めちゃくちゃ面白かった。

ジャレド・ダイアモンドの『第三のチンパンジー』が文庫化されました。


下図は、霊長類の遺伝的距離を視覚化したもの。
黒丸の地点で共通の祖先から分岐したことを表し、右の縦軸の目盛りが分岐した年代、左の縦軸の目盛りが現存している種のDNAの相違率を示します。

霊長類の系統樹


つまり、ヒトとチンパンジーが分岐したのは約700万年前であり、両者のDNAの相違率は1.6%に過ぎません(言い換えれば、DNAの98.4%を共有している)。

だから、遺伝的距離の点からすれば、ヒトは、コモンチンパンジーやボノボと同じ属として扱われてしかるべきで、そうした点から考えれば、ヒトは「第三のチンパンジー」にほかならないのです(P33)。

しかし、この1.6%の違いが、私たち人間に「特有な性質」をもたらすと共に、決定的な違いをもたらすことになりました。

それは、例えば、

 ●言語を持つようになった
 ●複雑な道具を使うようになった
 ●芸術的創造性を持つようになった


さらに、以下のようなライフサイクルの違いまでもたらしました。

 ●閉経した後も何十年も生き続けるようになった
  (寿命が伸びた、妊娠と無関係に性行為をするようになった)
 ●排卵を隠蔽するようになった
  (いつでもSEXするようになった)
 ●性交を他人の目から隠すようになった
  (プライベートな営みとなった)
 ●父親も子育てに深く関わるようになった
  (2人で育てるようになった。家族の基礎ができた)


人間は、言葉や芸術といった高貴な特徴を備えるようになりましたが、次のような特徴も持つようになりました。

 ●お互いに大量の人間を殺しあうようになった(大量殺戮、ジェノサイド)
 ●環境と資源基盤を破壊しようとするようになった(生息環境の破壊)



本書の面白さは、なぜ人間がこのように進化したのかについて、一つ一つ検討していき、「人間とは何か」という根源的で哲学的な問いについて探る点にあります。

その内容は、これまでのジャレド・ダイアモンドの有名作『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』のテーマと重なっている部分もありますが、本書は(タイトルにもありますように)若い読者のために刊行されたものであり、他の著書に比べて図や写真も多く、非常に分かりやすく、読みやすく、楽しめる内容です。



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