

ちなみに、18禁の本ではありませんでした(笑)。
人間の本質に迫る本です。

すごいです。超オススメ本です。

著者は『自由からの逃走』や『愛するということ』などの名著でも有名な精神分析学者・社会心理学者であるエーリッヒ・フロム(1900〜1980)。本書もフロムの代表作で、50年程前に日本で翻訳されたようですが、この度新たに翻訳され、ちくま学芸文庫から発売されることになりました。

原題は "The Heart of Man: Its Genius for Good and Evil"(人間の心 ―善と悪の才)。

タイトルもすごいですが、人間の善(前進・成長)や悪(退行・衰退)についての考察がすごい。そして深い。

人間が衰退に向かう3つの「性向」が、(上で述べた)「肛門性格」(ネクロファリア、人間の破壊能力)、「ナルシシズム」「近親相姦的共生」(母への固着)。これら3つの性向が組み合わされると「衰退のシンドローム」が生じ、人を破壊のための破壊へ、憎悪のための憎悪へとかりたてることになるといいます(P20参照)。戦争、暴力、人種差別、憎しみ、破壊的指導者なども「衰退のシンドローム」。フロムは、ナチスから逃れるためアメリカに亡命したユダヤ人であり、所々ヒトラーについての言及があります。

この人間の「衰退のシンドローム」の話が第5章まで続きます。詳細は省きます。

そして、最終章(第6章)で人間の本質にも迫ります。生きるとは何か、自由とは何か、善とは何かに迫ります。この章は集中して必死に読むべし。

ほとんどの人が人生で失敗するのは、まだ理性に従った行動をする自由があると気づかなかいから、そしてその選択に気づくときは、決意するには遅すぎるからだ。
(略)
私たちの選択能力は、生活をおくるなかで絶えず変化する。誤った選択を長く続けると、私たちの心は硬化する。正しい選択をすることが多ければ、心は柔軟になる――いや、おそらく生き生きとする。(P188)

つまり、人生で失敗するのは「二者択一から選ぶ余地があるとき、それに気付かない」(P193)という人だと。戦争も暴力も、客観性・合理的判断の欠如だと。

人類が自らを破壊するのは、人間の心が本質的に邪悪だからではない。現実的な選択肢とその結果に気づく能力がないからだ。
(略)
責めるべきは問題を直視する勇気の欠如と、それを理解しようとする理性の欠如なのである。(P198〜)


「あ〜、分かる、分かる!」と赤ペンのラインを引きながら何度も読み返しました。

悪とは、理性を失うこと。自分を失うこと。
自由とは、正しい選択をし行動すること。

ちなみに最終章のタイトルは、『自由、決定論、二者択一論』。
はじめは「なんのこっちゃ」でしたが、読み終わったら納得。

これからも何度も読み返すことになりそうです。
人間として成熟し、人類として成長したいと考える方にオススメ致します。