人間は、生まれ育ってきた「環境」の中で、性格(character)が形成されていくのだと思います。もしかしたら、遺伝的、先天的に備わった性格(attribute)というものもあるのかもしれません。

私は、口から生まれてきたような父親がいる「環境」で長年育ってきたので、小さい頃から「喋る」よりも「聞く」側に回って生きてきた。だから、今でも見知らぬ人と喋ることはできません。極度に内気な性格は、「環境」の影響だと思っています。

他方、仕事でリーダーシップを発揮していた父親の背中を見て育ってきたので、人の前に立つことは苦にならない。というか、むしろ好き。これも、育ってきた「環境」の影響です。

人と喋ることはできないけど、人の前に立つことは好き。矛盾するようなことを言っているように思われるかもしれませんが、私にとっては何も矛盾はしていません。数百人の前で講演をすることは出来るけど、知らない人と差しで飲むことは出来ない。そういうことです。

こういう人それぞれの性格(character)というのは、長所になることもあれば、短所になることもある。個性といわれることもあれば、コンプレックスや苦悩の原因となることもある。でも、それは他の人には分かり合えないし、変えようと努力して変えられるものでもないし、そもそも変える必要もないものだと思います。

ネガティブな解釈をしたらどこまでもネガティブになるし、逆にポジティブな解釈をしたらどこまでもポジティブになれるものです。生きづらさを感じるのであれば意識的に「環境」を変えるしかない。特に大切だと思うのは、「その人と一緒にいて成長できる人」と付き合うことだと思います。そういう人がいないなら、しばらく一人でいればいい。無理に他人と迎合する必要なんて全くないと思います。生きづらさを克服する方法は、他人と迎合することではなく、「自分の哲学を完成させる」という壮絶な闘いをすることだから。

人に迎合しないで、たとえ他の多くの人が反対しても、自分が正しいと思うことを主張することに伴う責任は、他者に嫌われることを引き受けることです。他者の評価を気にかけず、人に嫌われることを恐れないことこそ、自由に生きるということです。
(岸見一郎著 「アドラー心理学 シンプルな幸福論」より)


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