海外でホームレス状態(困窮状態)に陥っている日本人が、なんと、把握されているだけでも700人以上いるようです。

このような日本人のことを「困窮邦人」と呼ぶことを、先日読んだ橘玲著『ダブルマリッジ』で知りました。「困窮邦人」のうち半数近くがフィリピンに滞在しているといいます。

中には、フィリピンクラブに入り浸り、そこで出会ったフィリピーナに夢中になり、彼女を追いかけて渡航し、現地でカネをむしり取られて無一文になり、帰国するカネもなくなった者もいる。

本書は、そういった「どうしようもない男たち」を、徹底して取材した本。

本書を読む前は、そういった「どうしようもない男たち」がなぜ生まれるのか疑問でした。物価が安い東南アジアの国々でなぜホームレス状態に陥るのか、そこに至るまでになにが起こったのか、なぜ日本に帰国できないのか、自業自得・自己責任なのではないか・・・などなど。

実際に、フィリピンで困窮邦人に金銭的支援をしている日本人女性が、困窮邦人のことについて、「100%自己責任。性格が弱い、甘えてますよね。」(P66)といったことを述べている。

しかし、全体を読めば、それが単に「自己責任」で片付けられない問題であることが分かります。フィリピーナだけではなく、(日本の)家族からも、日本国からも「捨てられた」人間が、日本を「捨てた」のだ。

食べるものもなく、衰弱し、あばら骨が浮き出た日本人を病院まで担ぎ込む、というシーンも出てくる(この男性は翌日死亡した)。なぜ著者は、本来であれば、誰も見向きもしないような「どうしようもない男たち」に寄り添って取材を続けたのだろうか。もしかしたら、著者自身が若かりし頃にバンコクでカネを搾り取られた経験があるからかもしれません(P200〜参照)。だから、「どうしようもない男たち」と同じ目線で取材が出来、それぞれに語られるべき壮絶な人生があることを彼らから引き出すことが出来たのかもしれません。

そういう意味でも本書は類まれなる本であり、「開高健ノンフィクション賞」というものを受賞したのも納得です。未知の世界を垣間見ました。