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5〜6年前のことですが、関西屈指の高級住宅街の豪邸を100〜200軒内覧したことがあります。売りに出ている物件を片っ端から内覧させてもらったのです。豪邸は流動性が低いため、その多くが居住中の状態で売りに出します。そのため、内覧する際は、売主様がどういう生活をされているのかも垣間見ることが出来ます。これは非常に良い経験となりました。それだけの数の豪邸を見て回ると、お金持ちがどういう生活をしているのかを目で見て、肌で感じることができます。

多くの豪邸を巡って私が最も学んだことは、「幸せそうな家庭だな〜」と感じた家が極めて少なかったことです(たったの3軒しかありませんでした)。「物質的な豊かさ」と「心の平安」は比例しないということを悟りました。「心の平安」、「心の豊かさ」を得ようと思ったら、物質面・経済面で自由であるだけでは不十分で、精神面でも自由でなければならないということです。

「幸せそうな家庭だな〜」と感じた3軒のうちの1軒のオーナー様とは、その後、ひょんなことから出会うことになり、今ではメンターと慕う存在です。物質的な充足だけではなく、心の豊かさを追求すること、バランスを取ること、その他色々と大切なことを教えてくれました。

先日、このオーナー様の新しいお家にお招き頂きました。とある高級住宅街にお住まいですが、その中でもひと際目立つ大豪邸です。アストンマーティン、フェラーリ、マセラティ、ポルシェなどが並ぶガレージ、高さ数メートルはある巨大リビング、大阪平野一望の270度大パノラマ・・・どれをとっても「すごい」としか形容できません。こんな豪邸は雑誌でしか見たことがありません(実際に有名な建築雑誌にも載っていました)。上の写真は、このオーナー様の自室からの夜景です。ケータイカメラではこれが限界ですが、実際は梅田ビル群やあべのハルカスがくっきり見えるほどの絶景でした。

かつて100〜200軒の豪邸を内覧した時期にこの家を内覧していたら、発狂していたでしょう。テンションも爆発していたと思います。しかし、今回はそういう感覚にはならず、むしろ既視感でした。デジャヴでした。冷静でした。今まで見たこともないような豪邸に居ても、終始冷静でいる自分を客観視し、その自分を不思議に思う別の自分がいました。

暉峻淑子(てるおかいつこ)さんの『豊かさとは何か』(岩波新書)という本には、「豊かな社会の実現は、モノの方から決められるのではなく、人間の方から決められなければならない」(P237)と書かれており、そのためには、自分自身が豊かな人生の実現とはどんな生き方なのかを「探求する必要がある」(P240)とも書かれています。

この数年間、私は「探求」してきました。

豪邸に住む人と、普通の家に住む人の違いは何か。
富裕者と、そうでない人との違いは何か。
幸せな人と、不幸な人との違いは何か。

それは、遺伝でもない。学歴でもない。IQでもない。

このオーナー様と出会って確信したのは、豊かさを得るためには、イメージすること、行動すること。そういったことの大切さ。

イメージしたからといって、何かを得られるかどうかは分かりません。しかし、イメージできないものを手に入れることはできません。

行動したらからといって、何かが変わるかどうかは分かりません。しかし、行動しなければ自分の人生を切り拓くことはできません。


どちらを選択するのも各人の自由。しかし、私は、普通の家に住むより、大きな家に住みたい。貧しいより、裕福でいたい。不幸より、幸福でいたい。辛抱するより、自由でいたい。両者の違いをもたらすものが「行動」だと分かったら、何も行動しない訳にはいきませんでした。

だから、既視感と現実の違いが分からなくなるほどにイメージし、行動しました。一気に大気圏を突き抜けるくらいに飛び上がりました。で、ちょうど4年前、今の自宅に引っ越しました。それまで10年・20年と夢にみた場所(それも番地まで同じ)に引越すことができました。そしたら、これまで見えなかった世界が見えてきました。それはこの絶景とはまた違った世界です。

人は皆、目指すものが違えば、見えてくる世界も違ってくるものだと思います。大事なのは、自分が何を目指しているのか、自分らしさとは何か、自分はどう在るべきなのか、といったことを自分に問うことではないかと思います。

行動すること、環境を変えることに不安を感じる方は多いと思います。私も常に不安はあります。しかし、大気圏を超えると無重力になります。何かを得ようと思ったら、中途半端な行動ではなく、何万馬力というエンジンを積んで一気に大気圏を突き抜ける圧倒的な行動力がなければならないと思います。そうすると、突き抜けた先に、「自分にしか見えない景色」が見えてくるはずです。



豊かさとは何か (岩波新書)
暉峻 淑子
岩波書店
1989-09-20